菰野vs相可
菰野エース・山中亨悟
菰野エース・山中が強風に耐え粘投
今春の選抜大会に出場した菰野が三重県大会2日目に登場した。
主将の内田学良(3年)をケガで欠き、高校通算30本塁打を超える吉冨大輝(3年)が打撃不振で8番打者に入るなどスタメンに“異変”はあったが、12安打13得点で大勝。大黒柱の左腕・山中亨悟(3年)が先発マウンドに上がり、一人で投げ切った。
全国的に冷え込んだこの週末。伊勢湾に面した[stadium]霞ヶ浦球場[/stadium]には、かなりの強風が吹き荒れていた。百戦錬磨の菰野エース・山中にとっても「霞ヶ浦球場って上(上空)はいつも風があるんですが、下(グラウンドレベル)でこんなに風が強いのは初めてで…」と、今回の悪天候に戸惑いはあったという。
それでも6回3失点でピッチングをまとめた。途中、暴投が2つ出たイニングもあったが、相手の下位打線を完璧に封じるなど力の違いも証明。スライダーがいつも以上に曲がって見えたのは“風効果”か。戸田直光監督は「相手と駆け引きもしながら投げていた」と及第点を与えた。
選抜大会で苦しいマウンドを経験した山中がこの春、2つの工夫で新たな進化に挑んでいる。第一にフォームの改良だ。
「右足をセカンドベース方向へひねるように上げることにしました。同時に、その時の視線も、今までキャッチャーミットを見ていましたが、一塁側に向ける(視線を切る)ようにしたんです」。
これは同校OBの西勇輝(オリックス)がインタビューで「目線で配球を見抜いてくる打者が結構いる」と発言していたのにヒントを得たものだという。
第二に、普段の練習では短距離ダッシュに代えて、ポール間走などの長距離走を取り入れた。「夏は体力がないともたない。体の軸もしっかりつくりたいので」と意図ははっきり。夏も甲子園を勝ち取るべく、エースに抜かりはない様子だった。
一発を放った8番打者“降格”の吉冨大輝(菰野)
菰野は打線も振れていた。
初回、先頭の小林輝也(3年)が三塁打で出塁し、ケガの内田に代わって3番に入る徳満敦基(3年)がセンター前へタイムリー。2回裏には二人の走者を置いて9番・大野貴大(3年)がライトへ二塁打を放ち、着実に加点した。
6回裏には、8番打者“降格”の吉冨がレフトスタンドへ運んだ。選抜大会から打撃が振るわず、一時はマネージャーとして練習での裏方用務を命じられた主砲のダメ押し弾に、戸田監督も「もっと発奮してくれないといけないが、まずは結果が出てよかった」と目尻を下げた。終わってみれば10点差のコールド勝ち。
昨秋、圧倒的な強さで三重県を制した菰野が、この春も“王者”として君臨する。
敗れた相可は3回表、3番・粉川雄貴(3年)のヒットに続いて4番・上野陽平(3年)が2点タイムリー二塁打を放ち一時は2点差に詰め寄ったが、守備で菰野打線の勢いを止められなかった。
(文=尾関 雄一朗)