試合レポート

自由ケ丘vs飯塚

2021.10.24

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自由ケ丘「眠れる4番」がお目覚め、冬木が延長12回サヨナラ打で飯塚に勝利

自由ケ丘vs飯塚 | 高校野球ドットコム
自由ケ丘の4番冬木壌太郎がサヨナラ打を放つ

 準決勝で敗れ、九州大会切符を取り損ねた2チームが、モチベーションを上げてどこまで戦えるか。今後の戦力アップに向け、新たな戦力発掘がどこまでできるか。そんな3位決定戦だったが、今大会トップクラスの好ゲームとなった。

 自由ケ丘の先発の1年生の柿原颯太投手が先発。対する飯塚は191センチの145キロ右腕、白濱快起投手(2年)ではなく、小串裕毅投手(2年)が先発した。ともに新戦力として期待している右腕だったが、明暗を分ける。柿原は8回まで2失点の好投だったが、小串は3回もたずに降板した。

 ゲームは派手さはなく4対2で自由ケ丘がリードして9回へ。そこから劇的にゲームが動いた。飯塚が主将で代打の隈本海青(かいせい)のソロでムードが上がり、この日はマウンドに上がらなかったエースで4番の白濱に一打同点のチャンスを作ると、白濱がそれに応えてこの日3本目の安打が起死回生の同点打となり延長戦へ突入した。

 そして11回は白濱の適時打と、前日の準決勝で一打逆転サヨナラの場面で三振し、この日スタメンから外され途中出場していた嶋田翔天(とあ)捕手(2年)がタイムリー。準決勝では悔しい思いをした2人が2点を奪った。そのまま飯塚が逃げ切ると思いきや、その裏に自由ケ丘が粘りを見せる。二死二、三塁から4番冬木壌太郎外野手(2年)が右翼線への起死回生の2点適時打を放って追いついた。

 延長12回表、飯塚は相手投手の4連続四死球などの乱調に乗じて2点を勝ち越す。しかし、自由ケ丘打線は、またも諦めなかった。二死二、三塁から2番梶原拓己内野手(2年)の適時打で同点に追いつくと、またも4番冬木の前にチャンスを作った。二死一、二塁からまたも右翼線へ。歓喜のサヨナラ打を放って見せた。二転三転する展開。なんども勝ち越されても諦めなかった自由ケ丘ナインの代表が、4番主砲の冬木だった。

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飯塚・白浜快起が4安打2打点の活躍

 この日は9回までの5打席、冬木のバットはノーヒットだった。「4番ではなく4番目の意識で後ろにつなぐ意識で打席に立ちました」。延長11回にチームの窮地を救う同点打に、延長12回はサヨナラを決める一打を放ち笑みが絶えなかった。ソフトバンクの柳田選手に憧れる4番は「本当の4番打者と言われるようにもっと成長していきたい」と意気込む。赤嶺琢監督は「やさしい子なんです。だからもっとガツガツいってほしいんです。将来、上でも野球を続けられる素質がある選手なので、今は打てなくても4番で使って、苦しみながらも4番になってもらいたいと思っている。今日の活躍をどんどんしてもらいたい」と真の4番打者への成長を期待した。

 飯塚の白濱はマウンドに立つことなく、チームは4位に終わった。しかし、4番としては6打数4安打2打点の活躍に「みんながつないでくれてチャンスに回してくれた。もう打つしかないと思った」と声を弾ませた。本当は延長12回裏にマウンドに立つ予定だったが、直前の打席で左太ももに死球を受けて、ベンチに下がった。「逆にみんなに迷惑がかかると思った」。サヨナラ負けの瞬間はベンチで見守った。

 エンゼルスの大谷翔平に憧れている。「野球をする上で一番魅力です。二刀流に尊敬します」。投手練習に専念しているため、打撃練習はほとんどできないながら4番を任されるほど素質は高い。今後の飛躍を宣言した。現在、最速は145キロだが「これからは投手としては150キロ出すことが最低目標」と口を引き締めた。そして83キロの体重も「90キロにしたい。体をしっかりつくって、みんなを驚かせる体になって春に戻ってきたい」。センバツへの夢が断たれた今、視線は来年の夏、そしてもっとその先へ。191センチ右腕は、もう走り始めている。

(記事=浦田 由紀夫


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自由ケ丘・延長12回サヨナラで勝利

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自由ケ丘・先発の柿原颯太

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飯塚が9回、ソロを放った代打隈本海青(背番号16)を白濱快起(中央)らが出迎える

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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