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【高校野球勢力地図・沖縄】興南が筆頭! 沖縄尚学が追う エナジック・ウエルネス沖縄・未来沖縄の新鋭校、宜野湾にも注目!

2024.01.29


興南・田崎颯士

2023年の沖縄の高校野球は、沖縄尚学が春夏連続で甲子園に出場した1年だった。今年は興南を中心に激戦が予想される。

世代最強投手、田崎を擁する興南、2年ぶりの聖地帰還へ

興南は、2022年秋は沖縄尚学に1対8で敗れると、1年生中央大会ではエナジックに3対6。さらに2023年春は未来沖縄に4対8、夏の選手権沖縄大会でも日本ウェルネス沖縄に0対1と、他のライバル私学校に悔しい敗戦を喫してきた。その陰で成長を遂げてきたエース田崎 颯士投手(2年)の盤石な働きぶりが、チームを久しぶりの優勝へと導いた昨年の秋だった。

1回戦の普天間とのゲームこそ、6安打しか放てずファンに心配をかけたが、2回戦以降の5試合全てで2ケタ安打をマークした。2回戦の石川戦では、3番・久高 学士内野手(2年)に適時三塁打が飛び出すなど、3回に打者11人を送り5点を奪う。その後も得点を重ね7回コールド勝ちすると、3回戦では未来沖縄に1対0で迎えた5回に、これまた打者11人で7得点と、連続コールドゲームでベスト8にコマを進めた。

美里工が相手となった準々決勝では、6回を終えて1対0とリードしていたが、7回に1番・石川 駿介外野手(2年)が2点ランニングホームランを放ち突き放すと、8回には下位打線が繋がり3得点。最後は石川の犠牲フライで7対0とし、3試合連続コールド勝ちを収めた。準決勝の具志川商戦では、2回に犠牲フライを挟む6打者連続長短打を記録するなど7対0と、4試合連続となるコールドゲームで力の差を見せつけた。

決勝の相手は沖縄尚学。1回に2点を先取すると、4回と8回にそれぞれ4得点のビッグイニングを作り12得点で快勝。1年間の鬱憤を晴らす見事な優勝であった。

打線はランニングホームランを放った石川が打率.350、6打点。久高が打率.316も長打率は.421で7打点。そして4番・仲田 陽外野手(2年)が打率.467で5打点と、軸になる打者が上位打線を形成する。

投手は未来沖縄戦で好投した仲間 駿投手(2年)や、石川戦で経験を積んだ金城 勇希投手(2年)もいるが、大黒柱は左腕の田崎。沖縄尚学戦こそ9安打を浴びたが2失点のみ。美里工戦と具志川商戦での被打率は.135と低く、沖縄尚学戦を含む3試合で、16.2回を投げ17奪三振。制球も良く、K/BBは4.25を記録した。

2017年以降の選手権沖縄大会は、興南沖縄尚学がともに3度優勝と、いずれかが常に最後の夏を制している(2020年の夏季大会を除く)。ライバルたちを突き放したこの差をさらに広げて、2年ぶりの聖地甲子園へと帰還する。

秋は準優勝も一年生大会V。総合力で最後の夏を見据える名門・沖縄尚学

 

