試合レポート

松山vs桶川

2011.07.13

松山vs桶川 | 高校野球ドットコム

先発した武藤(桶川)

死闘

「何か噛みあっちゃうんだよね桶川とは。桶川戦が決まった時点でまた死闘だなって覚悟はしてきた」

と苦笑いを浮かべる松山・瀧島監督に対し

「初戦が松山でいいはずがない。何でよりによって初戦でこんな難しい所引いてくるのって」

とあきれる桶川・大野監督。秋の再戦となったこの試合、奇しくも秋と結果は同じスコアになった。前回は桶川が逆転勝ちしたが今回はどうなるか。

 松山高校応援団の大声援もあり、試合前から[stadium]上尾市民球場[/stadium]は松山のホームグランド化していた。桶川にとってはやりづらい状況だったが、桶川の先発左腕武藤は落ち着いて初回を3者凡退に抑える。

  一方、松山の先発・野澤は先頭の針谷をショートゴロエラーで出し、いきなり無死2塁のピンチを背負う。慌てた松山バッテリーはリズムを崩してしまう。スピリットを多投しカウントを悪くし、ワイルドピッチに盗塁を絡められるという悪循環に陥る。さらに、4番・原田のタイムリーも飛び出しあっという間に2点を先制される。

 この2点で序盤は桶川ペースで進むが、秋の雪辱に燃える松山もただでは終わらない。すぐに反撃を開始する。3回表、2死2塁で1番斎藤の当たりはライト線へ飛ぶ。ライト柏は追いつきそうであったがこれを取れずタイムリー3ベースとなり松山が1点を返す。奇しくもこの時間帯から風が舞い始める。


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4番金子(章)(松山)

 そして、松山にやや流れが傾き始めた所で5回表を迎える。この回先頭の野澤の当たりはまたしてもライトへ飛ぶ。打球はややライト線で定位置より少し前へのイージーなフライだった。だが、またも風の影響か、この打球を柏が落球してしまう。これで武藤もやや浮き足立ったか、続くバントの構えの渡辺に対しストレートのフォアボールで出してしまう。そして、9番本間に送られ1死2,3塁とし1番斎藤を迎える。ここで斎藤はきっちりセンターフライを打つ。センターの定位置当たりまで飛び、犠牲フライとして飛距離はどうかと考えていたその時だった。今度はセンター針谷が落球し2-2の同点となる。

 さらに続くチャンスでここを勝負所だと感じた松山・瀧島監督は早くも代打の切り札清水を投入する。清水は三振に倒れるが

「清水が結果の出なかった所で3番・4番が意気に感じてくれた」(瀧島監督)

 と言うとおり、3,4番に連続タイムリーが生まれ松山はこの回一挙4点を奪い5-2と逆転する。この場面桶川ベンチは、

 「丹羽君のヒットは想定内だった。ベンチとしての危機管理が十分にできなかった」(大野監督)

と嘆いたが、ポイントは2死2,3塁で前の2打席タイミングが合っていた4番金子(章)と勝負してしまった所にある。結果論であるが、いくら左対左とはいえ後続の打者を完璧に抑えていただけに、金子(章)との勝負は松山ベンチにとってうれしい誤算、桶川ベンチにとって悔やまれる選択であったであろう。

 それにしても、まさか外野手の落球が2つも出るとは、まさに桶川にとって魔の5回となった。だが予兆はあった。

 「あれで何か嫌な雰囲気にしちゃったのかなあって」と大野監督も責任を感じていたが、どうやら試合前のシートノックで本来は風向きや打球の伸び具合を確かめたい外野陣に対し、ドライブがかかった打球を多く打ってしまい、選手たちがちゃんと確認できなかったらしい。だが、そのことよりも、「意識はしてなかったんですけど、知らず知らずのうちに感じてたのかも」と針谷主将が言うとおり、桶川にシード校としてのプレッシャーが体に圧し掛かる影響の方が大きかったようである。

これで一気に勢いに乗った松山は、7回表にも丹羽のタイムリー内野安打で6-2とし勝負あったかと思われた。


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代打3ランHRを放った石川(桶川)

 だが、その裏桶川が驚異的な粘りをみせる。この回先頭の柏がショートゴロエラーで出塁すると、代打・矢澤もライト前ヒットで続く。8番土井がきっちり送り1死2,3塁とすると、ここで桶川ベンチは先発武藤に代え、代打の切り札石川を投入する。するとここで石川が強振した打球は3ランホームランとなり一気に6-5の1点差となる。

 ここでたまらず松山ベンチはエース野澤に代え”秘密兵器”であるセカンドの丹羽を登板させる。丹羽は185cmの長身ながら普段はセカンドを守り、秋はオーバースロー、春はアンダースロー、そして、今大会はサイドスローにフォームを変えながらそれを物にしてしまうあたりは、よほど器用な選手なのであろう。サイドスローで公式戦初登板ながらピンチこそ招くが、落ち着いた投球でこれを凌ぐと、結局6-5の1点差のまま松山が逃げ切り秋の雪辱を果たした。

 代打3ランで一時は1点差に追い上げるなど、粘り強い桶川らしさはみせたが最後は松山の勝利への執念がそれを上回った。いろいろな要素が絡み合う、まさに死闘という言葉にふさわしいゲームに対し、瀧島監督は

桶川さんがいてうちがいたから。秋と同じ6-5でも今回はお互い1年成長してきた形での6-5」

と最後は相手へ敬意を表し、この試合のコメントを締めくくった。

(文=南英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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