八王子vs千葉学芸
高校通算58本塁打スラッガー対191センチの149キロ左腕のスカウト要注目対決の行方は?
先発・羽田慎之介(八王子)
5月9日、春季県大会優勝の千葉学芸は春季都大会ベスト8の八王子と練習試合を行った。両校にはスカウト注目の逸材がいる。高校通算58本塁打の有薗直輝擁する千葉学芸と最速149キロを誇る191センチの大型左腕・羽田慎之介。2人の対決に多くの球団スカウトがつめかけた。
羽田は大会終了後から3試合目の練習試合登板。それまで計2試合で、5回を投げて1失点の好投を見せており、最速148キロをマーク。都大会ではあまり投げなかった変化球の割合を増やし、都大会では20球程度だったが、30球、今では60球程度と制限しながら投げている。
この日のスカウトの動きを追っていくと、羽田が試合前のブルペンに入ると一斉に動き出し、真後ろからビデオを構え、球筋を収め、試合になれば、あるスカウトはスピードガン、有るスカウトはビデオカメラを構えていた。
羽田は正真正銘の剛速球左腕。同じドラ1候補・佐藤隼輔(仙台-筑波大)の投球もネット裏から見たが、上手さならば佐藤、スケールの大きさや勢いという点では羽田ではないだろうか。常時140キロ〜145キロのストレートを連発しており、最速は145キロだが、比較的、スピードが出やすいスピードガンが設置される球場ならば、140キロ後半に達していてもおかしくない。
4イニングながら、ストレートは27球計測して、平均球速141.29キロは、今年測った高校生ではトップクラス。この春、[stadium]千葉県野球場[/stadium]で150キロを計測した細谷怜央(中央学院)は手元のスピードガンで、141・91キロなので、ほぼ同等。しかも191センチの左腕が投じるボールである。千葉学芸・高倉監督も「凄いボールでしたね!今まで見たことがないボールを投げていて、勝敗云々より有薗との対戦は本当にワクワクしました」と敵将を興奮させるほどの圧力があった。
対戦した有薗も「今まで対戦した投手の中では速球の勢い、変化球のキレもトップクラスのものがありました。角度もみたことがないものでした」と語れば、板倉も「ストレートも凄いのはわかっていたんですけど、それ以上にスライダーの切れ味がすごかったです」と変化球の切れ味を絶賛する。
この日、羽田は120キロ前半のスライダー、130キロ前半のカットボールを投げたが、いずれも鋭角な曲がりを見せる。豪腕タイプとしては申し分ない精度の高さがある。ただ羽田自身、大会後3試合の中では良い出来とはいえなかったようだ。
「正直、良くなかったです。スライダーの曲がり方は良くなかったですし、右打者、左打者に対して投げるスプリットを投げるのですが、今日はブルペンからあまり感触がよくなかったので、投げませんでした」と語る。
確かに試合前のブルペンではスプリットを投げて練習する姿があった。つまりブルペンでその日の投球プランを考えていたのだ。長身の素材型に見えるが、ただ不器用な左腕ではなく、その日によってどんな投球を描くのか、しっかりと考えている投手だ。
この試合は4回を投げて、58球、3奪三振、2四球、無失点の好投。夏へ向けて順調に仕上がっているといえる。
ロングティーを行う有薗直輝(千葉学芸)
羽田の投球も素晴らしかったが、千葉学芸の3番・有薗、4番・板倉の対応力も高かった。有薗の第1打席はスライダーを捉え、深く守っていたセンターに飛ぶ大飛球。あわやホームランという当たりだった。第2打席も142キロのストレートに対して、バットの根元にあたったようだが、レフトへ痛烈な打球。第3打席はライトへポテンヒットで、八王子外野陣が深く守りすぎていた影響で、二塁打に。第4打席はタイミングが崩されてのセンターフライに終わったが、プロ注目左腕に対してもコンタクト力の高さを実感させてくれた。
また高校通算26本塁打を誇る板倉も第1打席は球足の速い一ゴロ。第2打席は二飛だったが、全く対応出来ない感じではなかった。板倉自身も「ポイントを前において打っていて、ああいう投手からミート出来たのは自信になりますし、夏前にああいう投手と対戦できてよかったです」と手応えを感じていた。
試合は1対1の同点。千葉学芸と八王子は定期戦を行う関係性があり、毎度、白熱とした勝負を繰り広げるようだ。
この試合、羽田と有薗の大物だけではなく、お互いの良さを見えた試合だった。八王子の4番・落合俊介は2安打の活躍。身長183センチの大型外野手で、しなやかなレベルスイングから広角に打てる左の強打者で、バランスが実に良い。また、都大会から気になっていたのが、捕手の柳元珍(りゅう・げんじん)。175センチう73キロと均整が取れた体格からレベルスイングで安打を連発する左の好打者で、最も目を引いたのがスローイングだ。1.9秒台のスローイングを連発し、盗塁阻止も2つ。
八王子の2番手・星野翔太も135キロ前後の速球、120キロ前半のスライダーを投げ分ける右の好投手。将来有望な2年生右腕だが、まだ脆さがあり、安藤監督は心技体揃った好投手になることを期待している。
そしてこの日は稲毛も2試合目から登場し、稲毛戦で投手専念の渡邉 凜之介が登板。力強い腕の振りから繰り出す常時130キロ〜136キロ前後の速球、120キロ近いスライダーを投げ分ける右の好投手で、夏場では出番も増えるのではないだろうか。
(記事=河嶋 宗一)