至学館vs名古屋国際
細かく得点重ねた至学館、十分に「らしさ」を見せつける
初回に二塁打を放った至学館・冨田君
昨年秋に完成したという至学館の新グラウンド。それまでは、普段の練習は狭い校庭の空き地を見つけては、各自でそれぞれのメニューをこなすのがメインで、土日などで大府市の大学グラウンドが使用可能な時にはそこを使わせてもらうというのが主な形だった。そうした中でも、11年夏と17年春に甲子園出場を果たしていることで、その存在は注目されていた。
至学館の名古屋市守山区上志段味に建設されたグラウンドは両翼95mで中堅110m、いくらか外野の膨らみは少ないものの高校野球としては十分だ。原則的には、至学館の多目的グラウンドということだが、新球場が完成して、晴れてホームグラウンドとして迎える最初の大会である。
機動力を含めて、相手に対して「何を仕掛けてくるのかわからんぞ」ということを常に思わせるのが、至学館の野球スタイルである。こうして、相手に必要以上に考えさせることで、相手の頭がぐちゃぐちゃになってしまう「思考破壊」が目指すところという至学館の麻王義之監督。今年も、そんな持ち味は十分に味合わせてくれるチームになっている。ただ、今年のチームはメンバーに比較的下級生が多く、麻王監督としては「まだまだ、ボクの意図するところを完全に理解しきれていないところがあるので、思わぬミスもまだまだ多い」と言う。
とはいうものの、この試合では十分に“至学館らしさ”を示した試合となった。
先攻の至学館は初回、先頭の佐野君がいきなりバント安打。続く富田君が左線二塁打してたちまち無死二三塁。牧山君の遊ゴロの間に三塁走者が生還。さらに4番西尾君のスクイズで2点目と、さりげなく至学館らしさを存分に見せつけた。
ボコボコ打たなくても、何となく点を取っていくという至学館の野球は3回にも示して、死球の牧山君が二塁盗塁して二死二塁となった後、5番名城君がポトンと左前に落として3点目。5回は二塁打の牧山君が盗塁を決めて、一死一三塁から内野ゴロの間に生還して4点目。この、内野ゴロの間に得点という形は、守っている側としても、どうしようもないという感じで、「打たれているワケではないのに点を取られている」ということで、妙なダメージを受ける形になる。実は、これこそが至学館野球の真骨頂なのだ。
こうしてじわじわと相手を追い詰めておいて、6回には守備固めで入ったはずの菊池君が左翼へソロホーマー。7回にも西尾君が一死三塁から右前タイムリー打で加点。その裏に、渡邉君が6番加藤大樹君にソロホーマーを浴びて1点を失うものの、すぐに8回、代打村瀬君の安打に始まって、富田君、牧山君の連打と西尾君の二塁打で3点を加えた。
その裏を2番手として登板した松本君がきちっと3人をすべて遊ゴロに押さえてコールドゲームとした。松本君は、元々は上手投げだったのを自分で工夫して少しトリッキーな右横手スタイルに変えて成功。この春に初めて背番号を貰ったという。そうした選手が、こうしてきっちりと結果を残していくことで麻王監督の信頼も得ていくことになるのだろう。
愛知県では、私学4強の次の位置づけで実績を上げていっている至学館である。グラウンドも完成して環境が整ったということもあって、ここへ来て新たに愛知私学5強を形成していく一角を担う存在になっていきそうな気配を十分に感じさせてくれる存在となってきた。
(文・写真=手束 仁)