マネージャーはマスクも作りながら。都立雪谷は今出来ることをして再開を待つ
都立雪谷
緊急事態宣言が発せられて、部活動はもちろんのこと、授業も出来ないまま新学期が始まって1カ月が経過したが、休校生活が続いている。学校生活そのものが尋常ではない状況で、それでも「何か自分たちに出来ることはないだろうか」と模索している高校生たちも多くいる。
2003(平成15)年に甲子園出場を果たしている雪谷の野球部員たちも、何が出来るのかということを懸命に探していた。そんな中で、マネージャーたちからの発案で、全国的に不足しているというマスクを自分たちで作って、それを不足しているところへ寄付することは出来ないだろうかということにたどり着いた。
切っ掛けは、福井県の敦賀のマネージャーたちが100枚のマスクを手作りしたという記事をネットで読んだことだった。その記事を読んで、始業式の日に会った時に、自分たちでも出来るのではないかということを話しあったという。
さっそく、芝浩晃監督にその旨を相談した。芝監督も、「社会的に貢献することだから賛成。雪谷の名前が出ることも、自分の責任で大丈夫だ」と認可した。こうして、雪谷のマネージャーたちのマスク作りが始まった。そして、作ったマスクを寄付していこうということで、社会貢献していきたいという意識は強くなった。
ただ、他の学校にも呼び掛けていきたいという考えに対しては、芝監督の提案としては、「自分たちの活動に関しては、他校にも呼び掛けるのではなく、あくまでも、自分たちのやっていることを紹介していくことにしていこう」ということだった。それで、「協力したい」というところが出てきたらいいのではないかということでSNSの活用を提案した。
さらには、芝監督としては、教育者という立場から、今のネット情報社会に対しての自分たちの注意事項も生徒たちに伝えていた。
「世の中には、自分の考えや言動に賛同してくれる人もいれば反対する人もいるはず。SNSは誰もが目にすることが出来るモノなので、自分たちの思いが世の中に広がれば広がるほど、反対意見を主張する人がいるかもしれない。そういう時には意見をぶつけるのではなく、冷静に対応出来るといいね。やろうとしていることは絶対に間違っていないので。何かあったら、連絡相談してください」
そんなメールを送って励ましていた。
今のこの事態の中で、こういう形で高校生のしっかりと前を向いていく意識や姿勢は心強く感じられた。厳しい状況の中でも、社会に向けて何か貢献していきたいという若い意識は、確実に育んでいかれるということだ。
しかしながら、野球部活動そのものは3月以降は、ほとんど練習が出来ていないという現実は他校と変わりはない。ほとんど練習らしい練習は出来ていないという状態である。結局は、終業式と始業式くらいしか学校へ行けておらず、あとはLINEやメールでの連絡しか取れていない状態だという。
だから、もちろん新入生に関しても、ほとんど何もわからないというのが正直なところだ。スポーツ推薦の枠で入部してきた生徒に関しては、辛うじてなんとなくわかるものの一般入試で入って来てくれる生徒に関しては今のところはまったく分からないというのが現状だ。
「生徒たちは、結構前向きにやっているとは思いますけれども、高校野球は親の思いも強いですからね。親御さんの方の失望感も大きいですよ。そんなことも心配ですよね。それに、ウチなんかでも少なからず野球で上(大学)へ行きたいという子がいます。そういう生徒に対して何も見せる場がありませんから、そこはどうなるのかなと…。今は、面談の場も作れない状況ですから」
指導者としては、そんな心配もあるのは当然のことである。そのことも十分に理解しつつも、3年生15人に対して、最後の場を作ってあげたい、機会を提供したいという思いは同じである。
「辛い年度始めになってしまいました。全員を集めて話をしてあげたい。顔を合わせて、表情を見ながら話がしたい」
そう語る言葉は切実だった。それでも、マネージャーたちの心意気も含めて、今の生徒たちを信じているという気持ちが伝わってきた。
「どんな結果になったとしても、現場の底力を見せたい。そういう生徒たちです」
力強く語っていた。
(取材=手束 仁)
関連記事
◆都立の星・鈴木優(都立雪谷-オリックス)。プロ6年目で1軍初勝利を掴めるか
◆「効率性あふれる練習」と「冬の収穫」を活かして。昨秋四国大会8強の城東(徳島) 「自主性」の特性活かし前向きに
◆【動画】活動再開したら実践してみたい!名将・鍛治舎巧監督が秀岳館、県立岐阜商で実践するティーバッティングを紹介!