Interview

ただ走るだけのメニューをやめて151キロを出した山本由伸(オリックス)の都城高時代【前編】

2022.03.25

 現在のNPBにおいて、球界屈指の投手として注目されるオリックス・山本 由伸投手(都城高出身)。昨年は26試合で、18勝5敗、防御率1.39、206奪三振と投手タイトルを総ナメ。沢村賞、パ・リーグMVPを受賞し、今や多くの投手が憧れる存在となっている。今回はそんな山本のフォーム作りにおいて考えていることや、フォーム作りで悩んでいるアマチュア投手たちへ有益なアドバイスを語ってもらった。今回は本人が語る都城高時代について紹介したい。

体の線が細すぎては速いボールは投げられなかった

ただ走るだけのメニューをやめて151キロを出した山本由伸(オリックス)の都城高時代【前編】 | 高校野球ドットコム
高校時代の山本由伸(都城出身)

 岡山県の東岡山ボーイズでは二塁手をメインとしながら、投手もこなしていた。「2試合目で投げる感じの位置づけでした」と振り返るが、それでも都城高では1年夏から登板できたほどの投手なので、非凡な能力があったのだろう。野手からのスタートだったのは、本人の希望もあった。

「高校に入る時に、投手、野手、どっちが好きなの?と聞かれて、どっちも好きなので、どっちもやりたいですということで、まずは両方やることになりました。高校に入ってからサードで出させてもらいながら、練習試合で登板をさせてもらうこともありました」

 どちらの役割でも試合に出場していたのが、投手メインで試合出場するようになったのは、当時のチーム事情で山本が投手に専念することになったからだ。

 与えられた試合で着実に結果を残した山本は、秋には主戦として任されるようになる。秋では県ベスト4、1年生大会でも準優勝。打たれた悔しさもあったが、「大会前、初めてエース番号を渡されたときは嬉しかったです」と当時を振り返る。

 このときは最速140キロほどで常時135キロ前後。高校1年生投手としては非凡な物を持っているが、そこから高校2年で151キロと、一気に高校球界トップクラスの球速を誇り、浜地 真澄投手(福岡大大濠ー阪神)、梅野 雄吾投手(九産大九産ーヤクルト)、太田 龍投手(れいめいーJR東日本ー巨人)とともに、九州四天王と呼ばれるまでになった進化の秘密はオフのトレーニングにあった。

 まず体重を増やした。入学当初、63キロだったがハードな練習の影響で、夏は58キロまで落ちていた。これでは当然パワーが出るはずもない。それでも素質の高さで140キロ前後の速球を投げていた。NPBのスカウトは目をつけていた。

「ある試合の前の試合で投げていたのが、当時、宮崎県で好投手として注目されていた横山 楓さん(宮崎学園ー國學院大ーセガサミーーオリックス)です。スカウトの方は横山さんが投げた試合のあとにも残っていて、僕のことも見てもらったようで、監督から『細すぎるって言ってたぞ』と言われて、そこから頑張ってたくさん食べて、増量して球が速くなりました」

 食トレとして、1日4食とっていたというが、その1食にどんぶり3杯食べていたという。当時の監督が厳しかったため、山本は精いっぱい、口に運んだ。

 またトレーニング内容の変化もあった。それはランメニューの変化だった。

[page_break:合理的なメニューの改善により、球速が大幅アップ]

合理的なメニューの改善により、球速が大幅アップ

ただ走るだけのメニューをやめて151キロを出した山本由伸(オリックス)の都城高時代【前編】 | 高校野球ドットコム
高校時代の山本由伸 1年時→3年時

 当時の都城高は走るメニューが多く、特にその内容は壮絶なものだった。

「分間走という30分走って、20分走って、15分走って、10分走って、7分走るのを毎日やっていました。とにかくきつかったですね。ほぼダイエットだと思います」

 もちろんランメニューは野球選手にとっては大事ではあるが、そこに「合理性」が伴わなければ、山本がいう「ダイエット」となってしまう。

 ただ1年の冬からメニューの改善があった。

「当時の監督さんがトレーニングメニューを勉強をされていたようで、分間走がなくなって、50メートル走やショートダッシュも取り入れて、メディシンボールを使ったり、ピッチャーメニューも入り出して、良い感じになりました」

 つまりただ走り込むだけというメニューから投手に必要な適切な短距離走などのメニューを取り入れたことにより、食トレをしていた時期もうまく合わさって最終的に高校時代の体重は78キロに達した。

 エンジンが大きくなっていくとともに投手として必要な筋肉を身につけていき、ついに151キロという球速を手にしたのであった。

 ダイエットになるような走り込みはしない。体重を増やす生活を送る。そして必要なトレーニングを毎日こなす。その積み重ねで球速がアップした成功体験は、後のプロ野球人生に生きることになる。

 この時、高校時代の監督に教わった投球フォームに対する考えが大きく今に生きている。

「基本的には自分のフォームを重視して、いじりすぎず、監督からはイメージや体重移動、バランスを教えてもらいました。高校時代の時はとにかくバランスを大事にしていました。
捕手に対して、真っ直ぐ投げるイメージで投げなさいと言われていたので、調子が悪い時こそそれをイメージして投げていました。」

 このアドバイスは不調な時こそ生きた。
「調子が悪い時こそバランスが大事という意識ができたので、修正も多少できるようになりましたし、良い教えだったと思います。」

 野球が分かる人ならば、高校時代の山本の投球フォームの連続写真を見れば、キレイで技術力が高いフォームだと思う方も多いはずだ。事実、オリックス側も山本の能力、将来性を高く評価し、4位指名を受け、プロ野球人生の夢を叶えた。球界屈指の投手になる過程にはフォームのモデルチェンジがあった。

(取材:河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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