一部のファンからは、「球国愛知」の異名もつくほど熾烈な地域である愛知県。そんな愛知で、初の甲子園を目指すのが星城だ。

2023年のドラフトで、OBである石黒 佑弥投手が阪神タイガースからドラフト5位指名を受けた。チームも2022年の夏の大会でベスト8進出を果たすなど、戦績も残している。県内でも上位に入る実力校である。

大切なのは組織力

取材当日はトレーニングがメインだったが、活気のある声がグラウンドに響き渡っていた。選手たちの意識の高さ1つとっても、実力校らしい雰囲気が漂っているように感じた。

そこに対して、昨年3月より指揮官としてチームを指導している宮地正監督は、「正直言うと、ここ数年のチームに比べると、まだまだだと思います」と求めているハードルは高かった。それゆえに、この冬の目標はシンプルだった。

「選手たちには本当にわかりやすく一言、『頑張ろう』ってだけ今は伝えています。
あと一段階段を上がれば景色が変わる。あとちょっと頑張れば次のレベルに行けるのに、その一歩を頑張りきれない。目の前の現実から逃げてしまう、責任感を持ち切れないところがあるように感じています。だけど適切な言葉が見つからなくて、最終的にシンプルですけど、『頑張ろう』という言葉に思いを込めています。
やり切れていない仲間がいれば真剣になって、ときには温かい言葉や厳しい言葉をかけよう。その場によって使う言葉は違えど、『頑張ろう』っていうメッセージには変わりないので。まだまだ成長ができる、伸びしろがあるチームだからこそ、この冬のテーマだと思っています」

そのように語った宮地監督は、大学卒業後から星城に赴任して指導者生活をスタートさせた青年監督。当時は「技術的にも凄い選手がそろっていたので、正直びっくりしました」とレベルの高い選手たちに驚きを隠せなかった。ただそれ以上に宮地監督が驚き、学びになったのは3年生たちの姿だったという。

「選手たちを指導していて、やはり最後は3年生の力が非常に大きいなというのを強く感じています。というのも、毎年春季大会でベンチ外だった選手には、一度相談をします。『夏の大会のベンチは難しい。ただ自分の人生なので考えてほしい』と。
ある意味、選手としての引退になりますが、選手たちは『一緒に頑張ってきた仲間なので、最後まで補助に回ります』とチームのサポートをしてくれました。そういった3年生の存在がチームにとってすごく大きい。
やっぱり自分のためだけではなく、人のためにどれだけ頑張れるか。そこが最後は一番大事だと思いますし、実際にNPBへ進んだ石黒たちの世代は人間的にも尊敬できる選手たちが多く、結果も出ていた。そうやってうちが夏を勝ち上がるには、3年生がしっかりチームのために献身的な働きをしてくれることが必要だと感じています。だから最後は3年生全員の力が必要だと思います」

だからこそ、星城にとって全員が同じ気持ちをもって最後まで戦う。組織力というのは大事になってくる。そのために目指すチームの形として、宮地監督は「卒業生が胸を張って自慢できる野球部でありたい」と話す。

「当然、勝利は目指します。ただ愛知は簡単に勝たせてもらえない厳しいところだとわかっています。でも、監督として部を預かる者として、野球で何を教えるかというのは大切ですし、卒業生が自慢できる野球部でありたいと思っています。だからそういった運営は心がけています」

期待値を超える戦績を残せるか

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