沖縄県高等学校野球秋季大会決勝戦で興南の前に大敗を喫したが、昨年の一年生大会と新チームに以降しての新人大会(全国高等学校野球選手権大会と被るため、主力の二年生は参加せず)で結果を残していなかったことが懸念に見えたが、さすが名門・沖縄尚学だなと思う秋の戦い振りであった。
一回戦不戦勝だった沖縄尚学は、二回戦で試合巧者沖縄工とぶつかる。苦しみながらも6-3で勝利したことで、ナインにも少々自信が広がった。続く日本ウェルネス沖縄戦では、周囲の期待を良い意味で裏切る圧巻の5回コールド勝ち。準々決勝の知念戦では我慢比べの末、4-1で勝利し準決勝へ。そのセミファイナル宜野座との乱打戦を制し決勝進出した。
ファイナルの相手は永遠のライバル・興南沖縄尚学は1番足立 怜凰、2番比嘉大登がそれぞれ2安打をマークするなど、チームで4得点を奪ったが、興南は12得点と打線の力の差を見せつけられた。
チーム打率は.359、長打率.451、出塁率.432と興南と比べても遜色は無い。ビハインドを受けた宜野座戦では4〜6回の中盤3イニングだけで9得点をマークするなど、ここ一番での集中打は見もの。注目はは4番伊智司耀矢か。5試合全安打をマークするなど、打率.556。そして6打点を記録した。
投手陣の柱は知念戦で完投した入里凛。沖縄県高等学校野球秋季大会全5試合で登板するなど、まさに大車輪の働き。被打率や防御率は高めながらも、秀逸なのがK/BB。21奪三振5与四死球で、4.20という数値をマークした。
また沖縄尚学は、昨年11月に行われた一年生中央大会にて未来沖縄首里エナジック那覇商を撃破し優勝。30イニングで37得点を奪う横綱野球を見せつけた。二年生もうかうかしていられないと、本腰を入れる冬となっただろう。チーム力が格段に上がった春にてまずは頂点に立ち、夏の連覇を狙う。

興南、沖縄尚学を追う他のライバルたち

古波蔵 虹太

昨年秋に優勝した興南と、準優勝の沖縄尚学を追う一番手はやはりエナジックか。新人中央大会で田崎と互角の投げ合いを演じ、決勝の沖縄水産戦でも完投したエース古波蔵 虹太投手(2年)と、捕手の中では世代No.1の龍山 暖捕手(2年)のバッテリーは他校の脅威。高校野球部対抗競技会で、100mと塁間走の2冠となったスピードスター知花 泰空外野手(2年)や、長打力抜群の新里 哲弥内野手(2年)、伊佐 英太内野手(1年)など、隙が無い。

昨年秋の3回戦で、興南沖縄尚学に敗れた未来沖縄日本ウェルネス沖縄も、私学の意地にかけて仕上げてくるだろう。新人中央大会準Vで秋ベスト8の沖縄水産、新人中央大会ベスト4で秋ベスト8と、連続して実績を残した知念の両校も続く。善戦したコザ美里工首里前原糸満、小禄も侮れない。

一方で個人的に注目しているのは宜野湾だ。12月のシーズンオフ前に熊本・沖縄交流試合が行われ、又吉にちか投手が好投した。熊本国府野田 希内野手(2年)、寺尾 真洸捕手(2年)をはじめ、九州学院紫垣 俊吾外野手(2年)、開新松崎 朋倖内野手(2年)、鎮西大島 僚介内野手(2年)、東海大星翔渡嘉敷 篤弘内野手(2年)、熊本工廣永 大道投手(2年)ら、錚々たるメンバーを引き連れつつ、本気で向かってきた熊本選抜チームを相手に1失点完投。この春、どれだけのピッチングを見せてくれるのか楽しみだ。ダークホース一番手の可能性は十分あるとみる。ともにベスト16入りした球陽中部農林の春も楽しみだ。

新人準優勝の沖縄水産を圧倒しベスト4入り!具志川商

写真はイメージ

昨年秋、具志川商は初戦の具志川戦、2回戦の八重山商工戦と連続コールド勝ちを収めた。3回戦では同地区でしのぎを削る前原との対戦となったが、エース山城 琉一輝投手(2年)が奮投。被安打は僅か5で、2ケタ10個の三振を奪い3失点無四球完投(自責点0)。打線も4回、2死二塁から8番、9番に連続長短打が飛び出し3対1とリードする。その裏、2死一塁から内野にエラーが出て、その後連続長短打を浴びて3対3の同点になった。

しかし5回、4番・仲宗根 琉愛(2年)の適時二塁打で再び引き離すと、9回にも適時打と犠牲フライで加点し、ベスト8へ進出した。その具志川商のハイライトはまだ終わらない。ベスト4を懸けた準々決勝の相手は、新人中央大会で準優勝した第2シードの沖縄水産だ。

