聖地で「最高の恩返し」を センバツ21世紀枠候補校の仙台一、74年ぶり甲子園出場なるか
(左から)藤原啓内野手、千葉綾太投手、安藤舜投手、小川郁夢捕手
第96回選抜高校野球大会の出場校が26日に発表される。東北地区の21世紀枠候補校に選出された仙台一(宮城)は、普段通りの練習に励みながら吉報を待っている。発表を直前に控えた24日、ナインに現在の心境を聞いた。
午後4時半から約2時間、仙台一ナインは仙台市内のグラウンドで黙々と汗を流した。守備力に定評のあるチームだが、この日は強風だったこともあり、野手は打撃練習、投手はトレーニングやネットスローを中心としたメニューをこなした。今年は4日から練習を始め、センバツを見据えながら技術力向上と肉体強化を並行して推し進めている。
昨年は春の県大会3位で38年ぶりの東北大会出場を果たし、秋も県大会3位で17年ぶりの東北大会出場を決めるなど、躍進ぶりが際立った。仙台一は県内屈指の公立進学校で、130年以上の歴史がある伝統校でもある。OBやファンが多く、特に地元では1950年夏以来、74年ぶりとなる甲子園出場の期待が日に日に高まってきている。
主将の小川 郁夢捕手(2年)は「発表が近づいてきたことを実感して緊張しているし、浮足立つような気持ちです」と率直な心境を明かしつつ、「チームの目標は2季(春夏)連続の甲子園出場。まずはセンバツに選んでいただいて、甲子園を全力で楽しみたい」と力を込めた。リードオフマンの藤原 啓内野手(2年)も「甲子園で全力で、本気で野球に取り組んでいる姿を見てもらいたい」と気合い十分だ。
先発投手として昨秋の躍進に貢献した安藤 舜投手(2年)は、毎日のように過去のセンバツの動画を視聴するなど、甲子園のマウンドで投げるイメージを膨らませているという。最速140キロ右腕の千葉 綾太投手(2年)も、「最近は寝る前とかに『センバツ出場が決まったらあそこで投げるんだな』と考えています」と聖地の景色を頭に思い浮かべている。
海岸から3キロ程しか離れていない仙台一のグラウンドは、2011年の東日本大震災で津波の甚大な被害を受けた。練習再開までには約1年を要したが、全国各地から届いた手紙や寄付金、その他数え切れないほどの支援が、復興までの期間の支えになった。仙台一OBで、2017年秋からチームを率いる千葉厚監督は「甲子園に出た時の一番の楽しみは、震災の時に支援していただいた全国のみなさんに一高が目指してきた『全力疾走』をする野球を見せて、最高の恩返しをすること」と話す。
震災当時は未就学児だった現役部員も、海岸防災林の植樹活動などを通して震災の記憶を紡いできた。だがやはり、「最高の恩返し」は野球を通して成し遂げるつもりだ。多くの人々の思いを背負い、運命の瞬間を待つ。
(取材・文=川浪康太郎)