高校野球の申告故意四球(敬遠) はどんな運用になる!?

今シーズンの高校野球で導入されるルールの一つが申告故意四球(敬遠)です。
公認野球規則では2018年度の規則改正〈5.05(b)(1)【原注】、9.14(d)、定義7〉で、「申告故意四球(守備側チームの監督が故意四球とする意思を示し、投球することなく打者が一塁へ進めることができる)」が追加されましたが、高校野球では運営面での混乱や影響の有無、周知期間等について、慎重な議論を要することから採用が見送られてきました。
2018年、19年のシーズンを経て、運用面での混乱や影響等ないことや、投球数制限(1週間500球)を導入する一環として、2020年シーズンから導入されることになりました。
すでに日本高等学校野球連盟のHPで高校野球特別規則の2020年版が掲載されており、9ページ目の附記で申告故意四球(敬遠)についても記載されています。
その申告故意四球(敬遠)について、高校野球特別規則改正の要点説明で、運用が詳しく触れられていますので、ここで紹介します。
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「申告故意四球」
・申告故意四球の通告は、守備側チームのベンチからの伝令者が球審へ意思を伝える。(この場合はボールデッドである)
・守備側チームが打者を連続して申告故意四球にする意思がある場合は、伝令者が最初の通告時に球審へ伝えることもできる。
・打者は、一度バッターボックスに入らなければならない。(連続した申告故意四球の場合でも、その時の打者は一度バッターボックスに入らなければならない)
・球審は伝令者から通告があった場合は、攻撃側チーム、本部、控え審判等に分かるように、大きなジェスチャーと発声で、打者に一塁に進むように指示する。
・放送設備がある場合は、打者に「申告故意四球」で一塁を与える旨の放送をする。
・投球数にはカウントしない。
・打者の途中のカウントからでも、申告故意四球とする意思を球審に伝えることができる。(その後の投球数はカウントしない)
・一塁へ進んだ打者は、その時の投球の自責点の対象となる。
・交代したばかりの投手の時に、申告故意四球により打者が一塁に進んだ場合は、投手が一球も投球していないが、5.10(g)の義務を果たしたことになる。
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最後の野球規則5.10(g)に書かれているのは、「ある投手に代わって救援に出た投手は、そのときの打者または代打者がアウトになるか一塁に達するか、あるいは攻守交代になるまで、投球する義務がある。ただし、その投手が負傷または病気のために、それ以後投手としての競技続行が不可能になったと球審が認めた場合を除く。」です。
つまり、例えば申告故意四球(敬遠)専用のリリーフとしてマウンドに上がり、申告したあとに0球で交代を告げても、投球する義務を果たしたことになります。
高校野球は、原則として監督がベンチから出ることはできないので、申告故意四球(敬遠)をする場合は伝令が球審の伝えることになります。これについては、先日の記事もご覧ください。
2者連続で申告故意四球(敬遠)をしたい時は、球審に対して、いわゆる予約ができます。つまり攻撃側の次の打者から3人は、申告故意四球(敬遠)に伝令が出た時には、1人なのか2人連続なのかの伝え方を注視しておくことが、打席への準備に繋がります。
もう一つ大事なのが、場内放送で「申告故意四球(敬遠)により、○○選手は一塁に進みます」といったアナウンスをすることです。申告故意四球が導入された2018年シーズンは、プロ野球などでこのアナウンスがない球場もあり、スタンドでは何で打者が一塁に進んでいるのかわかりにくいこともありました。
ですので、場内放送担当者(ウグイス嬢)も伝令と球審の様子に注視することが必要です。また、場内放送担当者(ウグイス嬢)がいない試合でも、球場に放送設備がある場合は大会役員の誰かがアナウンスをする必要があります。
このように、試合(大会)を運営する大会本部の方たちは、場内放送を活用することが重要になってきます。
昨シーズンの大学野球や社会人野球の例を見ると、「申告敬遠します」と野球規則にはない敬遠という言葉でも申告故意四球が認められるケースがありました。
実際に明治神宮大会などの場内放送でも「ただいま、敬遠が申告されました。○○選手は一塁に進みます」と、敬遠という言葉が使われていました。一般的に浸透しているものの、野球規則にはない〝敬遠〟の言葉を使っていいのかどうかは、試合前の好守決定時に大会本部と審判に確認することを推奨します。
なお高校野球特別規則27で申告故意四球(敬遠)を採用しない旨の記載がされていましたが、それが撤廃され、これまで28だった反則投球の取り扱いが27になり、29だった準備投球の取り扱いが28に変更となりました。
今シーズンから高校野球でも導入された申告故意四球(敬遠)。どのようなケースで使われる可能性があるのかは、またの機会に考えてみたいと思います。
記事=松倉 雄太
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