Column

佐野日大の秋の躍進を生んだ「団結力」と「守備力」の秘密【前編】

2019.03.30

 佐野日大高校へ訪れたのは、選抜甲子園の出場校が発表される2日前。選抜への出場は当落線上と見られていただけに、落ち着かない気持ちがチームに流れているのではないかと予想していた。
 しかし実際に訪問すると、以外にも吹っ切れたような表情で練習に打ち込む選手の姿があり、筆者の予想は見事に外れた。

 結果的に選抜甲子園への出場はならなかったが、佐野日大を率いる麦倉洋一監督を始め、選手たちは皆口を揃えてこう話す。
 「選抜はないものと考えてやっています」
 今回は、そんな佐野日大の麦倉監督と主将の八ツ代敢大(やつしろかんた)にお話を伺い、秋季栃木大会を制すことができた要因、そして夏へ向けた課題と意気込みなどを伺った。

学年でチームを分けたことで生まれた「団結力」

佐野日大の秋の躍進を生んだ「団結力」と「守備力」の秘密【前編】 | 高校野球ドットコム
麦倉洋一監督(佐野日大)

 佐野日大秋季栃木県大会を制したのは、2013年の秋季栃木県大会以来となる。当時の佐野日大は、プロ注目で絶対的エースだった田嶋大樹(現オリックス)を中心に高い総合力を持つチームであったが、今年のチームは少し状況が異なる。

 「今年のチームは、目立つような選手はいません。ヒットは出ても長打は出ませんし、ホームラン0本で県大会を優勝したのはウチのチームくらいだと思います」

 そう語るのは、佐野日大を率いる麦倉洋一監督だ。では個の力がない中で佐野日大秋季栃木県大会を制すことが出来た要因は、いったいどこにあるのだろうか。
 ここでまず麦倉監督が挙げたのが、チームの団結力だ。

佐野日大の秋の躍進を生んだ「団結力」と「守備力」の秘密【前編】 | 高校野球ドットコム
ティーバッティングの様子

 「昨年から3年生をAチームとして、2年生以下をBチームとするようにしました。上級生の中に下級生が入ると遠慮するというのが見えてたので、学年でチームを分けて、秋からのチームを目指そうということで今の2年生はやってきました」

 前チームから2年生だけのチームで動いていたことで、3年生が引退するよりも前にチーム作りを進めることができ、2年生としてのチーム力を高めることができた。これこそが、麦倉監督が秋季栃木県大会優勝の要因として挙げた「団結力」の正体だ。

 「Bチーム単独でよく練習試合に行ってもらっていました。団結力もありましたし、一つ成功したな、間違ってなかったかなというのは感じています」

[page_break:固い守備を作り出したのは「先を読む意識」と「松倉の制球力」]

固い守備を作り出したのは「先を読む意識」と「松倉の制球力」

佐野日大の秋の躍進を生んだ「団結力」と「守備力」の秘密【前編】 | 高校野球ドットコム
先頭でストレッチを行う主将の八ツ代敢大

 また、佐野日大の野球を語る上で欠かすことができないのが、堅い守備力だ。秋季関東地区大会でもひと際目立っていた堅い守備は、チームの持ち味として日頃から特に意識を高く取り組んでいると、主将の八ツ代敢大は話す。

 「守備に関しては、捕れる球は100%捕れるように練習しようというのは、監督さんからも言われていますし、選手もみんな意識してやっています」

 この「100%捕れるようにする」という言葉を実践していくために、麦倉監督がグランドでよく口にするのが「先を読んで守れ」ということだ。打順やランナーの有無、カウントなどの情報から、次に起こりうるであろうプレーを頭の中で準備しておくことで、「捕れる球は100%捕れる」状況を作り出すことができるのだ。

 「打球に対して、一歩目でしっかり動けることが大事です。そのためにポジショニングに関しても、私は結構動かします。栃木県は人工芝の球場もありますので、インフィールドから出て守れとか、データで引っ張る傾向のバッターなどもわかるので、塁線に寄ったりですとか。
 そうすれば、キャッチャーもサインを出しやすいと思いますし、野手も先を読んで守りやすくなると思います。すべて繋がってきますよね」

佐野日大の秋の躍進を生んだ「団結力」と「守備力」の秘密【前編】 | 高校野球ドットコム
守備練習の様子

 だが、これらの全てはコントロールが良く、ある程度打球方向が読めるピッチャーがいてこそ成り立つものだ。つまり今年の佐野日大には、「捕れる球を100%捕れる」状況を作り出せる投手が存在する。その投手こそが、チームのエースである松倉亮太だ。

 「松倉は、ボールにキレがありコントロールが良い投手です。松倉が安定しているので、守備に関してもある程度いけるなというのがありました。派手さはないですけど、みんな本当に守ってくれます」

 麦倉監督は、松倉に対して大きな信頼を寄せている。
 捕れる球は100%捕れる練習が出来ており、尚且つある程度の打球方向が読めるコントロールを持つ投手がいる。この状況を作り出せたことで、佐野日大は文字通り「守備からリズムを作る」ことができ、秋季関東地区大会に進出することができたのだ。

前編はここまで!後編ではこの冬場の取り組みや夏に向けた意気込みについて迫っていきます。後編もお楽しみに!

(文・栗崎 祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.20

伊集院の好左腕・新藤、終盤力尽き、鹿児島実に惜敗【24年夏・鹿児島大会】

2024.07.20

枕崎が1時間半遅れの試合でも集中力を発揮!堅守を発揮し、2年連続の8強!【24年夏・鹿児島大会】

2024.07.20

【夏の逸材123人成績速報】198センチ左腕、世代屈指のスラッガー、大分の県立に現れた150キロ右腕などドラフト候補が大活躍!北海道NO.1左腕がプロ志望を表明

2024.07.20

高田商、御所実、大和広陵が奈良8強入り!【2024年夏の甲子園】

2024.07.20

山形城北、羽黒、山形商、米沢中央が山形8強入り!【2024年夏の甲子園】

2024.07.15

ノーシード・二松学舎大附が2戦連続で延長戦を制す【2024夏の甲子園】

2024.07.15

プロ注目153キロ右腕が3回戦で姿消す 好リリーフ見せるもあと1点及ばず【2024夏の甲子園・兵庫】

2024.07.20

伊集院の好左腕・新藤、終盤力尽き、鹿児島実に惜敗【24年夏・鹿児島大会】

2024.07.20

枕崎が1時間半遅れの試合でも集中力を発揮!堅守を発揮し、2年連続の8強!【24年夏・鹿児島大会】

2024.07.20

【夏の逸材123人成績速報】198センチ左腕、世代屈指のスラッガー、大分の県立に現れた150キロ右腕などドラフト候補が大活躍!北海道NO.1左腕がプロ志望を表明

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.23

大阪桐蔭が名門・日体大に1勝1分け! スター選手たちが快投・豪快弾・猛打賞! スーパー1年生もスタメン出場 【交流試合】

2024.06.23

プロ注目の大阪桐蔭・徳丸が大学生相手に決勝アーチ!直近3週間5本塁打と量産態勢!2年ぶり夏甲子園へ強打者の勢い止まらず!

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」