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グラウンド温度が7度も変わる、小さな茶殻のチップで酷暑軽減?!

2023.10.21


ZOZOマリンスタジアムのグラウンド

高校野球の聖地・甲子園。高校球児なら、全員が聖地を目指して野球に打ち込んだはずだ。甲子園に立ったことのある選手に聞くと、「広かった」という声が多く聞かれるが、同じくらいに内野の黒土や、外野の芝、観客席など「美しい」と評する選手たちがいた。

実は甲子園の外野のフェンス際、ウォーニングゾーンが人工芝になっていることはご存じだろうか。以前までは天然芝だったが、壁際の管理が難しかったことや、選手たちがランニングで良く使うコースだったことやファンのイベントでもランニングコースにしていた故に傷みやすいといった課題があった。そこで2022年から人工芝に切り替えたことで解決に結びつけていた。

BASEBALL-TURF

その人工芝は、総合スポーツ用品メーカーのミズノが販売しているMS CRAFT BASEBALL TURFを採用している。NPB球団が本拠地としている球場のなかでは甲子園を筆頭に、ベルーナドーム、バンテリンドームナゴヤ、京セラドーム大阪、ZOZOマリンスタジアムなどで導入されるなど、プロ野球ではシェアNo.1を誇る。

その他にも全国で50か所以上の球場で採用されている実績を誇る。耐久性や衝撃吸収性などを含めて、他社にはない、いくつかの強みが人気を博している。なかでも衝撃吸収性は入念に確認作業が必要な性能である。

バウンドが一定でなければならない。プレーに直接的に影響することを考えれば、衝撃吸収性は重要な機能だ。人工芝の構造の説明を含めて、担当者である鈴木正人さんはこう説明する。

「下地がアスファルトなのか、それともコンクリートなのかによってバウンドが変わるので、それによって芝の長さを変えて、厚みを作ることで衝撃吸収を調整します。そのうえで『何回投げただろう』と思うほど、バウンドは何度も確認しました」

バウンドを均一するのは難しそうだが、ミズノには普段からの道具作りはもちろん、総合スポーツ用品メーカーだからこそ持ち合わせる技術力がある。実際、サッカーはバウンドを含めてサッカー協会で設定した基準をクリアしなければ、試合でピッチが使えないほど厳しい。その基準をミズノは18の製品がクリアしており、現在販売をしている。

だからこそ、野球の人工芝も十分対応が可能だ。他に比べて芝を長く、なおかつ特殊加工を施すことで地面がアスファルトでも、コンクリートでもバウンドが一定にできるようにした。

茶殻でできた充填材・Green tea

そしてもう1つ、人工芝の上に撒かれている小さなチップ、充填材も大事な役割を担う。

人工芝のグラウンドに行くと、小さい黒いチップを見たことがあるかと思うが、これが充填材である。ゴム製品の端材から作られ、厚みにして30ミリ前後。これが選手へ与える衝撃を緩和させるために重要な役割を担っている。

芝と充填材の両方がセットで初めて効果を発揮するため、この2つは必ず一緒に販売されている。この充填材に対して、「おーいお茶」で有名な伊藤園とコラボして、茶殻からできた充填材、Field Chip「Green tea」を開発した。

取り組みそのものは2018年から始まり、飲料生産後に残った茶殻を特別な加工で充填材に使うチップへ生まれ変わらせる。その量は、サッカー場1面(8,000㎡)に全量使用する場合、「おーいお茶」525mlペットボトルおよそ58万本分の茶殻を再利用するなど、環境にやさしい。

さらに使用済み茶殻のリサイクルであるため、サッカー場1面の場合、およそ5.8トン、サッカーボール53万個分のCO2削減に相当する。これには鈴木さんも、「茶殻を処分する場合、結局、燃やすためCO2が出てしまうところ、充填材にリサイクルすることで環境にも良いと思います」と話す。

さらに選手にとっても優しい。茶殻の充填材を使うことで、表面温度の上昇も抑えられ黒いゴムの充填材と比較すると、およそ7度も違いが生まれることが、独自調査で分かっている。

2023年の夏は特に酷暑で大きな話題となった。甲子園でもクーリングタイムを採用するなど、酷暑対策を講じるほどの異常だった。これからも酷暑と向き合うことが間違いない中で、ミズノと伊藤園がコラボした茶殻の充填材は、酷暑対策として見直されるのではないだろうか。

実際、他競技とはいえ、全国には茶殻の充填材を採用している高校があり、「目隠しして入っても温度が違うので、場所がわかる」と話すほど。効果は間違いなくある。

「これから野球界でも多く使ってもらえたら」と鈴木さんは最後に話した。実は鈴木さん、元プロサッカー選手で、トップアスリートとして活躍していた時代がある。施設を含めた環境がどれだけ重要なのか理解しているだけに、茶殻の充填材を強く推し進めるのだ。人工芝とセットで考えて作られているため、手軽に採用できるわけではないが、検討しているチームは一度調べてみてはどうだろうか。

この記事の執筆者: 田中 裕毅

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