甲子園を知らない阪神ドラ1・佐藤輝明の原動力はホームランだった
佐藤輝明(仁川学院出身-阪神タイガース)
身長187センチ体重94キロの恵まれた体格を存分に活かした迫力満点のスイング。そして打席に入れば快音を連発させる阪神タイガースドラフト1位・佐藤 輝明(仁川学院出身)。
3年生の時に大学日本代表に選出されただけではなく、関西学生リーグで新記録となる14本塁打をマーク。リーグMVPやベストナインも受賞するなどドラフト1位にふさわしい結果を残し続けてきたが、高校時代は決してエリート街道ではなかった。
身長175センチ、体重65キロと今とは正反対の細身で、自宅近くにあった仁川学院の門をたたいた佐藤。ただ1年間はレギュラーとしての出場しておらず、2年生から4番に座るなど、一躍チームの中心選手として牽引。夏も4番として先輩たちとともに戦い、県大会4回戦まで勝ち進んだ。
ただ 新チームは県大会1回戦で敗れ、早々にオフシーズンに入った。だが佐藤にとっては大きな転機だった。2年生の冬から週の半分はジムに通うなど、徹底したフィジカルトレーニングに打ち込んだ。体格は次第に逞しくなっていくと、パフォーマンスにも好影響を及ぼす。
3年生春から数ヶ月で15本塁打をマーク。高校通算は20本塁打に到達するほどのスラッガーまで生まれ変わった。厳しい練習に耐え抜いた成果であることは間違いないが、そんな佐藤のモチベーションを支えたのは甲子園ではなく、『ホームラン』だった。
佐藤自らも「まるで『ホームランの求道者』みたいな状態で毎日を過ごしていました」と以前語っていた。最後の夏は県大会1回戦で敗れて高校野球が終わったが、ホームランに魅了された若き大砲のスイングが近畿大の田中 秀昌監督に導かれ、大学では1年生からリーグ戦に出続けた。
大学球界を代表する強打者へ成長し、2021年はプロの世界へドラフト1位として飛び込む佐藤。甲子園出場と言った華々しい高校時代でなく、1つの武器を磨き続け、些細なきっかけを掴んだ先にNPBの扉が待っていた。ほとんどの球児が甲子園に届かないのが現実だが、甲子園が全てではないことを、本拠地となった甲子園でホームランを打つことで証明してほしい。
(記事:田中 裕毅)