知徳vs沼津東
知徳が沼津東に完封勝ちで、東部地区1位で県大会へ
知徳・葉桐響君
静岡県東部地区では屈指の進学校でもある沼津東。今春の大学入試実績でも、東大6人をはじめとして名古屋大9人、静岡大21人など、国立大に127人の合格者を出している。旧制沼津中時代からの歴史を有し、作家井上靖の母校でもあり青春小説の名作『夏草冬寿』の舞台にもなっている。そんな文武両道の学校だが、この秋は東部地区予選で勝ち上がって決勝にまで進出した。1、2年生で17人しかいないという小世帯ではあるが、きっと高い集中力があるのだろうと思っていたが、エース森田大夢君はスライダーの精度が高く、これがここまで勝ってきている一番の要因だろうなと思われた。
対する知徳は戦前の三島家政女学校と三島実践女学校を統合して、三島実科高女という歴史を経て、学制改革で三島高校となり、創立80周年を経て2014年に学校法人三島学園下の現校名となっている。部活動としては、県内唯一のアメリカンフットボール部があり、関東地区の大会で活動していることも注目だ。
三島時代から、東部地区では有力校の一つという存在になっていたが、力があるなというときに不祥事などもあって、もう一つ勝ちきれていなかったというのも現実だった。それが、この秋は日大三島、桐陽などを下し準決勝では沼津商を大差で下してここまで進出してきた。
2回、知徳は四球と6番山内君のバントが安打になり無死一二塁。バントで一死二三塁とすると、8番宮前君、9番松野君が相次いで左前打して2点を先取。さらに、4回にも二死走者なしからまたしても宮前君と、松野君が連打(今度はいずれも内野安打)して一二塁。ここで1番杉崎君が中越損塁打して二人が帰った。これで4対0となったが、沼津東の森田君も決して悪い内容ではなかった。この一打も、失投というよりも杉崎君の技ありの一打と言っていいものだった。
結局、知徳がこの4点のリードを葉桐君の好投で逃げ切っていくのだが、「課題はあるものの、今の段階ではよくやったと思う。まだ先があるので、課題は整理して次へ挑みたいと思う」と初鹿文彦監督は、東部地区大会1位という成績はもちろん評価しつつも、これから県大会が始まっていくこともあり、気持ちを引き締めていた。
また、今秋のチームに関しては、「主将の井深がいいリーダーシップを発揮してやっている」と井深君の存在が大きいという。「チームのモットーとしては、今年は“それぞれの人柄野球”なんですけれども、それを上手くまとめてくれています」と笑う。そして、この試合でもその言葉を象徴するかのように、クリーンアップは1安打のみで打点0。しかし下位打線は6番、8番、9番がそれぞれに安打ずつして打点も2。吉判、9番で全得点に絡んだという形になった。逆に言えば、こういう野球が出来ていれば、これで中軸が打ったら大きな爆発力になるということである。
沼津東は、葉桐君の前に、3安打散発12三振を喫して三塁へも進めなかったのだが、森田君が安定しており、守りが崩れなければ、いい戦いはしていかれるであろう。沼津東レベルの進学校の選手たちは、学習能力も高い。この日の負けからも、何かを掴んでいるのではないだろうか。
(文=手束 仁)