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人気YouTubeチャンネル連発の土台は、過去に執着しない人生哲学と赤点を出さない経営理念 株式会社ケイコンテンツ・平山勝雄社長(大阪府立高津OB)

2021.11.26

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人生で大切なことはすべて高校野球から教わった

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 草野球をテーマにした番組や、元プロ野球選手とのコラボ企画などが人気のYouTubeチャンネル「トクサンTV」。このチャンネルを手掛けるのは、チャンネル内では「アニキ」として活躍する株式会社ケイコンテンツ・代表取締役の平山勝雄さんだ。
 2016年にスタートした「トクサンTV」は、野球系チャンネルでは最大規模のチャンネル登録者数64.7万人を誇り、その他にも平山さんは人間の闇を映し出す漫画系チャンネル「ヒューマンバグ大学_闇の漫画」、若者に人気のコメディートークチャンネル「マリマリマリー」など、人気チャンネルを次々と生み出している。

 元々は、読売テレビの番組プロデューサーを務めていた平山さん。「ダウンタウンDX」「秘密のケンミンSHOW」など、誰もが知る全国ネット番組で演出を務めてきたが、それらすべての土台を作ったのは、高校野球での3年間であると熱く語る。
 平山さんの高校野球は、一体どのようなものだったのだろうか。

一発逆転のある野球に魅力された少年時代

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株式会社ケイコンテンツ・平山勝雄社長

 1978年生まれ、大阪府大阪市出身の平山さん。小学校の仲の良い友達が野球をやっていたことから、自身も興味を持つようになり、3年生の時に少年野球チーム・城東パンサーズに入団する。
 チームは全国大会常連の強豪で、上級生になると平山さんも内野手として活躍。当時は「愛のムチ」もまだ許される時代で、厳しい指導者のもとで練習に日々打ち込んでいたが、厳しさの中にも愛情を感じながら野球に慣れ親しんだと振り返る。

「6年生の時に、淡路島で行われた全国大会に大阪代表として出場したことが記憶に残っています。
 とにかく厳しい時代で、今だったら問題になるような指導もありましたが、そこに愛情はこもっていたと感じますし、駄目だったとは思いませんね。もしあの指導がなかったとしたら、僕は今真っすぐに育っていないかもしれません。厳しい環境の中で野球をやらせてもらい、強く育ててもらったと今でも感じています」

 中学時代は、学校の軟式野球部に所属したが、ここでは小学校時代とは対照的に決して強いチームではなかった。野球が初心者の選手も多くおり、経験豊富な平山さんは自然とチームの軸に。大会ではあまり勝てなかったと明かすが、遊撃手として守備の要を任った。

「チームの中心選手として活躍していたと思いますが、投手がよく打たれていたこともあり、チームとしてはなかなか勝つことができませんでした。高校野球では投手に挑戦するのですが、これは中学時代に『野球は投手がアカンかったら負けんねんな』と感じたことがきっかけですね」

 中心選手として活躍する一方で、中学時代は勉強にも力を入れていた。文武両道を重視する両親の方針から、徹底的な指導で有名だった地元の学習塾に通い、野球と勉強の両立に励んだ。
 とはいえ多感な時期でもあり、授業中にお菓子を食べたり、友人にちょっかいをかけたりするなど、中学生らしい一面もあったと振り返るが、そんな時には塾の先生からも厳しい指導が入る。平山さん曰く「正しい裁き」を受けながらも、地元の進学校を目指して勉強にも精を出した。

「進学塾に行きながら野球にも打ち込んで、両立は大変でした。でもその一方で、やっぱり野球が大好きで、やっていないと生活に張りがなかった。特に引退して受験勉強をはじめた頃は、生きがいを失ったように感じていました。
 高校、大学と進んでも野球を続け、今でも週末には草野球を楽しんでいますが、結局僕は本当に野球が大好きなんだと思います」

[page_break:地元で一番の進学校へ入学。高校野球から学んだ「赤点を作らない意識」]

地元で一番の進学校へ入学。高校野球から学んだ「赤点を作らない意識」

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株式会社ケイコンテンツ・平山勝雄さん

 学習塾に通った甲斐もあり、地元の進学校・大阪府立高津高校へと入学した平山さん。学校偏差値は70を越える、学区内では一番の進学校だった。
 硬式野球部にも入部し、高校でも文武両道に励んだかと思いきや、野球中心の生活となり勉強は大きく遅れを取ったという。