具志川商は3回、9番・新城 志侑内野手(2年)に適時三塁打が飛び出すと、2番・仲井間 海光にも適時打が出て2点を先制。その裏、沖縄水産も負けていない。3番・玉城 良唯(1年)が同点打を放ち試合を振り出しに戻した。その後、両軍緊迫した展開でボードにはゼロが並び続ける。そしてゲームを動かしたのが具志川商だった。

1番から始まる好打順の8回、太田 陽誠(2年)が安打で出塁すると、3番・比嘉 真之信が適時三塁打。負けじと4番・仲間 功汰郎(2年)も右前へ弾き返し三走が生還した。その後押し出し四球も得て5対2とリードを広げると、9回にも3番、4番の適時打などで4点を挙げ快勝。9対2で退け、選抜高校野球大会出場を決めた先輩以来となる3年ぶり2度目のベスト4へとコマを進めた。

準決勝こそ、県ナンバーワン投手である興南・田崎に、手も足も出ず敗れたが、順位戦では宜野座投手陣を打ち崩し9回表を終えて6対4とリードする実力を見せる。結果は追いつかれ延長の末に敗れたが見事な打撃戦を演じた。

その具志川商打線を牽引するのは仲井間海光か。順位戦を含む全6試合で安打をマークし、打率.524を残した。一方、投手陣の中で光ったのは、やはり山城。25.2回を投げ、K/BB3.80を記録した。

チームの成績に目を移すと、打率は.308ながら、2ケタの二塁打を放つなど、長打率は.481と、4強中堂々の2位。少々気になるのは三振の多さだが、フルスイングに徹したからこその長打力。この冬で選球眼を高めるなど個々の力をもう一段上げ、春と夏の頂点を見据える。

1年生大会のリベンジ!宜野座が第1シードを撃破しベスト4へ

写真はイメージ

昨年秋の第73回沖縄県高校野球秋季大会。抽選会でどよめきが起きたのは、宜野座が引いたクジ番だった。勝てば新人中央大会優勝で第1シードのエナジックと相まみえる。1年生中央大会決勝の再現が早くも実現するのかと色めきだった。

その宜野座は、1回戦の連合チームをコールドで破り順当に2回戦に進み、エナジックと対戦した。宜野座は1回、2死から連続長短打で二、三塁に。エナジックも2回、2本の安打と四球で2死満塁としたが両軍得点ならず。5回を終えて0対0と緊迫した展開だったが、6回、7回と宜野座がしぶとく点を奪う。投げては比嘉 翔吾投手(2年)が1失点のみの完投で、見事1年生中央大会決勝のリベンジを果たした。

これで波に乗った宜野座は、3回戦の連合チームをコールドで下すと、準々決勝ではコザを6対2で退け準決勝へ。沖縄尚学戦では一時6対3とリードする展開に持ち込んだが、名門の意地の前に惜敗。だが、補助校順位戦(3位戦)で、具志川商とシーソーゲームを繰り広げ、延長の末にサヨナラ勝ちするなど実力を遺憾なく発揮させた。

6試合を戦った宜野座のチーム打率は.337。中でも目を引いたのが長打力だった。8本もの三塁打をマークするなど、チームの長打率は秋の4強中トップの.505。さらにチーム内で徹底的に磨かれた選球眼にも秀で、出塁率.443、BB/K2.31と、こちらもトップを記録した。打線を牽引したのが1番を務めた大城 康宝(2年)。打率.478、長打率.787と存在感を示した。その大城に続く2番として定着した東成(1年)の存在も大きい。打率.455、長打率.727。強豪と当たっていく3回戦以降で、10安打を放つ暴れっぷりだった。

投手はとにかく数が多い。エナジック戦で完投した比嘉 翔吾に、コザ戦で完投した許田 壱哲(2年)、主に中継ぎ登板した比嘉 快風比嘉 恵佑(2年)。そして具志川商戦で好投した東成と、その陣容は豊富だ。

2003年センバツ以来となる聖地へ向け、この2024年に宜野座旋風を巻き起こす!
(文=當山 雅通)

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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