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「下手な大人よりも、よっぽど建設的な意見が出た」愛知の県立校発案から広がったオンライン愛知県選手会議

2020.05.04

「下手な大人よりも、よっぽど建設的な意見が出た」愛知の県立校発案から広がったオンライン愛知県選手会議 | 高校野球ドットコム
知多翔洋の取り組みは画期的だ(※写真は2018年3月撮影)

 先の見えない、新型コロナウイルス感染拡大禍によって、全国高校総体の中止が決定された。夏の高校野球もどうなっていくのかまったく分からない。そんな中で、「大人の決定だけではなく、当事者の高校生たちからの意見や思いを拾っていこう」と提案して、まずは県内の親しい学校とオンラインで交流していこうという取り組みを始めたのが知多翔洋の伊藤仁監督だ。

 知多翔洋の場合は、3月の上旬くらいまでは短縮しながらも、学校での練習も出来ていた。紅白戦だけだけれども、試合形式のことも多少はやれたという。ただ、その後には自粛で練習そのものも中止となった。それでも、3月下旬頃からは様子を見て、「知多半島同士だけでも、何とか練習試合を出来ないだろうか」ということも探っていたという。
 ところが、その後にもう一度休校要請があって、これで生徒たちも一度気持ちが盛り上がったところで再度の休校要請で心がしぼんでいったというところもあったようだ。

 今や夏の大会もどうなっていくのか、わからないというのが正直なところである。そういう中ではあるが、「高校野球はやりきろう。そのためには、どうしていくのがいいのだろうか」ということを常にLINEなどでも呼び掛けているという。

 現実的には、球場などの施設も使用が不可なので、技術的にどうこうするというのも、非常に難しい。それでも、意識という点では、切らさないようにということで、「(夏の大会が)あるつもりで行こう」ということは伝えているという。

 伊藤監督は、常々生徒たちには、「何のために高校野球をやっているのかを考えよう」ということを問いかけている。だから、今回の事態になった今こそ、その一つの答えを見出そうという気持ちもあってのことである。
 そんな中で模索していくうちに、たどり着いたのがオンライン選手会議だ。

 「大会をやれるためにはどういう方法があるのか。それを大人が決めるのではなく、高校生たちが話し合って提案していくことは出来ないだろうか。それをオンラインで他校の選手も含めて、高校生同士で話し合ってみたらどうか」
 こうした発想で練習試合などの交流がある学校に声をかけたところ岩津豊野富田と軟式で緑の選手が参加して行おうということになった。

 「選手に何も考えさせないで、一方的に大人の判断だけで物事を決めるよりも、選手の思いが少しで表れてくれば、それでいいのではないか。もちろん、突拍子もないこともあるかもしれないけれども、案外そんな中から、いいヒントが出てくるかもしれない。具体的なものが一つでも提示されていかれるのであれば、それはそれで、結果的には大会が出来なかったとしても、そこまで討議して生徒たちも考えたんだということであれば、少しは前へ向かえるのではないか」

 そんな伊藤監督の正直な思いで始めてみたオンライン愛知県選手会議である。
 「精神論だけでは収まり切れないところもある」というのも正直なところであろう。その第1回が5月3日に行われた。

 「やってみてよかった。下手な大人よりも、よっぽど建設的な意見が出ました。選手たちからの意見で多かったのは、試合がやれなくて『同情されて可哀想だね』と言うだけでは終わらせたくない。今、高校野球に対してもネガティブな意見とかも多く出されている中で、世の中を少しでも明るくしていくために、何が出来るのかということを考えていこうというような、非常に前を向いた、自分で思っていた以上に発展的ないいい意見が交わされて、正直、生徒たちを見直しました」

 電話の向こうの声も弾んでいた。
 自分自身も、今は在宅ワークということになっているので、ほとんど学校には行ってはいないというが、そうした中でも生徒たちと連絡を取り気持ちを伝えていた。何とか発展的な形で対処出来ないか、提案していくことは出来ないだろうかという思いで、今回の取り組みになったようだ。
 好感触を得て、連休明けにも第2回のオンライン選手会議を開催することも決められたという。ここから、新しい形で発信していくことが出来れば、「高校球児、素晴らしいぞ!」ということにもなっていくはずである。

 高校野球で甲子園に出場するということは一つの大きな目標ではある。しかし、こうした指導者たちの、「何とか生徒たちの思いを果たせてあげたい」という、熱い思いの一つひとつの思いの足し算が今の高校野球を作り上げていったことも確かである。そして、そんな思いが今日まで高校野球が発展し成長し続けていった一番の要素なのである。
 だからこそ、夏の高校野球が奪われることは、切ないし辛い。

(取材=手束 仁

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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