通算54発、最速147キロのドラフト候補・西村瑠伊斗(京都外大西)はなぜ本塁打を量産できるようになったのか?
今年に入って注目度を急上昇させたドラフト候補がいる。それが京都外大西の西村瑠伊斗(3年)だ。投げては最速147キロ、打っては高校通算54本塁打と、投打で超高校級の逸材。今夏の京都大会では6試合で4本塁打と、「打」で強烈な印象を残している。今秋のドラフト会議で上位指名も期待される西村に、これまでの野球人生の歩みを語ってもらった。
中学時代はポニー日本代表を経験

西村瑠伊斗(京都外大西)
出身は京都府京都市。元高校球児だった父の影響もあり、小さい頃から野球の球に触れる機会が多かったという。小学2年生から軟式の七条ファミリーズで本格的に野球を始め、4年生から投手を務めるようになった。「周りより打球が飛ばせているなとか、ちょっと球が速いなくらいは思っていました」と早くから実力を発揮していたようだ。
中学時代は京都ポニーに所属。3年生の時にはポニーリーグ日本代表に選出され、米国で開催された2019 U-16コルトの部ワールドシリーズに出場した。当時の思い出を西村はこう振り返る。
「海外に行って試合をするのは滅多にないことなので、大きな経験をさせてもらったことは良かったと思います。色んなチームがあって、日本はちゃんとしているなと思いました。アップも海外のチームは適当にやっているように見えました」
中学生の時点で投手としては130キロ台後半の速球を投げ、通算15本塁打を放っていた西村が進学先に選んだのは、2010年夏以来、甲子園から遠ざかっている京都外大西だった。「体験に来た時に凄く声を出していて、良いチームだなと思いましたし、監督も何回もチームや学校の方に来て下さって、ここにしようと思って決めました」と進学の理由を語る。
ちなみに西村が進学先を決める直前の2019年秋の京都大会準々決勝で京都外大西は京都国際を相手に9回表に5点差を逆転する劇的な試合を演じている。この試合を西村は観戦していたそうで、上羽功晃監督は「良い試合を見てもらえたな」と思ったという。
京都外大西に入学していた当初は、練習の雰囲気やレベルの高さについていけるか不安だったというが、紅白戦で結果を残したことで1年夏の独自大会からレギュラーに定着。打撃以上に上羽監督が評価していたのが走力だった。
「普通のショートゴロが(一塁で)際どいタイミングだったので、メチャメチャ速いなと思いました。バッティングもそんなに悪くないし、足も速いから外野で使っていても戦力になるということで使いました」
西村の50メートル走のタイムは6秒0。入学してから体が大きくなったことで、今は少し遅くなってしまったそうだが、1年生の頃は俊足を武器にしていた選手だった。
独自大会では全試合で1番中堅手として出場。「甲子園はなかったですけど、緊張感もあったので、そこで何とか結果を出せたことは2年になってからも繋がったと思います」と飛躍のきっかけとなる大会になった。
入学当初は「プロに行けたらいいな」くらいに考えていたが、2年生になるとプロのスカウトからも注目されるようになり、本格的にプロ入りを意識するようになる。2年夏には準決勝の乙訓戦で2打席連続本塁打を放つなどの活躍を見せ、準優勝に貢献。秋も5試合で5本塁打と公式戦で無類の強さを発揮した。
「試合でビビっているところは見たことがないです。気持ちの波がなく、常に平常心なのは、あいつの特徴かなと思います」と西村の内面について語る上羽監督。技術面に加えて、精神的な強さも西村の強みの一つだ。
プロでは野手一本で勝負

西村瑠伊斗(京都外大西)
下級生から打力を見せつけていた西村が本塁打を量産できるようになったと感じたのが、3年生に入ってから。「力を入れないことと、体が開かないことを自分の中でも意識していましたし、監督からも言われていました。やっとそれがつかめてきて、ホームランも出てきたと思います」と本塁打量産の秘訣を語る。
上羽監督によると、1年生の頃は強く振ろうとする傾向があったそうだが、ジャストミートすれば、力いっぱいに振ろうとしなくても本塁打を打てるコツをつかんだことで、コンタクト率も上がり、結果的に本塁打も増えるようになった。
西村の打撃フォームで特徴的なのが、世界記録の868本塁打を記録した王貞治氏に似ていることだ。中学時代はチーム方針でノーステップで打っていたそうだが、「足を上げた方がタイミングもとりやすいし、力も入るかなと思ったので」と高校に入ってから足を上げる打法に変えた。
また、他の打者に比べてグリップの位置が低いことに関しては、「力を抜こうと思ってやっていたらあの位置になった感じです」と説明した。彼の話を聞いていると、脱力への意識が高いことが伝わってくる。
さらに打席では直球にタイミングを合わせて、変化球に対応することを意識しているという。直球待ちで変化球を投げられても、体を残して長打を打てるのが西村の長所だ。178センチ、77キロと際立って大きな体をしているわけではないが、技術力の高さで本塁打を量産している。
夏の大会前はスランプに陥っていたそうだが、「何とか1回戦で一本打てたので、そこから調子が上がっていった」と1回戦の洛北戦で本塁打を放つと、そこから勢いに乗り、6試合で4本塁打の大暴れ。「球がよく見えていて、どんな球が来ても正直、打てると思っていました」とゾーンに入っているような感覚だったそうだ。
特に会心の一発だったのが、準々決勝の立命館宇治戦。8回表に西村の安打などで5点差を追いつくと、同点で迎えた9回表に西村が決勝のソロ本塁打を放って、勝利を引き寄せた。「ベンチもメチャクチャ迎えてくれたので、嬉しかったです」と思い出に残る本塁打となった。
打撃ではこれ以上ない活躍を見せた一方で、春季大会後に肩を痛めたため、夏の大会はリリーフによる1試合の登板に留まった。他の投手陣で何とか踏ん張ったが、準決勝で力尽きる形となり、龍谷大平安相手に5対12の8回コールド負け。甲子園出場は叶わなかった。
「後々になって、みんなに言われるんですけど、自分が投げられていたら(龍谷大)平安戦もあんな試合になっていないだろうし、甲子園にも行けたかもしれないので、自分の肩が万全だったらなという後悔があります」と悔やむ西村。この悔しさはプロの世界で晴らすしかない。夏の大会が終わってからも毎日のようにグラウンドに顔を出し、練習を続けている。
高校では二刀流として活躍していたが、「肩も壊していた時期もありましたし、自分でもバッターの方が向いていると思う」とプロでは野手一本で勝負する予定だ。
「3段階くらい上の世界に行くので、しっかりこれから体を作っていって、獲って良かったと思ってもらえるようにしたいです。初めの頃は高校の時みたいにホームランが出るわけではないので、まずは最多安打などで活躍できたら良いなと思っています。トレーニングしてパワーもついたら、ホームラン王も狙っていきたいです」
今後に向けてこう抱負を語った西村。超高校級スラッガーの今後に要注目だ。
(取材=馬場 遼)