Column

作新学院を破った石橋(栃木)が21世紀枠の推薦校に選出されるまで【後編】

2020.11.22

 栃木の高校野球を牽引するチームといえば作新学院を思い浮かべる人が多いだろう。過去には甲子園優勝やプロ野球選手も輩出する高校野球界の名門校の1つ。その作新学院を秋季県大会で破ったのが、公立校・石橋だ。

 4年ぶりとなる関東大会出場を決め、初戦の東海大相模に敗れたものの、12日に栃木県の21世紀枠の推薦校に選出された。初の甲子園出場に胸が膨らむ石橋の現在を知るべく、グラウンドへ足を運んだ。

 今回はチームスタート時から、現在までの歩みを見ていきたい。

作新学院を破った石橋(栃木)が21世紀枠の推薦校に選出されるまで【後編】 | 高校野球ドットコム前編はこちらから!
21世紀枠推薦校!平日2時間練習の石橋(栃木)はなぜ作新学院を破ることができたのか?【前編】

エース・篠崎晃成の覚醒

作新学院を破った石橋(栃木)が21世紀枠の推薦校に選出されるまで【後編】 | 高校野球ドットコム
投球練習を行うエース・篠崎 晃成

 「(ここまでの結果が出ることは)全然考えていませんでした。秋の大会の組み合わせも強いところに入ってしまった印象がありました」(福田博之監督)

 夏は3年生主体のチームで挑み、2回戦・小山北桜の前に敗れた。そこから新チームをスタートさせたが、カギを握ったのは主将の小林到だった。

 「キャッチャーの小林は本当に技術も心もしっかりしているので、小林中心のチーム作りと言うことで、バッテリー中心に守りからリズムを作って少ないチャンスを掴むチームを目指しました」

 そんなチームの大黒柱となった小林は「旧チームと比較すると、力はなかったので、ベスト8までいければいいかな」と思っていたとのこと。ただ、他の選手からは「1回戦も勝てるかどうか」という不安だった声も聞こえた。

 チーム全体として関東大会出場までのビジョンは描けていなかったが、守備からリズムを作るべく、夏休み期間中に石橋はシートノックやゲームノックなどを実施。特に石橋の場合は練習環境に制限があったこともあり、こうした練習から実践感覚を養い、練習試合をこなす形で、秋に向けて仕上げていった。

 そうしていくうちに、エース・篠崎晃成が調子を上げていく。福田監督の中では「好不調の波が激しかった」とスタート時は感じていた。だが、秋の大会前に組んだ明秀日立との練習試合で、篠崎が4安打に抑える好投を見せた。ここから「これくらいの力が出せるようになると面白い」と手ごたえを感じ始めるようになる。

 すると、篠崎が監督の期待に応えるかのように県大会で好投。県大会では防御率2.20という内容で準優勝に大きく貢献。優秀選手賞にも選出されるなど、チームの原動力となった。では、篠崎の中で何が変わったのだろうか。

 「大会ではチームの勝利を最優先に投げましたが、自分は速いストレートを投げられるわけではないので、低めに投げて打たせて取ることを心がけました。そのなかでもここ一番で集中して投げられるメンタルと技術がついたところが大きいです」

 明秀日立との一戦から打たせて取るスタイルに手ごたえを感じ出していたという篠﨑。そのスタイルを県大会でも発揮したことが結果として、チームの躍進を支え続けた。

[page_break:勉強で培った集中力も使ってさらなる飛躍誓う!]

勉強で培った集中力も使ってさらなる飛躍誓う!

作新学院を破った石橋(栃木)が21世紀枠の推薦校に選出されるまで【後編】 | 高校野球ドットコム
齋藤 陽介内野手

 石橋の秋の戦いを振り返るうえで、接戦を制してきたことも忘れてはならない。準々決勝・足利工戦のコールド勝ちを除き、全試合が1点差ゲーム。粘り強く戦い抜き、準優勝まで駆け上がっている。指揮官の福田監督は「バッテリーが成長し、篠﨑-小林バッテリーを中心に接戦でもリズムよく守れたことが大きい」と分析する。

 小林主将も「1球1球大事に捕れと指導を受けて、その心構えが活きました」と語るが、なぜ練習時間が短い石橋が勝負所で力を発揮できたのか。その答えを齋藤陽介はこのように語る。

 「チーム全体で『最後まで諦めずに、集中力を切らさずに』というのを合言葉にように言い続けてきました。諦めない、最後まで集中することが出来たことが勝ちに繋がったと思います」

 ただ、集中力を切らないというのは簡単なことではない。かといって鍛えることも難しいものだ。そんな集中力を鍛えてくれていたのが勉学だった。

 「授業から集中していないと周りに遅れてしまうので、そこでの集中力もあると思います」(石川慶悟

 「平日は夜7時まで練習して、土日も練習をするので周りよりも勉強時間は短いです。なので、50分の授業で集中をしているので、繋がっていると思います」(齋藤)

 関東大会では東海大相模の前に0対7で破れた。「凄い圧力で、全国レベルを肌で感じることができました」と福田監督も苦笑いを浮かべる。それでも栃木県の21世紀枠の推薦校に選出された。

 この選出を受けて、「選んでもらったことを誇りに思って、県内の上位校や全国クラス相手に戦える心技体を身につけないといけない責任があります」と嬉しさと責任を同時に感じている。

 9地区それぞれの推薦校の発表は12月11日。そこで決まっても2021年1月29日の発表で名前が呼ばれなければ甲子園の道は開かない。まだ先は長いが春に向けて「まずはキャッチボールを含めて守備力。そして140キロを打つスイング力が課題です」と語った。

 4年前には関東・東京地区の21世紀枠の推薦校に選出をされながら、選ばれなかった。今度こそ石橋のところに吉報が届くのか。運命の日まで石橋は今もなお練習を続ける。

(記事=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.26

新潟産大附が歓喜の甲子園初出場!帝京長岡・プロ注目右腕攻略に成功【2024夏の甲子園】

2024.07.27

昨夏甲子園4強・神村学園が連覇かけ鹿児島決勝に挑む!樟南は21度目の甲子園狙う【全国実力校・27日の試合予定】

2024.07.26

名将の夏終わる...春日部共栄・本多監督の最後の夏はベスト4で敗れる【2024夏の甲子園】

2024.07.26

報徳学園が3点差をひっくり返す!サヨナラ勝ちで春夏連続甲子園に王手!【2024夏の甲子園】

2024.07.26

「岐阜県のレベルが上がっている」県岐商が2年ぶりの決勝進出も、岐阜各務野の戦いぶりを名将・鍛治舎監督が称賛!【24年夏・岐阜大会】

2024.07.25

まさかの7回コールドで敗戦...滋賀大会6連覇を目指した近江が準決勝で涙【2024夏の甲子園】

2024.07.24

享栄、愛工大名電を破った名古屋たちばなの快進撃は準々決勝で終わる...名門・中京大中京に屈する

2024.07.21

【中国地区ベスト8以上進出校 7・20】米子松蔭が4強、岡山、島根、山口では続々と8強に名乗り、岡山の創志学園は敗退【2024夏の甲子園】

2024.07.21

愛工大名電が今夏3度目のコールド勝ちでV4に前進!長野では甲子園出場37回の名門が敗退【東海・北信越実力校20日の試合結果】

2024.07.21

名将・門馬監督率いる創志学園が3回戦で完敗…2連覇狙う履正社は快勝【近畿・中国実力校20日の試合結果】

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」