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154キロ右腕の存在が仙台育英を強くした タレント揃いの超強豪が全国で勝つチームになるまで

2021.07.14

 令和最初の選抜王者に輝いたのは、東海大相模だった。エース・石田 隼都の安定感抜群の投球を軸にした野球で頂点に上り詰めた。ただ今大会は注目選手が勢ぞろいとなり、優勝候補はいくつかに割れた。その候補のなかの1つが仙台育英だった。

 エース・伊藤樹という大黒柱があり、打線は主砲・吉野 蓮秋山 俊、さらに準々決勝・天理戦でホームランを放った八巻 真也やチームをまとめる島貫丞主将がいる。指揮官・須江 航監督が率いるタレント揃いのチームは、悲願の東北勢初の優勝の期待が高まっていた。

 13日の試合にも勝利し、夏の甲子園への出場も期待が膨らむ。そんな周囲からの期待を背に受け、仙台育英の選手たちは、聖地・甲子園でどんな思いをもって過ごしたのか。

様々な思いの実現へ、敗北の中からヒントを得た

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 今年の選抜は、仙台育英にとって様々な思いが込められた大会だった。須江監督が立てていた「1000日で日本一を達成する」という目標の期限が、当初の選抜決勝戦が予定されていた3月31日であったこと。そして2011年の東日本大震災から10年の節目に、島貫主将が選手宣誓の大役を果たすことになったこと。

 運命的な何かで重なった大事な大会に向けて、仙台育英は練習試合が解禁された3月6日から早速ゲームを組んだ。相手は広島の強豪・広島商。冬場にやってきた成果を試す絶好の機会であったものの、試合は4対5で敗戦。シーズン最初の練習試合は黒星発進となってしまった。だが、「今の自分たちに何が足りないのか見つめ直すことが出来ました」と島貫主将は話す。

 その後も履正社など関西の強豪とも戦った仙台育英。そのなかで自分たちの課題が明確になるなど、自分たちの弱みと向き合いつつ、結果的に選抜前の練習試合は3度敗北を喫したという。それでも島貫主将は「負けに繋がってしまう試合への準備。負けた時の悔しさを味わえたことで、良い形に選抜に入れました」と決して悲観的になるのではなく、敗戦を前向きにとらえてきた。

 貴重な敗戦のなかでも特に、森木大智擁する高知との一戦が大きかったと主砲・吉野は振り返る。

 「その時に須江先生からは『日本一になれると感じた』と言ってもらえましましたし、敗因を洗いざらい出せました。そのおかげで新しい打順における各打者の役割。どうやって守備から自分たちのペースを作るのか。そこがはっきりして、攻守のバランスが整い始めたタイミングだったと思います」

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絶対的エース伊藤も「チームの成長を実感」

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 貴重な強豪校との練習試合を通じ、準備を整えた仙台育英は大会初日の第2試合に登場。相手は四国王者・明徳義塾。戦前より注目カードに数えられ、好ゲームが期待されていた。大事な初陣を前に、チームの状態はどうだったのか。

 「相手は高知、そして四国1位の明徳義塾さんでチーム全体的に気持ちは高まっていました。そのうえで相手は自分たちにとって嫌な野球をしてくるチームでしたので、その辺りの対策はしっかりやってきました」(島貫主将)

 理想的な形で試合に入れたという仙台育英は、2回にヒットとエラーで出塁した秋山を、新戦力・遠藤 太胡のタイムリーで先制。明徳義塾の好投手・代木大和から奪えたのはこの1点だけだったが、先発・古川 翼とエース・伊藤の「0封リレー」で初戦を勝ち切った。

 決勝打を放った遠藤は、昨秋の大会ではスタメンではなかった。しかし、この春にスタメンに食い込み、初戦で値千金の決勝打を放つ活躍ぶり。仙台育英が掲げる「日本一の競争」がもたらした新戦力と、エース・伊藤といった主力組の融合で勝ち取った勝利といっていいだろう。

 エース・伊藤もそういった選手たちの躍進が、チームにさらなる競争を与えると感じている。
 「遠藤や寺田。佐藤 涼宜といったチームに足りなかったところの選手が出てきて、甲子園でベンチに入れたことは、チームの成長を実感できました。
 同時に新しくベンチに入った選手が活躍して自信を深めていますし、スタンドで応援してくれた仲間は『俺らも出来るんだ』と思って練習をやれているので、本当に夏が楽しみです」

 その伊藤だが、明徳義塾戦では圧倒的な投球を見せてくれた。5.1回を投げて無安打、与四死球2、奪三振6の快投だった。「早い段階からリリーフすることはわかっていて準備できたので、スムーズに入れました」とのことだが、それを抜きにしても素晴らしい投球だった。

 そんな伊藤の投球で少し気になったのはテンポの速さ。キャッチャーの木村 航大からボールを受けてすぐにモーションに入っていたのが印象深かった。練習試合が解禁してから、仙台育英ペースを作るために始めたことだったが、もう1つの狙いが隠されていた。

 「明徳義塾は高知の森木(大智)君と何度も対戦しています。だから速球や凄く切れのある変化球は対応できると思うんです。では、どこで明徳義塾打線を崩すか考えれば、投球テンポを変えることが一番有効だと考えてやりました。そうすれば、普段通りに明徳義塾は試合を展開できないので、自分たちのペースに巻き込めると判断しました」

 事実、伊藤のテンポに合わずに明徳義塾の各打者が何度も打席を外している瞬間があった。これこそが伊藤が狙っていたことであり、それが結果的に功を奏して投手戦を制することになった。

 この投球には須江監督も試合後に「文句なしのエースですし、最高のピッチングでした」と伊藤を称えていた。この勝利を皮切りに、仙台育英は勢いに乗った。

(取材:田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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