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いろいろあった中村奨成(広島)、一軍昇格で思い出す「あの弾丸ライナー」

2024.04.04


中村奨成

あの時の打球の速さは忘れもしない。高校野球夏の甲子園の取材で、記者席から数々の本塁打を見てきたが、「あっという間」の言葉以外は浮かばなかった。2017年夏の甲子園2回戦。広陵(広島)対秀岳館(熊本)の試合で、9回に広陵の3番・中村 奨成捕手が放った、左翼席への弾丸ライナーの3ランのことだ。

内角の難しい球だった。後にソフトバンクに入団する田浦 文丸投手の投じた直球。腕を折りたたんで振り抜いた打球が、「あっという間」に左翼席に突き刺さった。勝利を決定づけるダメ押しの3ランは、甲子園にどよめきを起こした。

この打球は、中村がこの夏甲子園で放った3本目の本塁打だった。このスラッガーは、その夏に6本塁打を放って、PL学園(大阪)時代の清原和博氏が作った大会5本を抜き、大会最多本塁打の記録を打ち立てた。秀岳館戦だけでなく準決勝の天理(奈良)戦も記者席で見ていたが、初回に放った大会5本目のバックスクリーン弾も、ほれぼれする当たりだった。天理戦の5回に放った6本目もそうだが、簡単ではない低めの球をとらえた打球だった。とんでもない天才が現れたと思ったものだ。

あれから7年が経った。広島にドラフト1位で入団した「破格」のスラッガーは苦しみ抜いてきたが、素質開花の兆しが見えてきている。今季、ウエスタンリーグで9試合に出場し、34打数12安打で、打率は.353。何より本塁打を2本も放っている。これまでウエスタン・リーグのシーズンでは4本塁打が最高だったが、もう半分を放ったことになる。

開幕こそ2軍スタートだったが、この成績が認められ、3月31日に1軍に昇格した。あれだけ甲子園で放物線を放った男だ。そろそろプロでも、あの衝撃的な打球を見てみたい。

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この記事の執筆者: 浦田 由紀夫

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