「成績は悪かったのですが、僕は気にしていませんでした。生徒の自由を尊重する校風だったので、勉強もやりたい人がやればいいと強制されることはありませんでしたし。
 ただ授業はとても難しいですし、周りの生徒も淡々と勉強をしています。そんな中、授業中には僕はただただ寝るだけでした」

 だがその一方で、野球への情熱は健在だった。高校野球からは投手に挑戦し、甲子園出場を目指して練習に取り組んだ平山さん。チームは決して強豪ではなく、また指導者は選手の自主性を重んじたため、野球技術の向上に関しては選手たちに委ねられていた。その環境が平山さんには合っていた。
 自分たちの強みと弱みを踏まえながら、練習メニューを自分たちで考える毎日。練習グラウンドは他の部活動と共用だったため、危険が及ぶバッティング練習などは朝に行い、放課後は守備練習やピッチング練習を中心にメニューを組むなど、選手たちで工夫しながら取り組んだ。

「自主的な朝練は毎日行いました。授業が始まる1時間半前にグラウンドに集まり、バッティング練習や投手の僕は筋力トレーニングを行うなど、時間を有効に使って練習に取り組みました。またメニューも選手たちで考えなくてはいけないので、様々な本を読み漁って知識を身に付けましたね」

 自身でメニューを考え、練習ではトライアンドエラーを繰り返す。
 現代のものさしで測れば、成長のためには遠回りになる練習も多かった。一方で経営者となった現在でも通用する考え方を、当時から無意識に実践していたという。

「試合で打たれた時に、自分に足りないものは2種類あると感じました。それが力と技術です。もっと強いボールを投げる、もっと良いコースに球を投げる、その両面を鍛えていけば打たれる確率は低くなるだろうと思いました。
 とはいえ、練習時間も限られているので、両方を一気に伸ばすことはできません。そこで僕は、自分の得意分野である『強いボールを投げること』に特化しつつ、必要最低限のコントロールを身に付けることにしました。
 どれだけ威力のあるボールを投げていても、ストライクが入らなかったら意味がありません。勉強で例えると、赤点だけは出さない考え方です」
 会社経営においても同じだ。自社の強みを活かすことは大事であるが、世間が評価する最低ラインを下回る分野が一つでもあると、会社の評価そのものが大きく下がってしまう。強みを伸ばしつつ、赤点を作らない意識は、高校時代から意識してた。
「何かを成し得るためには、すべての要素が必要です。しかし現実として、全部ができる会社は少ないと思います。苦手な分野でも世の中が評価する最低ラインの点数を出して、その中で強みを活かしながら勝負しなければいけないのです」

[page_break:最後の夏は4回戦敗退。「後悔は1ミリもなかった」]

最後の夏は4回戦敗退。「後悔は1ミリもなかった」

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高校時代の平山勝雄さん

 自身を俯瞰して分析しながら練習メニューを組み、実力を伸ばした平山さん。エースとして迎えた高校3年の最後の夏は、惜しくも大阪府予選の4回戦で敗れて現役引退となったが、「後悔は1ミリもなかった」と口にする。大阪府を制覇して甲子園に出場できるような実力、戦力はなかった。それでも、与えられた環境の中でベストを尽くしたプロセスが、平山さんに達成感と満足感を与えた。

「最後は3回勝って4回戦まで行きましたが、今考えてもよくやったなと思います。チームとしての力は、大阪の強豪校と呼ばれる高校のレベルには全然達していませんでした。その中で出た結果は、持っている力以上のものでした。それぞれが自主性を持って、赤点を作らないように練習に取り組むことができたからだと思います。
 私の好きな言葉は『偉業は適材適所の凡人たちが成す』ですが、各々が自分の強みを活かしながら戦えたからこそ後悔もなかったのだと思います」

 後悔なく高校野球を終えた平山さんは、その後は受験勉強に気持ちを切り替える。勉強は周りの生徒よりも遅れを取っていたが、野球に向けられていた情熱を今後は受験勉強にぶつけ、遅れていた分を一気に取り返していく。
「高校時代は一点集中の性格だった」と当時を振り返り、学年で下位だった成績はみるみる上昇。一浪こそしたが、難関国立大の神戸大学に合格した。

