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部員確保に悩む「都立高新入野球部員の実情」、中学時代のユニホームで練習試合参加、新人を練習試合で積極起用……

2024.05.13


都立紅葉川・村岡朋哉

<交流試合:都立紅葉川2-1都立片倉、都立紅葉川12-5都立新宿、都立新宿6-2都立片倉>◇12日◇都立片倉グラウンド

都立紅葉川都立片倉は東西東京の都立有力校同士で、今年の春季東京都大会では、シードが決まる3回戦で当たるかと思われた。結局、2回戦で都立紅葉川錦城に敗れたことによって対決は実現しなかった。また都立片倉も、その3回戦で錦城に敗れて、結局、夏のシード権は逃している。

夏本番へ向けて、これから1カ月半余り。最後の調整へ向けてチームを再整備していきたい時期に入った。そういう中で、お互いに意識しあえる好敵手を迎えたと言っていいであろうか。

この日は、急遽都立新宿も加わることになって、変則ダブルヘッターとなった。都立新宿も、今春は都大会進出を果たし、1回戦では“都立高偏差値対決”と言われた戦いで都立日比谷を下した。2回戦では国士舘に最後になってビッグイニングを作られてコールドで退いたが、しっかりとしたチーム力は示すことができたのではないだろうか。

新年度となって1カ月と少しが経過して、各校の新入部員も、ある程度確定してきている。スポーツ推薦で多少の目安がついている学校もあるが、多くの公立校の場合は、4月になって新入生がどれだけ入部してくれるのかということも、特に今の時代では大事な要素となっている。

日本全体的な少子化という傾向もあるが、いかにして新入部員を確保していくのか、ということに関してはどの高校も悪戦苦闘し、各指導者たちも意識して動いている。場合によっては、部の存続問題にもかかわってくることもあり、余計に大事な要素でもある。

基本的には、1学年でチーム形成ができる人数という10人前後が最低限でも欲しいというところではあろうが、今の時代はなかなかそうもいかないということもあるようだ。

この日の片倉グラウンドに集合した3校は都立片倉が17人、都立紅葉川は13人とマネージャー3人、都立新宿も8人の新入部員が入った。この練習試合でも、さっそく起用していきながら、それぞれの選手がどんなことができるのか、どんなタイプなのかということを見極めていくということにもなる。場合によっては、いきなり夏の戦力の1人としてベンチ入りをしていくということも、ないともいえない。そういう意味では、これからの1カ月の練習試合というのは、新入部員が当面の戦力となれるのか、という見極めの意味もあるということになる。

トップレベルと言われる私立校の場合であれば、中学時代から全国大会などで実績がある、いわゆる‟スーパー1年生”と言われる選手が入ってきて、いきなりメンバー入りということもあるだろう。しかし、多くの公立校の場合はそんなケースは稀有である。

それでも、都立紅葉川の高橋 勇士監督が「スポーツ推薦で入ってきてくれた選手の中には、今のウチのチームの中では、すぐにでも使えるのかなという選手もいます」と言うように、練習試合でも積極的に使っていくケースもあるようだ。都立紅葉川は、今春の都大会は登録17人での戦いでもあり、そのままでも3枠は空いているということになる。

都立紅葉川では、都立新宿との試合で5番として起用された木村は5打数4安打で二塁打も放つなど、高校野球に対する対応力の高さも示していたと言っていいであろう。

都立紅葉川都立新宿は、まだ、練習試合ユニホームが間に合わず、出場選手たちも、それぞれ中学時代のユニホームでプレーしていた。一方で、都立片倉はすでに1年生も練習試合ユニホームを着用し、その分チームに馴染んできているという印象も強かった。都立新宿との試合ではマスクを被って1試合フル出場した長谷川などは、今までも一緒にやってきていたのかな、と思わせるくらいに、リードぶりも落ち着いていた。

都立片倉の宮本 秀樹監督は「1年生だけれど、キャッチャーがいいでしょ。何だか普通に馴染んでいるんだよね」と言うが、都立片倉というチームが、そういう雰囲気を持っているというところもあるのだろうとは思われる。

ただ、リラックスしていそうながら、今の時代の中ではあっても頭髪は基本的には丸刈りということにしている。宮本監督は、「頭髪を自由にしたから、それで自主性が出るなんて言うことは、本気でそう思っているのかなあとは思っていますよ。自主性というのは、そういうことではないんだよね」と、ベテラン宮本監督としては、強制ではないけれども、何となく丸刈りを通しているという姿勢でもある。このあたりも、都立片倉というチームの緩そうで規律がある部分が、伝統のような形になってきていると言ってもいいであろうか。

今の時期の練習試合は、勝ち負けよりも、チームとして今、何をどうしていくのが大事なのかということの確認でもある。そして、チームとして1つひとつの約束事ができているのか、ということの確認などが大事になってくる。それは、各チームそれぞれであろう。

また、戦力的に似通った同士で戦っていくことによって、「この場面でどうしていくのがいいのだろうか」というシミュレーションもある。多くのタイプのチームと試合経験を経ていくところから、チームとして、あるいは選手個々として自然に会得していくものなのだろうと思える。そういう意味でも、この時期の練習試合は大事なのだということになる。

学校としては、これから中間試験などがあり、部活動的には練習量はダウンしていくことになるのだろが、それが明けたら夏本番へ向けての強化期間ということになる。その前の、現状確認ということで言えば連休明けの試合は指揮官にとっても大事な確認事項ということになる。

都立新宿は、都立片倉戦では現状のほぼベストメンバーで挑んだが、生田投手と中川捕手のバッテリーは、かなり質が高いという印象だった。長井 正徳監督も、「バッテリーに関しては、ある程度は安心しています。もちろん、ここで試合をしっかり作っていってほしい」と期待も高い。生田投手は下半身もしっかりしている。伸びしろもありそうでで、大学野球などでも活躍できそうな雰囲気はある。中川捕手はクレバーな印象で、同行していた田久保 裕之前監督も、「そんなに目立つ存在ではないけれども、主将でもありチームにとっては欠かせない存在」と評価している。打っても4番で、都立片倉戦ではここというところで打って2安打を放って2打点も挙げている。

余談ではあるが、都立新宿のセカンドユニホームは薄いブルーで、一見甲子園の常連校の近江(滋賀)を思わせるが、‟新宿ブルー”というカラーだという。ストッキングは紺地に白の6本線。これは、高校の前身が府立六中であったことからのものであり、これはOBでもある田久保前監督の拘りで、このスタイルにしたという。

また、都立紅葉川の赤を基調としたセカンドユニホームは、紅葉ということで赤がベースになっているということである。これは、高橋 勇士監督の拘りでもあるという。こうした、チームを預かる指導者たちの拘りが、ユニホームなど各所に見られるのもまた、公式戦とは違う交流試合の楽しみの1つでもある。

都立片倉都立紅葉川の試合は、午前9時前から始めて、10時20分前には終了というスピーディーな試合だった。「時間があるので、同点だったらタイブレークをやろうかと思って、いろいろ考えているうちに、サヨナラになっちゃった」と宮本監督は苦笑していたが、投手がいいテンポで投げていくと、新基準バットの試合では比較的早い試合になるのかなということも、改めて思わされた。

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この記事の執筆者: 手束 仁

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