U-18日本代表左腕・森本哲星 3年春は背番号20でメンバー入りから急上昇
市立船橋(千葉)を15年ぶりの甲子園に牽引した森本 哲星投手(3年)はバッテリーを組んだ片野 優羽捕手(3年)とともにプロ志望届を提出した。最速143キロを誇る実践派左腕で夏の甲子園の後にはU-18日本代表にも選出された。鳥取からプロ志望を掲げ市立船橋へ入学した森本はどのようにして世代屈指の左腕まで成長を遂げたのか。
プロ志望を掲げ鳥取から入学

森本哲星(市立船橋)
中学時代まで鳥取県で過ごしていた森本は、高校入学時に家族とともに千葉県へ移住し市立船橋へ入学した。
進学先については双子の兄で「3番・中堅手」の主力として活躍した森本 哲太(てった)外野手(3年)が決めたそうだ。経済的な面でも「公立で野球が強いところ」を探していたところ、公立トップの印象があった「習志野を倒したい」という思いで市立船橋に決めた。
「人数も多い中で、自分がどれだけ通用するかは不安でもあったのですが、逆に自分の力を試せるとも思いました」
部員100人を超える市立船橋は、少人数だった鳥取の南部中軟式野球部とは全く異なる環境だったが、「高卒プロ」を掲げた森本にとっては刺激の多い場所だった。
背番号20でブレークした春

森本哲星(市立船橋)
森本がブレークしたのは3年春の大会だった。ケガで出遅れて「背番号20」とギリギリのメンバー入りだったが、準々決勝、決勝の2試合に登板し圧巻の成績を残す。準々決勝の東京学館戦は10奪三振完封。決勝の銚子商戦ではリリーフで登板し6.2回1安打無失点で28年ぶりの優勝へ牽引した。
夏の千葉大会でも決勝の木更津総合戦では9回完投勝利を果たし2年秋に敗れたリベンジに成功。そして夏の甲子園の初戦、興南(沖縄)戦では2番手でマウンドに登り、6.2回を0失点と好救援し実力を示した。
「興南戦ではいいピッチングができて、応援してくださった方々にも恩返しができた」と、サヨナラ勝利を果たした直後は、何度も助けられた「市船ソウル」に揺れるアルプスの光景を目に焼き付けた。
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森本哲星(市立船橋)
甲子園の舞台でも快投した森本投手はU-18日本代表にも選出された。
「甲子園に行けて、とても満足感がありましたが、その上、日本代表に選んでいただいたことは、とにかく嬉しかった」
3年春から夏にかけて世代を代表する左腕へ急上昇した。U-18日本代表ではオープニングラウンドの第3戦、パナマ戦で先発し、テンポの良い投球で5回3安打2失点で先発の役目を果たす。
馬淵監督や比嘉コーチからは「球数制限もあるので、とにかくいけるところまで、できれば4回までは行ってほしい」と言われていたが、期待を上回る5回まで投げ切った。外国人打者との対戦では手応えもつかんだ。
「スライダーで見逃し三振が取れたり、空振りをとることができて、世界でも通用して自信につながりました」
精度の高い縦のスライダーと直球を軸に、快投でオープニングラウンド3連勝に貢献した。
U-18代表での経験 一番仲が良かったのは…
米フロリダの宿舎では履正社(大阪)の光弘 帆高内野手(3年)と同部屋だった。部屋割りは「スタッフの方々が『こいつとこいつだろ』みたいな感じで決めていました」と教えてくれた。光弘とは互いのチーム事情などを話したという。「一緒に楽しく過ごすことができました」とフロリダでの日々を思い返し笑みがこぼれた。
代表選手の中では、甲子園で戦った興南の生盛 亜勇太や大阪桐蔭の川原 嗣貴投手(3年)など、投手陣は特に仲が良かった。
「自分と生盛は知り合いがいなかったので、LINEで『よろしくね』と伝えていました(笑)」
トップレベルの投手たちと交流し、刺激的な大会だったと振り返る。
体幹を強化し制球力UP
最速143キロを誇る森本は鋭く落ちる縦のスライダーが魅力だが、今シーズンはどの球種でもゾーンで勝負することができる制球力を身につけた。
「キャッチボールでは力ではなく体重移動を意識しています」。上半身と下半身を「連動」させる体幹を強化したことで、フォームに安定感が増したと言う。
それによって自分のイメージと実際の動きとの差異が少なくなり、実戦でもより再現性の高いフォームを継続することができるようになった。
その結果、制球難に苦しんだ2年秋とは別人のように、どの球種でもバラつきが少なく、ゾーンで勝負できるようになり、有利な対戦が増えたようだ。
ともにプロ志望届を提出した片野と一緒に吉報を待つ。「やることはやってきたので、不安もあるのですが、楽しく待ちたいと思います」と取材日の練習では明るい表情で語ってくれた。
3年春から鰻登りの活躍ぶりでU-18日本代表に上り詰めた左腕は「高卒プロ」の夢を実現することができるだろうか。
(取材=藤木 拓弥)