試合レポート

目白研心vs日大三

2018.10.08

最後まで主導権を握った目白研心!玉木-山田のバッテリーが大金星を呼び込む!

目白研心vs日大三 | 高校野球ドットコム
本塁打に沸く目白研心ナイン

 2年連続優勝に期待がかかる日大三。今年も投打で逸材を揃えるチームだが、どんなに力があるチームでも一番難しいのは初戦である。その法則がはまった試合にもなった。

 日大三の先発は平野 将伍(2年)。140キロ後半の速球を投げる投手として注目されるが、実戦の経験は少ない。なぜ少ないのかといえば、やはり制球力だといえる。187センチ92キロと体格だけ見ればドラフト候補。しかしそれを使いこなせない。ステップ幅が狭く、上半身主導といっても、胸をしっかりと張れず、真上から振り下ろすことができたフォームではない。縮こまった腕の振りになっている。

 そのため常時131キロ~138キロのストレートは定まらず、立ち上がりから四球。無死満塁のピンチを招き、4番・山田瑞起(2年)にストレートをとらえられ、走者一掃の適時二塁打を打たれ、いきなり3点の先制を許す。平野は一死しか取れず、降板。

 先制打の山田は「ストレートを狙っていたのでしっかりと打てて良かったです」を胸を張った。

しかし1回裏、日大三は二死一、三塁から5番柳舘 憲吾(1年)の右前適時打で1点を返し、6番塚越 楓太(2年)が高めのボールをとらえレフトを破る二塁打で二者生還し、すぐさま同点に追いつく。

 日大三は2番手・小川 敦星(2年)。平野とは対照的に171センチ64キロと細身の体型。右サイドから常時128キロ~132キロの速球、110キロ台のスライダー、100キロ台のシンカー、110キロ前後のチェンジアップと球種は多彩。いずれもストライクが取れて、横の変化、高めのつり球でバリエーションは広く、ストライク先行できるのが強み。日大三では珍しい右サイドハンドの技巧派だが、試合をしっかりと作れる好投手である。

 日大三はこれで波に乗れるかと思われたが、目白研心の先発・玉木 結大レアンドロ(2年)が粘り強いピッチング。背番号1の速球派・靏我 祐季(2年)が控えるが、変化球の精度の高さを評価されて玉木が先発となった。

 下半身主導のフォームから繰り出す直球は常時125キロ前後ぐらいだが、110キロ前後の曲がりが鋭いスライダー、100キロ前後の曲がりの大きいカーブに日大三打線はことごとく空振りを繰り返し、追加点を奪えない。

 また、目白研心バッテリーは変化球を生かす意味でもストレートを内角へ突くピッチングを見せ、工夫を見せていた。リードする山田は「変化球を生かす意味でも内角ストレートを投げることがとても重要でした」と語るように玉木はその要求にこたえ、勝ち越し点を与えなかった。
 とても嫌な流れの中、目白研心は5回表、二死一、二塁の場面で、打席に立ったのは4番山田。山田が高めに入ったスライダーを逃さず勝ち越し3ラン。「最初スライダーを空振りしたので、もう1球投げてくるかなと思ったのですが、スライダーが甘く入ってくれて。本当に上手く打てました」と振り返る高校通算第3号本塁打は、試合の流れを大きく呼び込む大きな一打であった。


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力投を見せる井上広輝(日大三)

 日大三・小川は1回途中から登板し、7三振を奪う快投を見せていただけに痛恨の一発だった。

 6回表、目白研心は6番山口 修弘が二塁打で出塁したところで日大三は投手交代。背番号10の井上広輝(2年)を投入する。ここで目白研心は犠打で一死三塁と走者を進め、遊ゴロで三塁走者が7点目。目白研心が着実に点を重ね、試合の主導権を握っていく。

 6回裏、一死一、二塁から8番井上が中前適時打で1点を返す。さらに内野ゴロの間に5対7と2点差に迫る。

 井上は世代を代表する投手と呼ぶのにふさわしいピッチング。躍動感あるフォームから繰り出すストレートの伸びは尋常ではなく、この試合、6打点を挙げた山田も「本当に速くて、バットに当てるのに精いっぱい…」と語るように、ストレートの最速は146キロ。ストレートの平均球速は140.12キロとこの時期としては驚異的な平均球速の高さ、さらに120キロ前後のスライダーを織り交ぜ、4イニングを」投げて自責点0の好投を見せた。
 しかし日大三は最後まで玉木をとらえきれず、初戦敗退が決まった。

 勝利をおさめた目白研心の鈴木監督は「先発した玉木の良さが出た試合だったかなと思います。あまり点が取れない試合展開かなと思っていたのですが、それでも選手たちがいつも通りの力を発揮できたことが勝たせていただいた要因なのかなと思います」と振り返った。勝利に貢献する6打点と好リードを見せた山田は「うまく打ててびっくりしています。また玉木が良く投げてくれました」と完投勝利の玉木をねぎらった。

 玉木は「最後は日大三さんの圧というのを感じたのですが、勝ててほっとしています。まだ勝利した実感はわかないのですが、次の試合も1球1球を大事に投げていきたい」と意気込んだ。

 目白研心は各打者のスイングを見ても鋭く、特に4番の山田は都内でもこれほど振れる捕手はそうはいない。何より捕手ということもあって、配球を読む能力が高い。スローイングタイム2.00秒~2.20秒と平均的だが、コントロールが良く、さらにリードセンスもよい。投手陣のレベルも高く、強豪・日大三を破った経験から一気に強くなる可能性を秘めたチームだろう。


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マウンドに集まる日大三ナイン

 敗れた日大三の小倉監督は「新チーム当初から今回の結果のように打てないチームかなとみていました。やはり点の取られ方が悪く、まだそれをはねのけるほどの打力はまだありません。秋ですし、負けるときはこんなものだと思います」と淡々と敗因を振り返った。

 選手たちの力量を見れば、都大会に出ているチームとくらべても頭1つ抜けているのは確か。ただ経験不足なのか、不利な状況からテクニックがたけた投手を攻略する力はまだない。どんな投手に対しても対応して、強打を発揮する。それは今後の大会へ向けて鍛えていかなければならないところであろう。

 また失点した平野、小川は井上と廣澤優の剛腕2枚の負担を減らす意味でも頑張ってもらわないいけない2人である。井上、廣澤のどちらかが頭から投げて居れば結果は違ったかもしれない。だが、小倉監督は今後のために彼らを起用したのである。思えば去年の投手陣もまだ盤石のものではなく、苦しい戦いを経験して成長していった。

 厳しい冬の練習を送り、日大三ナインは強力なチームとなって戻ってくるのか。春の都大会初戦までその成長を待ちたい。

(文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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