Interview

150キロは目前。藤本竜輝が追求する「下半身主導フォーム」と「ボールの回転数」【後編】

2019.01.30

 兵庫の公立の雄、の投手陣をけん引する藤本竜輝。昨秋は自己最速スピードを2キロ更新する147キロをマーク。チームの県4強入りに大いに貢献した。2019年はいよいよ高校ラストイヤー。伸びしろがふんだんに残る逸材右腕に話を聞くべく、兵庫県加東市に位置する野球部グラウンドを訪れた。
 前編では昨年の秋季兵庫県大会、そしてこれまでのルーツを振り返ってもらったが、後編では、高校入学後のエピソードや夏の甲子園に向けての意気込みを伺っていく。

兵庫の公立の雄、社の投手陣をけん引する藤本竜輝【前編】

プロを予感させる原石を正しく磨くために

150キロは目前。藤本竜輝が追求する「下半身主導フォーム」と「ボールの回転数」【後編】 | 高校野球ドットコム
ノックを受ける藤本竜輝(社)

「原石だと思いました。磨けばものすごい輝きを放つ原石だなと。プロを予感させる原石だなと」
 山本巧監督は藤本の第一印象をそう語った。

「とにかく笑顔がよかった。野球が大好きであることが伝わってくる笑顔だなと思いました。故障歴もなく、ヒジも肩も健康。中学までに彼がお世話になった指導者の方々に感謝しましたね」

 入部まもない4月の練習試合で142キロをマーク。しかし山本監督は「フォーム矯正の必要性をすぐに感じた」という。
 「簡単に言えば上体で投げていた。地肩が強く、上体だけでもそこそこの球を投げられてしまうのですが、故障防止の面でもパフォーマンス向上の面でも修正は不可欠だと判断。テークバック時に右腕が大きく一塁側に入ってしまう点、右肩が下がってしまう点を軸にした矯正の必要性を本人に伝えました」

 藤本が回想する。
 「小、中時代は上半身だけで投げていた感覚が自分の中にもありました。でも上半身だけで投げるフォームでは早々に限界が来てしまう。監督からいただいたアドバイスにはすべて耳を傾け、改善を試みました。特にテークバック時に下がっていた右肩を下げず、両肩を並行にした状態で前に出ていけるフォームに改良できたことは、大きかった。スピード面でもコントロール面でもプラスに働いている感覚が自分の中にあります。今ではかなり下半身主導で投げられるようになりました」

 下半身主導で投げるために大切にしている意識を尋ねたところ「上げた左足の親指をセンターに向け、お尻からホーム方向に出ていくこと」という答えが返ってきた。
 「ホーム方向に出ていくときに左足の裏をキャッチャーに見せながら、ホームに近い地点に着地するイメージを持つようにしたところ、実際に歩幅が広がり、スピードも上がりました。横を向いている時間が長くなることで体の開きが遅くなるメリットも感じています」

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高校ラストイヤーに向けて

150キロは目前。藤本竜輝が追求する「下半身主導フォーム」と「ボールの回転数」【後編】 | 高校野球ドットコム
ラストイヤーへの意気込みを語る藤本竜輝(社)

 高校入学時の体重は66キロ。線の細さは否めなかったが、食事に対する意識向上と筋力トレーニングによって少しずつ体重は増え、昨夏は71キロでプレー。
 現在のボディデータは179センチ74キロ。「春までに78キロにし、80キロで夏を迎えたい」と今後の増量計画を語った。

 直球のスピードは昨秋の兵庫大会で自己新の147キロをマーク。
 「ここまで来たら高校生の間に150キロを出してみたい」と大台への思いを明かしつつ、「1番大事にしたいのは、ボールのキレを向上させること。特にボールの回転数にはこだわりたい」と冷静な口調で続けた。

 では1分間あたりの回転数が計測可能な装置が搭載されたボールで投手陣のデータを取得しており、藤本の昨秋の回転数は2100台。
「自分の予想よりも少なかったのでちょっとショックでした…。春になった頃には2300台にしたい」。

 回転数アップを向け、取り組んでいるのが指力の強化。約3キロのサンドボールを指先でつかんでは離すトレーニングメニューを日々、継続している。
 「キレ向上のため、この冬はリリースポイントの位置をもっとキャッチャー寄りで離せるフォームへの調整もおこなってきました。長くボールを持ち、前で離すことで回転数のアップと出どころの見づらさを手に入れることができれば、たとえ今までと同じスピードだったとしても、打ちづらいボールになると思う」

 山本監督は「体力と技術の向上が交わってくれば、軽く150キロは超えてくる。今夏までに150キロが出る可能性は十分」と語った。
 「野球に対しての取り組み方が非常にストイック。40 、50歳になっても、とことん野球を突き詰めていってほしいと思わせる選手です。伸びしろはたっぷり。まだまだ伸びる選手だと確信しています」

 藤本は言う。
 「今、チームは目標を日本一に設定し、練習を積み重ねています。激戦区の兵庫の夏を勝ち抜いていくためにも、投手としてのあらゆる分野の精度を上げ、信頼される『勝てる投手』になりたい。ぼくらの代でチーム初の夏甲子園出場を成し遂げたいんです」

 進化がとまらない好右腕のラストイヤーに要注目だ。

文=服部 健太郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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