「勉強に力を入れられたのは、3年生になって、また負けず嫌いになっただけです。周りが優秀な学生ばかりなので、僕だけ取り残されるのも嫌じゃないですか。もう勉強することしか残ってなかったので、仕方なく勉強に集中した感じです。
 それでも現役で受かるわけもなく浪人しましたが、野球に打ち込んでいた時間を削って、勉強と両立しておけば良かった、とはまったく思わないですね。何かに集中して取り組む時間は貴重だったと思いますし、僕には両立は無理だったと思います」

 平山さんから話を伺う中で驚かされたのは、中学、高校時代のエピソードをほとんど覚えていないことだ。結果や楽しかった記憶は何となく残っているが、そのプロセスが抜け落ちているケースが非常に多く、そして当時の後悔はほぼない。
 過去に執着せずに、目の前のことにとことん集中する。平山さんとは、そんな哲学の持ち主なのだ。

[page_break:神戸大学に入学。我流で到達した最速147キロ]

神戸大学に入学。我流で到達した最速147キロ

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株式会社ケイコンテンツ・平山勝雄さん

 平山さんは、大学進学後も野球を続けた。
 神戸大学硬式野球部は、奈良産業大学(現奈良学園大学)など強豪大学も所属する近畿学生野球連盟に加盟していた。チームの目標は大学野球の全国大会である「全日本大学野球選手権大会」、「明治神宮野球大会」への出場だ。
 平山さんにとって幸運だったのは、ここでも「自主性」がチームの方針だったことだ。

「指導者の方はいらっしゃいましたが、技術指導はなかったです。野球がずっと大好きで、大学生になってもすぐ野球をやろうと思えたのは、自主性の中でずっと練習をやっていたからだと思います。やらされる練習だったら、野球が嫌いになっていたかもしれません。
 野球ってもともとはゲームや遊びであり、楽しいはずなんです。楽しいゲームの中で失敗するからこそ、悔しくて素直に受け入れられるのだと思います」

 高校時代に続いて、自主性を重んじる環境の中で練習に励んだ平山さん。
 自身の持ち味だった威力のあるストレートをさらに磨くために、まずは体作りからスタートした。
 本を読み漁って体を大きくするためのトレーニング方法を学び、有名なトレーナーのいるジムにも通った。食事や睡眠にも気をつかい、様々な科学的なアプローチを実践して、その結果思い描いた通りに体はどんどんサイズアップ。
 そして体が大きくなるにつれて、ボールにも速さや強さが増していき、大学3年生になる頃には強豪大学の投手とも遜色のないストレートを投げ込んでいた。

「近畿学生野球連盟では奈良産業大学が特に強く、毎年セレクションで選ばれた選手たちが多く入学していました。当然、高校時代から実績のある選手たちなので、作戦遂行能力や勝負どころの執念、ミスした時の対処など、相手のほうがレベルは何枚も上でした。
 そんなチームを相手に勝つためには、高校時代と同じように強みを活かすことが大事だと考えたのです。
 最終的にストレートは147キロまでいきました。3年生の春まではなかなか勝利することができませんでしたが、秋のシーズンでは6勝1敗、防御率も1点台で敢闘賞を獲得しました。リーグの代表としてオールスターにも選出されて、自主性の中での成功体験を掴むことができました」

 決してエリート街道ではなかったが、自主性を重んじる環境だったからこそ、大学野球で一花咲かせることができ、また考える癖を養うことができたと平山さんは振り返る。

「僕の野球人生はたぶん特殊だったと思います。高校、大学と技術指導をしてもらう環境ではなかったので、自分で考えるしかなかったんです。我流でたまたま140キロ後半を投げることができましたが、やらされる練習から身に付いたことではなく、自分が野球が大好きで上手くなりたいと思い続けて努力したことが、そこにたどり着けた理由だったと思います」

[page_break:読売テレビに入社。一流タレントから感じた「プロの技」]

読売テレビに入社。一流タレントから感じた「プロの技」

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高校時代の平山勝雄さん

 平山さんの活躍に興味を示す社会人野球チームもあったが、就職氷河期だったこともあり、現役を引退して一般企業への就職を選択する。
 現役選手としてはやりきった気持ちがあり、就職活動を行う中で読売テレビから内定をもらい入社を決めた。

