ケガをしていてもできること
プールエクササイズは浮力によって荷重関節にかかる負担が軽くなる
野球はアクシデントによるスポーツ外傷(突発的なケガ)が比較的少ない競技ですが、投球動作などによるスポーツ障害(少しずつ悪化する慢性的なケガ)などによって、しばらくプレーができないことがあります。ケガをしてしまうと、チームのサポート役として練習の手伝いなどをすることが増えますが、その一方で競技復帰に向けて着々と準備していく必要があります。ケガをした部位は、病院で指導されたエクササイズなどを中心に時間を見つけて行っていると思いますが、ケガをしていない部位についても筋力が落ちないように体を動かすことが大切です。
ケガをしていない部位を鍛えることは一般的に患部外トレーニングと呼ばれています。これは患部(ケガの部位)以外の、機能的に正常な部位を積極的に鍛えようというものです。頭頸部の外傷など全身を動かしてはいけないという重篤な場合を除けば、ほとんどの選手が患部外トレーニングを行うことが可能です。投球障害でボールを投げられないときにも、下半身強化のトレーニングを行ったり、場合によってはランニングを行ったりするといった具合です。このとき「どこまで動かしていいのか」は、必ずケガの時に受診した医師に確認するようにしましょう。
運動許可の出た部位に関しては段階的にトレーニングを行うようにします。ケガをした部位よりも末端部位や患部の反対側(健側:けんそく)などを中心に行うことが基本ですが、荷重関節と呼ばれる体重を支える関節(股関節・膝関節・足関節など)を痛めている場合は、ケガの部位に体重をかけないように注意しながら行わなければならず、より慎重に進めていく必要があります。特に片足でのトレーニングはバランスを崩しやすいので、壁や手すりなどを利用して行うようにしましょう。
反対側だけといったように片側のみのトレーニングは、数ヶ月継続して行うと一時的に筋力的な左右差が見られるようになりますが、脳から筋肉を動かすように指令する神経伝達は両側に等しく伝わります。これによって動かしていない筋肉にも運動指令による刺激があるため、患部を動かしていい段階になってトレーニングを再開すると、何もしなかった時よりもより早く筋力差が回復すると言われています。なるべく早く競技復帰をするためにもケガを前向きにとらえ、患部のリハビリテーションとともに患部外トレーニングを並行して行うようにしましょう。
文:西村 典子
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