Interview

投手本格専念2年で最速151キロ。高卒でNPB入りを目指す氏家蓮(大崎中央)

2020.07.01

 今、夏の大会へ向けて急激に注目度が上がっている投手が大崎中央氏家蓮だ。171センチと小柄ながら最速151キロを計測。自粛明けの6月以降の対外試合ではスカウトが視察に訪れている。

 その氏家の歩みを振り返ると、小・中学生から誰もが羨むようなスーパーな才能を持った投手ではなかった。大崎中央の3年間が氏家を変えたと言っていい。そんな氏家の決意に迫っていく。

中学時代は捕手がメイン。1つの試合が運命を変える

投手本格専念2年で最速151キロ。高卒でNPB入りを目指す氏家蓮(大崎中央) | 高校野球ドットコム
氏家蓮

 投球練習では滑らかな体重移動から次々と回転数の高いストレートを投げ込む氏家。そのストレートの勢いは高レベルで、多くのスカウトが視察するのも頷ける。

 そんな氏家。投手をしっかり専念したのは高校からだというのだ。大崎中央から近い栗原市出身の氏家は小学校4年から野球を始め、遊撃手・捕手を兼任。小学生の時に東北楽天が日本一を達成。日本一の原動力となった田中将大に憧れを持っていた。

 そして栗原西中に進むと、主に捕手としてプレーし、投手としてマウンドに登ることはごくまれだった。チームとしては上位に勝ち進む程の実績は残しておらず、同級生には3人しかなかった。もちろん氏家自身、強豪校でプレーすることは全く想像していなかった。

 ただ栗原市の選抜に選ばれたことがターニングポイントとなる。捕手として出場していた氏家だったが、1~2イニングだけ登板したのだ。その時、たまたま見ていたのが大崎中央の平石朋浩監督だった。
 「投球を見ていたのですが、その時投げ込んでいたボールを見て、まさに原石だなと感じましたね。後に捕手がメインだと知って、投手としてぜひと声をかけました」

 氏家にとって強豪校の監督からこうした声をかけられたことは感激だった。
 「本当に嬉しかったですね。こんな自分をとってくれる学校があるんだと思って感動したことを覚えています。」

 中学時代、捕手中心だった氏家は高校で本格的に投手専念。初心者の立場として変わりなく、平石監督の教えを貪欲に吸収していった。また大崎中央が東北大会に出場した時のエースが投手コーチに就任しており、そのコーチのフォームを真似たり、吉田輝星金足農-北海道日本ハム)のフォームを参考にしたり、投手としての基礎を固めていった。

 1年秋には主力投手へ成長し、県大会を勝ち抜き、東北大会に出場。球速は入学時から5キロほどアップし、135キロ程度だったが、1回戦では青森山田堀田賢慎との投げ合いを制し、1勝を挙げている。

 171センチで、細身の体型といえる氏家が球速を伸ばすことができたのは、フォーム固めをしっかりと行ったこと。さらにトレーニングも野球につながる動作的なトレーニングを中心に行った。

 そうした積み重ねで、2年秋には145キロに到達。県内屈指の速球投手へ成長していった。

[page_break:プロ野球選手となって甲子園のマウンドで投げる!]

プロ野球選手となって甲子園のマウンドで投げる!

投手本格専念2年で最速151キロ。高卒でNPB入りを目指す氏家蓮(大崎中央) | 高校野球ドットコム
氏家蓮

 さらに2年冬はトレーニングのレベルも高めていった。まずはランメニューなど精神的に追い込みながら、身体のキレを鍛えるトレーニングを行い、瞬発的に力を発揮できることを目的として、トレーナーの指導で動作的なトレーニングを継続して行ってきた。

 そして体づくりにも取り組み、量を意識して食べることも欠かさず行った。冬の期間に行う測定では、瞬発的な数値では高い数字を出して、投手としての出力を高めることができていた。

 その成果もあり、3月には最速148キロを計測することができたのだった。

 また自粛期間となり、栗原市内の自宅に戻ってからもzoomを使って、トレーナーの指導のもと、トレーニングを行った。

 自粛期間で精力的にトレーニングができたのは、プロ野球選手になりたい夢があったからだ。まず高校で最大の目標だった甲子園出場は中止という形で絶たれた。しかしプロ野球選手になることは諦めていない。そして夢をプロ野球選手となって、甲子園球場のマウンドで投げることに変わった。

 その結果、5月の自主練習中に、最速151キロを計測。ストレートのスピードは着実に上がっている。スピードだけではなく、回転数も2500を計測するなど、とつてもない進化を見せている。平石監督は氏家のボールの質についてこう評する。
 「横から見ても十分に速いのですが、打席に立つと、それ以上に速く見える。それぐらい球質の良さがあります」

 また性格的にも投手向きで、「普段は謙虚で良い子なんです。だけれどマウンドに上がると気持ちを出すことができて、強気です」とマインドも申し分ない。

 6月からの練習試合で多くのスカウトが詰めかけた。多大な注目される中で投げることは氏家自身、初の体験。そこで自分の実力を発揮する大変さを実感しながら、夏の大会へ向けて準備を進めている。

 初戦の相手は松島に決まった。2回勝てば、昨秋、東北大会4強入りした仙台城南と対戦する可能性がある。NPBを目指し、志高く取り組んできた氏家。夢実現へ、どんな相手がきても、それを乗り越える投球を見せていく。

(記事=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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