「テレビ業界だけを志望していたわけではありませんでした。テレビ局自体は素晴らしい会社なので、できることなら合格したらいいなと思ってましたが、まさか本当に内定をいただけると思ってなかったので嬉しかったですね」

 2003年4月、平山さんは読売テレビに入社する。
 まずは編成局に配属され、ここで2年間テレビの基礎を学び、2005年からは東京支社の制作部に移動。人気番組「どっちの料理ショー」を担当すると、その後「秘密のケンミンSHOW」のディレクターを担当。2011年からは「ダウンタウンDX」のディレクターに就任し、2018年11月からはプロデューサーも兼務するなど、人気番組を次々と任され、テレビマンとして活躍を見せた。
 そしてディレクターやプロデューサーとして番組作りを行う中で、多くのタレントと仕事を行ってきたが、一流の仕事を肌で感じる瞬間が非常に多くあったと語る。

「野球では自分がやりたいプレーとチームとしてやってほしいプレーとがあるかと思いますが、優秀なタレントさんは求められているプレーを瞬時に嗅ぎ取って実現しますよね。野球と似ている部分があると感じました。笑いが欲しい場面では笑いを取って、専門家の真剣な答えが欲しい時はあえて一歩引いたり、番組の流れをすごく読んでくれます。
 その中でも特に優秀なタレントさんになると、想像を超えるホームランを打つこともありますね」

 数あるタレントの中で、平山さんが特に「すごかった」と名前を上げるのがダウンタウンの二人だ。
「多くの方はご存じだと思いますが、松本人志さんはスーパーホームランバッターです。数え切れないほどのホームランを打っていますが、その一方でチームバッティングに徹して、後のバッターにつなぐこともできます。ホームランはいつでも打てるけど、チームにとってその時その時で大事なことを常に考えてらっしゃって、本当にすごいです。
 浜田雅功さんの場合は総指揮官、監督の立場なので、それぞれの打者にどんなチャンスの場面を与えるかを全部考えてらっしゃいます。他にも、素晴らしいタレントさんが多くいらっしゃいましたが、やっぱりダウンタウンのお二人がすごすぎましたね」

 業界トップレベルの技術に触れながら、長年にわたりバラエティ番組を作り続けた平山さん。その経験は、意外な形で展開を見せることになる。

[page_break:「トクサンTV」が人気チャンネルに。野球界への問題提起を大事に]

「トクサンTV」が人気チャンネルに。野球界への問題提起を大事に

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株式会社ケイコンテンツ・平山勝雄さん

 テレビマンとして働くかたわら、平山さんは週末には趣味として草野球チームでプレーを続ける。草野球でも140キロに達するストレートを投げ込み、現役さながらのプレーを続けていた。そんな折、2014年頃から野球系Youtubeチャネルが盛り上がりを見せてくる。
 テレビマンとしての血がうずき、「自分の番組作りの能力を、草野球のフィールドで活かせないか」と2016年にスタートしたのが、「トクサンTV」だ。

 草野球仲間のトクサン(徳田正憲さん)とライパチ(大塚卓さん)に中心となってもらい、平山さんは撮影や編集を担当。
 番組作りのノウハウや出演の心構えを一つひとつ伝えていき、2人の上達とともに再生数も登録者数もどんどん上昇していく。
 現在のチャンネル登録者数64.8万人は、野球系YouTubeチャンネルではトップの数字。
元プロ野球選手の里崎智也さんが運営する「里崎チャンネル」が47万人、メジャーリーガー・ダルビッシュ有投手(サンディエゴ・パドレス)が運営する「Yu Daruvish」が58万人、さらに読売ジャイアンツ公式が49万人であることを考えると、そのすごさがおわかりいただけるだろう。
「トクサンTV」は、社会人野球チームへの潜入やプロ野球選手とのコラボが人気を博し、また最近ではプロ野球中継にも解説として登場するなど、成長を続けている。

「映像制作のプロフェッショナルとして、やるからにはクオリティの高いものを作りたいなと思いました。いくら趣味とはいえ、趣味で済ませるわけにはいかんなと。野球選手がバットを振るのと一緒で、振ると決めたからには強いスイングをする。プライドですよね」

 番組作りでは、エンターテイメントだけでなく、野球界を良いものにするための問題提起を行うことも心がけている。
 ある時、動画のテーマに「野次」を取り上げ、マナーや相手へのリスペクトの精神を視聴者へ問いかけたことがあった。

