Interview

ライバルと先輩から刺激を受け続けた野球人生 小山 翔暉(東海大菅生)【前編】

2019.04.18

 全国屈指の強肩強打の捕手・小山翔暉選手。高校通算20本塁打近くを記録する強打者、三塁到達11秒前半を記録する俊足、スローイングタイム1.8秒台の強肩と、捕手でありながら走攻守の総合力の高さは今年の高校生でもトップクラス。木製バットを使ったキューバ遠征では最終戦で試合を決める逆転2ランを放ち、勝負強さを発揮した。そんな小山はどんな成長を歩んできたのか。

ライバルに刺激を受け続けてきた中学時代

ライバルと先輩から刺激を受け続けた野球人生 小山 翔暉(東海大菅生)【前編】 | 高校野球ドットコム
小山翔暉(東海大菅生)

 若林監督が最も期待していて、最も厳しく接している選手ではないか。若林監督は小山の選手としてのポテンシャルの高さにこう評する。
 「身体能力は高校生でもトップクラスだと思いますし、彼が大学、プロに進んで、あの身体能力をフルに生かせるようになると日本の野球は変わるじゃないですか。捕手をやっているのですが、ショートを守らせてもうまい選手なんです」

 だからこそ厳しい注文が入る。
 「翔暉の課題は考えてプレーができるか。場面に応じて考えてプレーすることが苦手なところがありました。大舞台で結果を残せないことがある。だから持っていないと本人に叱るときもあります」

 若林監督は愛知出身の小山に対し、岐阜出身の根尾昂と比較しながら、考えてプレーする重要性を主張してきた。
 「根尾と違うのは考える能力だよ」
 こう聞くと、小山は考えていない選手に感じてしまうかもしれない。ただ、小山と実際に話してみると、真面目で自分の意図をしっかりと説明できる好青年。やはり若林監督の厳しい指導が生きているのだろう。

 そんな小山の野球人生の始まりは保育園の頃から。ソフトボールの経験者だった父親の影響を受けたことがきっかけで、保育園の時は父親とキャッチボールするぐらいで、小学校に入ってから本格的に野球を始めた。小学校の時は投手とショートをこなしていた。当時から足の速さ、肩の強さには自信があった。中学に入学すると、愛知木曽川シニアに入団。ここから投手と捕手を始める。

 捕手を始めたとき、きつくて、あまり面白さを感じなかった。ただ、ほかのチームと比較しながら自分の能力を比較したとき、
「肩の強さ、フットワークの良さは自分が上だなと思いました。それを感じたことで少しずつやりがいを感じるようになりました」

ライバルと先輩から刺激を受け続けた野球人生 小山 翔暉(東海大菅生)【前編】 | 高校野球ドットコム
小山翔暉(東海大菅生)は愛知木曽川シニアの出身だ

 また、小山の気持ちを掻き立てたのは同じ愛知地区のライバルたちの存在があった。稲沢シニアには東海大菅生でチームメイトとなる成瀬脩人、衣浦リトルシニアには山梨学院のスラッガー・野村健太、ボーイズリーグになるが、知多ボーイズには東邦の二刀流・石川昂弥がいた。彼らの存在は刺激となり、対戦となれば、「負けたくない気持ちになることはありました」と振り返る。

 また、1学年上の根尾の凄さも感じていた。
 「中学時代から愛知県でもその名は知れ渡っていましたし、1つの目標といったらおかしいですけど、プレースタイルも僕と似ていて、お手本としているところはありました」

 そして走攻守三拍子揃ったプレースタイルは大きく評価され、中学3年生で侍ジャパン入りを果たす。ここでも大きな刺激を受ける。
 「愛知だけでもあんなにすごい選手がいたのに、全国から選ばれた選手は本当にパワー、スピードも違ったので驚かされました」

 特に刺激を受けたのは速球左腕・及川雅貴(横浜)だ。
 「打席に立った時、今まで見たことがない速球でした。すべてにおいて自分より上の選手だなと思いました。」

 また、鹿取代表監督からも学ぶことが多かった。
 「プロ野球を経験している方ということで学ぶことが多かったですし、また栄養面も考えていて、野球に対する姿勢、自覚も大事だということを感じました」

 そして自分の現在の実力を再認識する良い機会となった。
「全国には凄い選手がたくさんいることが分かり、今のままの自分では通用しないと感じたことが収穫でした」

[page_break:高度な東海大菅生野球に触れながら捕手として成長を果たす]

高度な東海大菅生野球に触れながら捕手として成長を果たす

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秋季大会での小山翔暉(東海大菅生)

 東海大菅生に進むきっかけについては若林監督の存在が多かった。
 「若林先生はプロ野球でも活躍された方ですし、僕自身、この時からプロ野球に対する思いが強くなっていました。若林先生のもとで学ぶことで、プロ野球選手という夢が近づくのではないかなと思いました」

 東海大菅生に進み、新たな野球観に触れることができた。野球に対して密度の濃さを感じることができた。
 「中学はただ打って投げていたところがありました。高校に入って頭を使ったり、野球、相手のスキをつくこともありますし、すごい戸惑いを感じました」

 そういう中でも、才能の高さを発揮し、高校1年生からベンチ入りを果たした小山。ベンチから甲子園ベスト4を果たした先輩を目の当たりにした小山は大きな刺激を感じていた。
 「甲子園ベスト4に進んだ先輩たちは野球だけではなく、寮生活でもしっかりしていましたし、プロテインや食生活の部分でも意識が高く、見習っていきたいと思いました」

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2019年春季東京都大会での小山翔暉(東海大菅生)

 ここまで先輩、ライバルに刺激を感じながら、過ごしてきた小山。今度はその経験を生かす段階に入る。ただ新チームスタート時、小山自身、苦労が多い年だったと振り返る。
 「ずっとリード面で叱られていて、正直嫌だと思ったことが多いのですが、教えられたことをノートに書き、捕手出身のプロ野球選手の本を読んで、リードを勉強するようになってからは結構分かるようになりました」

 こうした努力の甲斐もあり、2年夏では正捕手に抜擢。13打数10安打、3本塁打、8打点の大活躍をみせるも、小山自身、準決勝の日大三戦の負けが成長のために大きかったと振り返る。
 「最初、自分がホームランを打ったんですけど、1回裏に6点取られて、結局負けてしまった試合です。あの試合は自分のリードが悪く、自分のせいで負けてしまった試合だと思っています。あの試合からもう一度、リード面について深く考え直そうと思いました」

 2年秋は小山にとって大きな成長を見せる期間となる。

文=河嶋 宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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