春日部共栄vs埼玉栄
春日部共栄・村田、タレント野手揃いの埼玉栄に屈せず3失点完投勝利!
村田賢一(春日部共栄)
勝てば関東大会進出の埼玉大会準々決勝。春日部共栄vs埼玉栄の一戦といえば、2005年の夏決勝を思い出す方が多いだろう。2005年は春日部共栄が土壇場で逆転して甲子園行きを決めたが、この試合も序盤から白熱とした試合展開となった。
まず1回表、春日部共栄は1番黒川渓が左前安打で出塁。黒川は盗塁を決め、一死二塁から3番平尾が痛烈な右飛。そのあと、落球し、黒川はそれを逃さず本塁へ。完全捕球と判定されたのでアウトとなったが、ちょっとした動作を逃さなかった黒川の観察力と足が素晴らしかった。
1回裏、埼玉栄は春日部共栄の先発・村田賢一の立ち上がりをとらえ、1番北口恭輔が外角に入った140キロのストレートを捉え、右中間を破る三塁打。2番庄司遥登の左前適時打ですかさず同点に追いつく。
だが3回表、春日部共栄は8番丸田輝の左前安打でチャンスを作り、この日スタメンマスクをかぶった上原雅也がレフト線を破る二塁打。丸田は俊足を飛ばし、一気にホームへ。勝ち越しに成功した。上原はあまり出場機会がなかったが、バランスが取れた好捕手。打者としてはしっかりと左足を挙げて、インサイドアウトのスイングで鋭い打球を飛ばし、捕手としても2.00秒台のスローイングで走者を二度さす。捕手としてしっかりと存在感を示していた。
ここから均衡した投手戦。埼玉栄の先発・北村修造は長身から長い腕を繰り出し、常時125キロ前後の速球、スライダー、曲がりが大きいカーブを散らせながら打たせて取る投球。また、牽制も巧みで、一塁走者、二塁走者を牽制で刺すなどうまさを見せていた。
一方、村田は常時135キロ~138キロと昨秋とそれほどストレートに大きな変化はないが、球質の良いストレートは健在。変化球は125キロ前後の高速スライダー、120キロ中盤のスプリット、110キロ台のカーブを散らせながら打たせて取る投球。
安打を打たれながらも粘り強く打ちとっていた村田だが、5回裏、二死三塁のピンチを招き、打者は第1打席に三塁打を放った北口。フルカウントまでいき、春日部共栄バッテリーが選択したのは内角速球。北口はその速球を見逃さず、レフト前へクリーンヒット。ついに同点に追いつく。
勝負は後半戦となった。
3安打の活躍を見せた北口恭輔(埼玉栄)
7回表、埼玉栄はここまで力投の北口に代えて左腕・田村大也がマウンドに登る。田村は小柄ながらコンパクトなテークバックから体をしっかりと回転させて鋭く腕が振れる好左腕。常時120キロ後半~133キロと北村よりも速く、120キロ台のスライダー、110キロ台のチェンジアップと変化球の精度も良い。簡単には打ち崩せない投手だと思ったが、この回にチャンスを作り、二死一、二塁から4番村田がレフトの頭を超える適時二塁打で2点を勝ち越しに成功した。
この2点の勝ち越し点を村田はしっかりと守った。8回裏、埼玉栄の4番和田康平に二塁打を打たれ、無死二、三塁のピンチを招いたが、犠飛による1点にとどまり、そして9回裏、二死からこの日3安打の北口を三振に打ち取り完投勝利。春日部共栄が関東大会出場を決めた。
春日部共栄は苦しい試合展開となっても、簡単に流れを渡さない村田の力投、粘り強い守備、しぶとい打撃は見事。今年の春日部共栄らしい勝ち方だっただろう。
敗れた埼玉栄は野手のタレント度は県内屈指だろう。1番北口は昨年に比べて大きく進化。村田の速球を苦にせず3安打。スクエアスタンスで構え、グリップを低い位置に置いて力みのない構えからレベルスイングでボールを捉える。下半身の使い方もよく、速球を右中間、レフトへ痛烈な当たりを放っただけではなく、スライダーを引き付けて右方向へ安打を放つなど幅広い打撃を見せた。
またスラッガー・和田康平も2安打を記録。重量感溢れるパワフルなスイングは健在。速球、変化球にしっかりと対応ができていて、さらに打球に角度が付けば本塁打量産も期待できそうだ。
センターの佐々木丈もシュアな打撃と守備範囲の広い守備が魅力の快打のセンター。今後の試合でも注目したい選手だ。
185センチの大型外野手・江城優明も3打数2安打の活躍。スクエアスタンスで構え、インパクトまでロスのないスイング軌道から好投手・村田から快打を連発。まだ2年生ということで、さらなる進化を期待したい強打者だった。
投手陣をしっかりと整備すれば、この夏の埼玉栄はかなり怖いチームになりそうだ。
(記事:河嶋 宗一)