「問題提起はとても重要にしてます。野球、特にアマチュア野球は教育だと思っていて、人が成長するための土台です。
『野次』に関して言えば、相手を悪く言い続けるのは個人的には理解できないし、どんな世界も共存共栄していかなければいけません。自分のチームだけに声掛けをするか、お互いに褒め合うことができれば良いと思います。自分が勝つために相手を傷つけるのは本当によくないですよね。
 あくまで問題提起ではありますが、『野次』のように明らかになくなった方が良いものはしっかりと視聴者に問いかけて、コメント欄で発言してもらえれば、球界全体の考え方が一つでき上がるのではないかなと思っています」

「トクサンTV」を人気Youtubeチャンネルへと成長させた平山さんは、野球以外の分野にも踏み出していく。
 テレビ番組で再現ドラマを作っていた経験から、漫画チャンネルの分野でも勝負できると感じ、2019年3月に人間の闇を映し出す漫画系チャンネル「ヒューマンバグ大学_闇の漫画」を開設。間もなくしてメガヒットを連発する人気チャンネルへと成長し、登録者は現在126万人。
 その後も人気チャンネルを次々と生み出していき、Youtubeを主戦場とした動画制作に大きな可能性を感じて、2020年3月に読売テレビを退社。
 株式会社ケイコンテンツを設立し、経営者としてのキャリアをスタートさせた。

「YouTubeの世界でチャレンジしたいなと思い、最終的に読売テレビを卒業させていただくことになりました。テレビ局で培ってきた技術が『トクサンTV』で一つ結実して、もう一つ、二つ、三つとチャレンジした先に、一体どんな未来が待ってるんだろうとワクワク感が勝ってしまい退職を決意しました。
 ただ、その後もありがたいことに読売テレビさんとはお仕事でつながりをいただいて、卒業しても『大丈夫か、頑張れよ』といつも見守ってくださっています。感謝しかありません」

[page_break:野球には人生の教えが凝縮されている]

野球には人生の教えが凝縮されている

 多くの人気チャンネルを抱える現在は、従業員数も増加し続けており、制作側の視点だけではなく数字側から見た視点もより大事になってきた。
 クリエイターの話ばかりを重視するとお金の面で無理が出てしまい、反対に数字の話ばかりではクリエイターの心を掴むことができない。バランスを取りながら、かつスタッフの成長にも配慮しながら舵取りを行っている。

「高校時代に培った、赤点を出さない考え方が役立っていると感じています。経営面での選択もそうですが、社員への声掛けは特に重要です。
 野球で例えると、『細かいコントロールは気にしなくていいから、まずは強いボールを投げることを意識しよう』とか、『結果として打たれたけど、今日一番のボールを投げることができたな』とか。結果だけを見て良し悪しを語るのではなく、まずはプロセスやパフォーマンスをしっかりと認めてあげないと、社員の心に響かないし成長が起きないかと感じてます」

 高校時代に自ら考え、自主性を持って練習に取り組んだことが、現在に大きく活かされたと繰り返し語る平山さん。
 最後に高校球児へのメッセージをお願いすると、同様に考える癖を身に付けてほしいと熱い言葉を口にした。

「なぜ強くバットを振るのか、なぜバントをしなければいけないのか。行きつく答えはすべて『チームの勝利のため、みんなが笑顔になるため』だと思います。たまたま強く遠くに打球を飛ばせるのであれば、その力をチームの勝利に活かす方法を考えて、仲間と一緒に成功体験を掴んでほしい。考えずに過ごす時間は非常にもったいないので、あらゆることに対して『なぜ』と突き詰めてほしいと思います。
『球道即人道』という言葉もありますが、野球には人生の教えが凝縮されています。考えれば考えるほど無限の成長を与えてくれるので、とにかく何となくやるのではなく考えて取り組んでほしい。これは高校時代の僕にも言いたいですね」

 そう答えた後、ふと思い出したかのように再び口を開く。
「でも結果として、当時深く考えることができなかったからこそ、反省して『考えられる今』があるのかもしれないですね。その意味では後悔は1ミリもありません」

 平山さんの言葉は、常に前向きで過去への執着がない。
 これからも今にとことん集中して、世の中をアッと驚かせるような作品を生み出し続けるだろう。

(取材:栗崎 祐太朗

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