試合レポート

神村学園vs佐賀北

2019.08.06

神村学園のゲームと守備をコントロールするエース・田中 瞬太朗の熟練味溢れるピッチング

神村学園vs佐賀北 | 高校野球ドットコム
エース・田中 瞬太朗(神村学園)

 鹿児島の名門・神村学園が2年ぶりの初戦突破を果たした。

 その立役者はエースの田中 瞬太朗といっていいだろう。右スリークォーターから投げ込む直球は常時130キロ~135キロ(137キロ)と決して速くはない。だが、両サイド、高低に投げ分け、さらに120キロ前後のスライダーを低めに集める投球。精神的にも落ち着いており、走者を出しても動じずに投げられるのが強み。

 とにかくコントロールの良さが目についたが、チームメイトからも絶大な信頼を受けている。
「駿太朗はコントロールが良いので、配球の組み立てがしやすいです。特に終盤のコントロールは素晴らしかったですね。内角へ強く投げられてよかったです」(捕手・ 松尾 将太
「駿太朗に負けないところといえば、強気のピッチングです。でも駿太朗は、コントロールはすごいですし、内外角の出し入れが本当に凄くて、そこはかなわないです」(背番号10で4番を打つ桑原 秀侍) 

「僕たちが無失策でいけるのは、駿太朗のおかげだと思います。駿太朗はコントロールは良いですし、さらにテンポもよい。僕たちからすれば本当に守りやすい投手です」(遊撃手・松尾駿助
 田中瞬は四球を出さないことを意識しており、余計な力が入らず、指先感覚の良さを生かし、テンポの良い投球で、ゲームメイク。

 しかし5回、6回に1点ずつ失い、「集中力が欠けていたところがあったので、もう一度引き締めなおした」と語るように、7回でも130キロ中盤の速球を内外角に投げ分け、点を与えない。リードする松尾将は「佐賀北打線は低めのボールを見逃していたのですが、高めのボールの反応が良くなかったので、しっかりと変化球や強めのストレートを投げてくれたおかげで抑えてくれました」と、後輩投手をたたえた。

 小田監督も「3点目を与えなかったのは大きかったですね。よく投げてくれ多と思います」と好投の田中瞬を評価。それでも田中瞬は「今日の投球は40点」と満足していない。さらなる好投が期待できそうだ。

[page_break:神村学園のショートストップ・松尾の好守備を支える一歩目の意識]

神村学園のショートストップ・松尾の好守備を支える一歩目の意識

 今年の神村学園はスラッガーはいない。ただ芯を食えば、長打にできる技術はあり、さらに守備力も高い選手が多い。その中で目を引いたのは二塁打、安打を放った二塁・古川 朋樹だ。スクエアスタンスで構え、レベルスイングで振りぬく。下半身をしっかりと使って鋭い打球を放つ右の巧打者。さらに、二塁守備を見ても守備範囲が広く、捕球してから送球するまでも速く、全国レベルの二塁手だ。

 その古川以上に目を引いたのが遊撃手の松尾駿だ。田中瞬のテンポの良い投球によって守りやすいと語るが、一歩目が速く、三遊間、センターよりのゴロを軽々と捌き、アウトを演出。最後のアウトもショートゴロだった。

「一歩目を速く切ることをこだわってきましたし、遅いと小田先生からも厳しく指摘されてきました」
 では一歩目を速く切るためにどんなことを心掛けたのか。それは自然体で構えることだった。

「よく、目線と重心を低くして構えろといわれますが、ただ目線が上がってしまうことがあり、うまくボールを処理できません。その時、自然に構えたほうが一歩目も速くきることができるようになりました」
 松尾駿のレベルアップは神村学園の環境も影響している。神村学園の小田監督は亜細亜大出身。現在の亜細亜大のショート・矢野雅哉の動きを見たり、大会直前、東海大菅生と練習試合を行い、東海大菅生成瀬脩人の動きに衝撃を覚えながらも、少しでも自分のものにしようと心掛けた結果が甲子園の無失策につながった。

 攻守ともに盤石な試合運びを見せた神村学園はさらに勝ち進んでいけるか。

[page_break:大事な初戦も無失策で初戦突破!試合後のコメントと個人成績]

大事な初戦も無失策で初戦突破!試合後のコメント

 6日より開幕した第101回全国高等学校野球選手権、初日の第2試合は鹿児島代表・神村学園が佐賀代表・佐賀北を下した。その勝利に大きく貢献したのがエース・田中瞬太朗だ。

 5回と6回に1点ずつ獲られながらも完投勝利。その田中瞬投手は試合後、「立ち上がりはかなり緊張しました」と話し甲子園での登板を振り返ると、「6回に2点目を取られて、7回表にもう一度集中しようと思って取り組みました。スタミナ面は走り込みの成果が大きかったと思います」と体力強化が全国での1勝に繋がったことを振り返った。

 また味方の援護も大きかったことと、同時に反省も田中瞬投手は口にした。「7回裏に2点は本当に大きかったですし、8回、9回は自分の投球ができました。ただ今日は得点をつけるとすれば、40点ぐらいです。四球も多かったですし、無失点にこだわっているので、次回は四球を出さず、勝利を目指していきます」。

 神村学園の小田大介監督は、先発の田中瞬投手を含めた守備に及第点を与えた。「序盤以降なかなか点が取れない中、逆に中盤1点ずつ取られて、嫌な雰囲気でしたが、田中瞬が3点目を与えなかったのは大きかったですね。よく投げてくれたと思います。またノーエラーという点についてもこだわっていたので、ノーエラーで終えることができてよかったです。」

 また攻撃陣についても、「良い形で先行できました。特に2回裏は二死から3者連続二塁打は大きかったですね。相手投手の緩いボールを打たされるのではなく、しっかりと振ることを意識しましたので、それができたと思います」とコメントした。

 投打ががっちり噛み合った神村学園。次なる相手は高岡商だ。

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(記事=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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