済美vs松山商
「圧巻」の投球をみせた安樂智大(済美)
松山商業も圧巻2安打完封、愛媛に「安樂」時代到来!
「圧巻」・・・企画、行動などの最も優れている部分。やはり使い古されたこの言葉を使わざるを得ない。それほどまでに夏の愛媛大会で最速148キロをマークした済美の1年生右腕・安樂智大のピッチングは「圧巻」であった。
「(松山)商業さんが安樂対策をしてくるのは予想していたので『丁寧に放ろう』と言っていたが、バットがボールの下をスイングするのを見て大丈夫と思いました」。
上甲正典監督のコメントが全てを物語る。この日の最速は146キロ。17奪三振を奪い自己最速の149キロをマークした川之江戦にこそ及ばないものの、186センチ87キロの体格から弓のように体をしならせて放つボールの伸びは、7月の愛媛大会準々決勝で敗れたデータを蓄積。「打倒安樂」を旗印に8月の中予新人戦で一度は打ち込んだ松山商業打線ですら、何もさせてもらえないレベルに達していた。
与えたヒットは7回一死後の内野安打2本のみの10奪三振完封。これで安樂は中予代表決定戦・松山東戦と併せ、3試合連続完封と既に愛媛県内では無双の存在であることを改めて、秋季県大会準々決勝では異例となる3,077人の大観衆に示した。
加えてこの試合では、彼のメンタルにも見るべきものがあった。2四球を与えた1回裏の二死一・二塁では5番・別府勇輔(2年)を「左打者の膝元に入るように投げる」カット系のスライダーで難なく空振り三振。先頭打者に死球を与え、続く打者にも四球を与えた後、犠打で一死二・三塁とされた8回裏も、代打・武市司(2年)を三球三振に仕留めると、1番・宇野航大(1年)も一直に。「夏より回りを見れるようになったし、先輩から声を掛けてもらって楽になった」成長をすぐに結果で示す辺り、やはり並みの15歳ではない。
これで3年ぶり6度目のベスト4で秋季四国大会出場にも王手をかけた済美。「今日勝ったことを糧にして一歩一歩ずつ進んでいきたい」名将が誓ったその先には、既に愛媛を制しつつある「安樂時代」の四国制覇、そして全国初披露が待っている。
(文=寺下友徳)