Interview

理論派のアスリート型キャッチャー・佐藤都志也(東洋大学)。1.8秒台の猛肩のコツは「キャッチング」【後編】

2019.10.07

 大学野球の名門・東洋大で4番キャッチャー、そして主将を務める佐藤都志也。今秋のドラフト会議での指名が注目される、大学球界屈指の捕手。前回は佐藤選手が築き上げたバッティングの理論を紹介してきた。

 後編では、ベストナインも受賞した捕手としての技術について迫った。

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「大学球界の名門・東洋大4番バッターが語る、バッティング理論」佐藤都志也(東洋大学)【前編】

すべての始まりはキャッチングにあり

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佐藤都志也(東洋大学)

 そもそも捕手・佐藤のスタートは中学2年生の秋。チームの中に捕手をやる人がいない中で、佐藤が捕手をやることを名乗り出たのが始まり。

 そんな佐藤の最大の魅力といえば、二塁送球1.8秒をマークする強肩を活かしたスローイング。まず、スローイングにおける重要なポイントを伺った。

 「大事なのは正確性です。ピッチャーとの共同作業になりますが、野手がボールをキャッチしてからタッチするまでは0.1~0.2秒かかります。なので、1.8秒でボールが逸れるよりも1.9秒でも正確に投げるのが大事です」

 あくまで速さよりも正確性を重要視する佐藤。ではどうすればスローイングは磨かれるのか。佐藤の練習方法を聞くと、返ってきたのは少し意外な解答だった。

 「キャッチングですかね。良いところでボールを捕れれば、握り変えも上手くいきます。逆にキャッチングをしっかりできないと、送球は逸れてしまう。なので、キャッチングが大事です」

 しっかりと理論的にスローイングの技術を解説する佐藤。しかし、ここまでスローイングについて考えられるようになったのは最近だと明かす。

 「大学3年生から杉本監督に代わって、本格的に捕手をやるようになりました。そこからいろんなことを教わりました。
スローイングもそれまでは肩の強さだけで投げていました。ただ、昨秋は盗塁を3つか4つくらいしか刺せず、ほとんど成功させてしまいました。そこが悩みだったので、杉本監督とマンツーマンでフォームを固めるようにしました」

 毎日フォームを意識したスローイングを10球程度。そしてフォームを固める反復練習を重ねてきたことで、肩だけに頼るのはなくステップも上手く使って正確なボールを投げられるようになった。

 そんな佐藤選手はキャッチングへどのような意識を持っているのか。

 「基本的には常に同じです。いつでも芯で捕球することを心がけています。浅めにとったり、土手で捕ったりする選手もいると思いますが、自分はそれに慣れていないです。なので、そうしてしまうと、結果として握り変えが遅れるので、芯で捕ることを大事にしています」

[page_break:佐藤を支える最大の武器は探求心だった]

佐藤を支える最大の武器は探求心だった

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佐藤都志也(東洋大学)

 また捕る位置に関しても、近すぎても遠すぎても体が突っ込む可能性があることを懸念して、ちょうど良い場所で捕球することがポイントだそうだ。そしてキャッチングにおいて一番重要にしているのが、ピッチャー目線だった。

 「ピッチャーがしっかり投げたボールをしっかり捕った方が、ピッチャーは気持ちいいと思うんです。だから練習では動画を取ってもらって、ピッチャー目線でどう見えているか。特に低めのボールに対してミットが落ちていないかどうか。そこは大事にしています」

 佐藤は低めのボールはなるべく落とさないために、親指を上げる感覚を心がけている。そしてもう1つが体を動かさないことだ。

 「体を落としてしまうと、それだけで審判にボールが低いと感じさせてしまいます。なので、なるべく体を落とさないように我慢して最後にミットを上げるようにします」

 そしてスローイングにおいて、大事な要素といえばステップ。この要素に関して佐藤は、

 「自分はしっかりボールを捕ってから、右足主導でステップを踏んでいます。なるべくピッチャーに対して正対したままで右足を若干引いて、6、7割くらい重心を乗せます」と構え方について語る。

 そこから「ボールがコース通りに来たら真っすぐ、外れたら捕った位置にステップを踏んで、体の真ん中にボールが来るように体を運びます」と実際のステップの踏み方を解説する。

 自分の理論を1つ1つ噛み砕いて解説してくれた佐藤。その佐藤を支えるのは探求心だった。

「大学代表では捕手なのに、捕手と試合に出られないのは実力不足です。なので、同級生の海野隆司や藤野隼大らの技術を見たり、時には話も聞いたりしながら技術を盗みました。

 また、大学に入ってから自由な時間が増えたので、自分で調べたり本屋にも行ったりしました。そうやって大学から考えて勉強をするようになったのが大きかったです」

 いよいよドラフトが迫ってきた佐藤。今後のことを聞くと、「リーグ戦では100安打を達成したいです。チームとしては優勝として、レベルアップした姿でプロへ行ければと思います」

 高校生の時はプロ志望を提出するも指名漏れ。そこから4年間、東洋大で自分を鍛え直した佐藤。築き上げた確かな理論と技術をもって、今度こそプロの扉をこじ開ける。

(取材=田中 裕毅

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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