3回戦 専大松戸 vs 土浦日大
一瞬のスキも見逃さなかった、土浦日大の6点差逆転勝ちを象徴するあるシーン
<第105回全国高校野球選手権記念大会:土浦日大10ー6専大松戸>◇16日◇3回戦◇甲子園
「まさか」が起きるのが高校野球。改めてそう思わざるを得なかった。
3回表を終わって6対0と大きくリードしていたのは専大松戸(千葉)だった。そこまで7安打を放ち、土浦日大(茨城)はすでに3人目の投手をつぎ込んでいた。地方大会なら、コールドゲームの雰囲気も漂い始める。しかし、土浦日大はひたむきに少しずつ、相手のスキをうかがうように攻めていったのだ。
3回裏、4連打で1点を返すと、敵失でさらに2点が入る。専大松戸の堅い守備陣にやや動揺が走る。するとこの試合を象徴するようなシーンが訪れる。
無死二、三塁。土浦日大の鈴木 大和内野手(3年)が二塁手右へのゴロを放つ。二塁手は飛びついて捕球はできなかったが、右翼へ転がるのを防ぐことはできた。三塁走者がかえり、打者走者も一塁へ。内野安打となった。仕方ないことだったが、相手の反撃を止められない動揺がまだあったのか、内野陣に二塁走者の動きが見えていなかった。二塁手は軽く他の選手へ球を送球してしまう。その力のない送球を見て、三塁を大きくオーバーランしていた松田 陽斗内野手(3年)が一気に本塁へ向かった。球を受け取った選手が慌てて本塁へ投げたが、時すでに遅し。5対6と1点差になった。
怒涛の攻めに押されたのか、普段は堅守の専大松戸の内野陣にも動揺が隠せなかった。甲子園の「魔物」が姿を現し、土浦日大はその「魔物」を味方につけた。
6点をリードされていたチームが一気に5点を奪った流れは簡単にはひっくり返せない。4回に追いつくと、5回には3点を勝ち越して土浦日大が勝利。1イニング、1プレーの瞬間に甲子園の女神が専大松戸から土浦日大へと移動した。
終わってみれば3番・後藤 陽人内野手(3年)、4番・香取 蒼太外野手(3年)、6番・鈴木の3人が3安打猛打賞をマーク。チーム16安打の10得点の猛攻を見せた。
開幕戦をタイブレークの末に制したチームは、勢いに乗って甲子園初のベスト8に進出。八戸学院光星(青森)との準々決勝も、一瞬のスキを見逃さない攻めで食らいつく。