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野球王国・愛知の“頑張る公立校”が面白い! 私学隆盛の中での奮闘、「新基準バットは追い風だ」と甲子園へ虎視眈々

2024.02.01


小牧南ナイン

私学圧倒的優位の中で…

愛知県の高校野球は歴史的に、私学4強と呼ばれている中京大中京東邦享栄愛工大名電などの名古屋市勢が圧倒的に強い。さらには「昭和」の一時代には、そこに1枚加わっていた愛知や、近年では至学館愛知産大工に、名古屋地区勢として中部大春日丘中部大一栄徳星城などの私学勢が圧倒的だ。

他地区でも、甲子園出場を果たしている愛知啓成愛知黎明の尾張勢に、愛知産大三河豊田大谷の西三河勢がいる。さらに東三河勢では昨秋の東海大会を制した豊川を筆頭に桜丘豊橋中央らの私学が毎年上位で競い合っている。

愛工大名電・大泉塁翔

しかし、愛知県の高校野球は、それらの私学勢に対抗しようと、熱心な指導者がいる公立勢の頑張りが支えてきたという背景もある。そして、公立勢が頑張ることで、さらに愛知県の高校野球が盛り上がっていくとも言われている。それは成章、岡崎工、国府刈谷などが甲子園出場を果たした1970年代には顕著に現れた。

さらには90年代にも、大府が3年連続センバツ出場を果たし、98年には豊田西が頑張りセンバツ出場を果たして甲子園でも2勝している。2000年以降では21世紀枠で08年に成章、15年に豊橋工が出場している。他にも大府刈谷なども健闘し、それを追って西尾東も甲子園に手が届きそうになった。そうした実績のある学校を追いかけて、公立各校は健闘している。

ミラクル小牧南の快進撃

小牧南ベンチ

公立校が1校でも突出して上位進出を果たすと、他校も「あそこが、頑張っているのならば、ウチも負けていられない」という気持ちになるのか、競うように他の公立校も健闘していく。こうした切磋琢磨が、確実に県全体の高校野球のレベルを底上げしているといっていいであろう。

昨年秋も、尾張地区の小牧南が県大会で杜若などを下してベスト4に進出。ミラクルな力を示した。小牧南は、東海地区の推薦校には漏れたが、21世紀枠代表候補の県推薦校となった。吉田将人監督は、「こうして結果を残していくことは、やはり1つの自信にはなると思います。それに、OBの人たちが喜んでくれて、それがまた応援していって貰えるということに繋がっていくと思います」と喜んでいる。吉田監督自身は中部大春日丘の出身だが、公立校での指導に熱い思いで挑んでいる。

小牧南は、ある程度の進学実績も維持している中堅の普通科公立校である。それでも、なんらかの拍子で結果を残すことで、力以上のものを発揮していくというのも、こうした公立校の特徴でもある。たまたま1年生に能力のある選手もいるということだが、そのことで上級生たちが刺激を受けて、「自分たちも負けられない」という意識になっていることも確かであろう。

「西三河の曲者」の意欲

写真はイメージ

そうした傾向は、西三河地区ではさらに顕著だ。熱心な指導者も多く、指導者たちも情報交換したり、練習試合なども組んだりして交流しながら切磋琢磨しあってきている。そういう中で、西尾東は2018年夏の第100回記念選手権東愛知大会では決勝進出を果たしている。それだけではなく、これまでベスト4も秋季県大会も含めて3度。甲子園を具体的に意識できるところまで来ていた。それに刺激を受けて、西尾もこのところは毎年、好チームを作り上げている。県高野連の理事も務めている西尾の田川誠監督は、「愛知県の中でも、特に西三河地区は公立校が競い合って均衡した力になってきたと思っています」と感じている。

その西三河地区の中でも、近年は実績を上げてきて「西三河の曲者」とも言われている安城の加藤友嗣監督は、いろいろ仕掛けていく野球を得意としている。「私学に比べると、必ずしも能力的には高い子がいるというワケではありません。だけど、それならばそれで、戦い方もあるはずだ」という考え方である。そして、新基準の低反発バットとなった今季は、「さらに仕掛けていく野球を磨いていきます。新基準バットは追い風かもしれません」と、意欲を見せる。
刈谷工科岡崎工科といった実業校も、スポーツ推薦を導入するなど、積極的に部活動で学校を活性化していこうという姿勢も示している。岡崎工科は毎年11月の連休には関東遠征を組んで、横浜高(神奈川)など、甲子園でも実績のある学校と試合を組むことによってモチベーションを上げている。

知多地区では東浦である程度の実績を作った豊田西出身の中嶋勇喜監督が大府へ異動したことで、新しい風を吹かせそうだ。大府は2021年夏には現刈谷工科の野田雄仁監督がベスト4まで進出して復活をアピールしている。そして中嶋監督となって、2023年は夏は優勝する愛工大名電に、勝利まであと1死まで迫る大善戦で健在ぶりを示した。さらに秋季大会では知多地区を1位で通過してシード校として出場したが、初戦で中京大中京に競り負けた。しかし、その後の全尾張大会では決勝で誠信を下すなどして優勝。注目の投手もおり、春以降へ向けてさらなる躍進も期待される。

愛知の高校野球のすそ野を支えるのは公立校

同地区は、私学が日本福祉大附しかないということもあるが半田横須賀といった進学校や知多翔洋東浦東海南なども競い合っている。春の知多地区予選も激しい競い合いが期待される。

また、今秋は東三河勢の躍進が光ったが、公立勢としても好投手を擁する豊橋東豊橋商は、かなり高いレベルでまとまっていると評価されている。進学校の豊橋東は秋季県大会時に感染症によって、主力選手が大会に出られないということになってしまって不運もあった。その巻き返しも期待される。豊橋商は、投手の二枚看板がおり打線も力がある。県大会は、それがもう1つ機能せず西尾東に屈したものの、その後に開催された全三河大会では西尾東にリベンジし西尾岡崎工科、私学の桜丘を下して優勝。力のあるところを示した。

他にも伝統のある成章国府、23年には好チームを作り上げていた蒲郡に加え、豊橋工(現豊橋工科)を21世紀枠で甲子園に導いた林泰盛監督が率いる豊橋西や、地域一番の進学校として人気のある時習館も注目だ。

こうした公立校勢が、愛知県の高校野球のすそ野をしっかりと支えている。全国一、二を競う大会参加校を抱える愛知県の高校野球。甲子園を目指す強豪私学に対して、その一角をどう喰い下がって倒していくのかということを目指す公立校も多い。その戦いぶりも含めて、愛知県の高校野球は今年も興味深い。

(文/手束仁)

<関連記事はこちら>
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この記事の執筆者: 田中 裕毅

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