試合レポート

関東一vs都立雪谷

2014.07.25

関東一終盤逆転、雪谷・鈴木の夏終わる

 夕方からの雷雨を予告するかのように、昼過ぎから東京は異様な蒸し暑さになった。球場の中にいると、座っているだけで汗が吹き出し、まるでサウナに入っているようだった。

 都立雪谷の先発は鈴木優関東一羽毛田晶啓という、東京を代表する好投手同士。投手戦が予想されたが、気象条件も試合に影響したのか、試合は思わぬ展開になった。

 1回表関東一の1番オコエ瑠偉は、初球を叩いて左翼への強い当たり。都立雪谷の左翼手・畠山仁吾が前進するも捕球できず、しかも少し弾く間に俊足のオコエは二塁へ。記録は二塁打で、関東一はいきなりチャンスを迎える。
しかし続く篠田泰成は投前にバント。鈴木は素早く三塁に送球し、オコエは三塁で刺された。この1年の鈴木の成長の一つが、フィールディングや牽制が上達したことだ。投手としての総合力が、確実に上がっている。

 続く3番五十嵐滉希が四球で出塁すると、4番伊藤雅人は左前安打。二塁から篠田が生還して、関東一が1点を先制した。

 ところが、1点のリードを受けてマウンドに上がった関東一の先発・羽毛田の調子がどうもおかしい。

 都立雪谷の1番山北泰輝、2番菅野智也に連続四球。3番畠山にも2ボール0ストライクになったところで、関東一ベンチは投手を羽毛田から田邉廉に交代。球場がどよめく。

 畠山は犠打で一死二、三塁とし、エースで4番の鈴木は、一、二塁間を破る右前適時打でまず1点。続く神子堅吾の内野を低いライナーで破る右前適時打で、初回から2点を入れた。
両チームの1回表裏の攻防に、33分もの時間を要した。


 ただ2回以降、両チームともにゼロが続く。しかしながら関東一は、らしからぬミスによって、ピンチを招き、チャンスを潰した。

 3回裏には、この回先頭の畠山の二塁ゴロを、守備がうまいはずの篠田が一塁に暴投する。
すると、5番神子、7番関智弘の左前安打で満塁。それでも後続が倒れて無得点。

 6回表には、篠田がまたも失策。続く、菅野の安打で二死一、二塁と都立雪谷がチャンスをつかむも、後続がつながらない。

 攻撃面では4回表、池田瞳夢の中前安打、五十嵐雅大の四球で一死一、三塁の場面で、8番熊井智啓は平凡な左飛。しかし二塁走者である池田が飛び出しており、併殺となった。

 2回以降、関東一を無得点に抑えている鈴木であるが、球場のスピードガンは130キロ台後半しか表示しておらず、本来の球の速さではない。
悪いなりに抑えることができるようになったのも、鈴木の成長の証ではあるが、終盤ついにつかまる。

 反撃の狼煙を上げたのは、この日2失策を記録している篠田だった。
中前安打の熊井を二塁に置き打席に立った2番の篠田は、右中間を深々と破る三塁打を打ち、熊井が生還し、同点に追いついた。

 さらに8回表には、二死一塁の場面で、7番五十嵐雅が右翼に二塁打を放ち、逆転。さらに続く8番熊井の中前安打を、都立雪谷の中堅手・山北が本塁への送球を焦り、ボールをそらす間に五十嵐雅も生還。熊井は二塁へ進んだ。
その上、9番、5回からマウンドに上がっている阿部武士も右中間を破る二塁打を打ち、この回3点を入れた。

 投げては田邉、阿部とつないで、都立雪谷に得点を許さない。


 9回表関東一の攻撃。
このまま終われば、高校生活最後のマウンドとなる鈴木は、先頭の3番五十嵐滉に二塁打を打たれたものの、4番伊藤、5番池田を抑え、続く大内巧は、2ボール2ストライクからの5球目、135キロのストレートを弾き返したが、左飛に倒れ、鈴木はマウンドを下りた。

 9回裏は、畠山、鈴木が四死球で出塁し、小豆畑廉の左前適時打で1点を返したものの、続く関智弘は併殺打に倒れ、結局5対3で関東一が勝ち、準決勝に進出した。

 関東一にしてみれば、9回同点に追いつかれ、延長戦にもつれ込んだ5回戦に続く苦戦であった。ただ、内容的には良くなくても、試合は落とさないというのも、関東一の強さの一端ではないか。

 一方敗れた都立雪谷は、秋はブロック予選で敗れるなど、決して平坦な道のりではなかった。それでもエースで4番の鈴木が、プロでやることに目標を定め、高い意識で練習したことにより成長を遂げた。それと同時に、鈴木のワンマンチームにしてはならないとチーム全体が自覚することで、実力を伸ばしていった。

 鈴木は間違いなく、2014年の東京の高校球界を代表する投手であった。今後は目標とする場で輝くことを期待したい。

(文=大島裕史

【野球部訪問:第129回 関東一高等学校(東京)】

関東一vs都立雪谷 | 高校野球ドットコム

【僕らの熱い夏2014 第38回】都立雪谷高等学校(東京都)
夏の大会では機動力を活かした攻撃と、鈴木を中心とした守りで勝ち上がっていきたいと思います!

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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