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好投手を次々と攻略。全国トップクラスの強力打線・明秀学園日立はいかにして成り立ったのか

2022.03.27

 今年のセンバツ出場校の中でトップクラスの長打力を誇る打線といえば、明秀学園日立(茨城)だ。昨年秋の公式戦10試合で、同14試合だった花巻東(岩手)と同じ14本塁打を放った。なんと6選手が本塁打を記録した。

 今センバツでは前評判通りの強打を発揮し、初戦では大会屈指の左腕・大野稼頭央投手(3年3年)擁する鹿児島大島(鹿児島)に8対0で完勝し、ファンを驚かせた。今回はそんな明秀学園日立打線に迫っていく。

 明秀学園日立の打撃理論は「球のラインに対してバットの軌道を入れること」。この理論は盛岡大附(岩手)、健大高崎(群馬)に広まり、どちらもホームランバッターが多く出ている。この理論の「師匠」は、明秀学園日立を率いる金沢監督である。

金沢監督が提唱する打撃理論のルーツは?

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石川ケニー主将(明秀学園日立)

 この理論に行き着いたのは、光星学院(現八戸学院光星=青森)の総監督時代だった。意外かもしれないが、坂本勇人内野手(巨人)が所属していた時代は、まだその理論ではなかった。

「坂本は脇が大きく開くスイングをしていました。このスイングを矯正したのですが、全然打てなかった。それを壊さずに指導していたら、たまたま肘が空くことがバットを入れられる長所になったのではないかと思いますし、あのスイングだからこそ、天才的なインコース打ちができたと考えています」

 総監督時代は、現場から離れる時間も多く、プロ野球のキャンプに赴いた。またいろんな球界の関係者と技術論など交わすようになって、今の打撃理論にいきついたという。当時はレベルスイング全盛の時代。最初は異端の声もあったが、金沢監督は自身の理論を信じ、選手たちに伝えた。

 その結果、田村龍弘捕手(ロッテ)、北條史也内野手(阪神)らがいた12年の光星学院の強力打線を作り上げる要素になり、この理論に取り組んだ盛岡大付打線も12年の160キロ右腕・大谷翔平投手(花巻東出身)を攻略する強力打線へ変貌し、甲子園出場。その後も安定して甲子園に出場するようになり、金沢監督の打撃理論は認められるようになった。

[page_break:投打の柱も金沢監督の理論で化けた選手 全国トップクラスの強力打線を証明へ]

投打の柱も金沢監督の理論で化けた選手 全国トップクラスの強力打線を証明へ

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強烈なスイングを見せる小久保快栄(明秀学園日立)

 これまでも明秀学園日立打線に強力なスラッガーはいたが、今年は金沢監督が「歴代でもトップレベル」と自信を持つ強力打線。金沢監督の理論で化けた選手が多く、特にエースの猪俣駿太投手(3年)は打撃スタイルが大きく変化した。

 喜多方ボーイズ時代は長打力のある選手ではなく、ミートして安打を打つスタイルだった猪俣。金沢監督に一から打撃理論を学んだ。

「中学時代は当てて塁に出るタイプでしたが、高校に入ったら常にフルスイングというのを言われたので、フルスイングでどんどん飛ばしていこうという意識でやっています」

 猪俣にとって幸運だったのは4番・武田一渓内野手(3年)や、主将・石川ケニー外野手(3年)など同期にスラッガーが多くいたこともある。

「左打者だったらケニーがお手本になるようなバッティングをしているので、自分にどこが足りなくて、どこを補えばいいのかはケニーを見て参考にしています」

 昨秋は8番打者としてのスタートだったが、練習試合でのホームランをきっかけに、5番に昇格。強力打線の一角へ成長した。他にも佐藤光成外野手(3年)、小久保快栄内野手(3年)とスラッガーも揃い、金沢監督は「スケールの大きさでいえば、私が光星(八戸学院光星)の総監督だった北條史也(阪神)、田村龍弘(ロッテ)がいた代より上です」と絶賛するまでとなった。冬場の練習では、クリーンアップの選手たちが竹バットで次々と本塁打性の打球を飛ばすなど、明らかにパワーが違った。この打撃理論を最大限に発揮するためにウエイトトレーニングではパワー系のメニューを徹底的にこなし、レベルアップしてきた。

 フィジカル強化+技術力向上をしっかりと両立してきたからこそ、高いパフォーマンスが発揮できている。

 冬の練習では、個々のポテンシャルアップを目指しつつも、「組織力で勝つ」ことも両立するためにバントや細かい戦術も磨いてきた。

 取り組みはしっかりと実り、1回戦では大会屈指の左腕・大野稼頭央投手を攻略した。2回戦では最速149キロ右腕・米田天翼投手(3年)を擁する市立和歌山と対戦。米田を攻略し、全国トップクラスの強力打線であることを証明したい。

(取材=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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