Column

3度目の正直で優勝旗を掴んだ広島新庄!春季中国大会を振り返る

2018.06.23

広島新庄の“悲願達成”


春の中国大会を制した広島新庄

 2年連続の決勝進出となった広島新庄が、秋春通じて初の中国王座を掴んだ第130回春季中国地区野球大会。今回、活躍選手、印象に残った場面等を中心に、大会の振り返りを行いたい。

 優勝した広島新庄は、秋も含めると通算3回目の決勝進出(2013秋、2017春)。“三度目の正直”を叶える原動力となったのが、2人の右腕エースだ。

 170cmに満たない身長ながら、全身を目一杯使った躍動感溢れるピッチングで攻める竹邉聖悟、しなやかなフォームから力強い直球を投じる桑田孝志郎。両者ともに直球の最速は140km/hを越える本格派右腕で、今大会も力強い投球を見せてくれた。

 先発は、1回戦が竹邉、準決勝が桑田。下関国際との決勝の先発は竹邉ではないか…という予想が大半だったが、迫田守昭監督が先発のマウンドに送り込んだのは、桑田だった。前日8回1/3を投げた桑田だったが、疲労を感じさせない投球で6回途中まで2失点にまとめてみせた。そこから、マウンドを引き継いだ竹邉も気迫十分の投球を見せ、無失点。両投手が口を揃えて語った「先発、リリーフどちらでも行ける準備はできていた」の言葉に違わない快投で優勝を手繰り寄せた。

 昨秋に続く、2季連続の中国大会決勝進出となった下関国際。1回戦(八頭戦)は15157、準々決勝(宇部鴻城戦)は吉村英也の両左腕が完投し、決勝の先発には満を持してエース・鶴田克樹を送り込んだ。センバツ・創成館戦以来の公式戦先発登板となった鶴田は、最速142km/hを計測する等、持ち味の一端は見せたが、6回を投げ6失点。広島新庄打線の勢いを止めることは出来なかった。

 今大会活躍が際立っていたのが、川上顕寛。坂原秀尚監督が「センバツ後も好調をキープ出来ている」と評価するように、決勝では同点適時打を含む、3安打をマークした。
 他にも1年生・関山璃久斗の台頭や、左腕・吉村英也が準決勝で2失点完投を挙げるなど、収穫も多くあった今大会。夏の山口大会連覇、3季連続甲子園出場に向けて、ここからラストスパートをかける。

 2季連続出場で4強入りを果たした倉敷商は、1回戦(早鞆戦)で先発した引地秀一郎が、[stadium]西京スタジアム[/stadium]に新設されたスピードガンで147km/hを計測。「大会No.1右腕」の評価を裏切らない剛球で観衆の熱視線を引き寄せた。

 春は2年連続となった宇部鴻城は、捕手で主将の打田啓将が今大会から復帰。1回戦(石見智翠館戦)で、昨秋以来の公式戦出場を果たした。先発した2年生右腕・遠山雄大に積極的な声掛けを行う等、経験豊富な立ち回りを見せ、健在ぶりをアピール。2年連続、夏の山口大会決勝で涙を飲んでいるチームにとって不可欠な「ラストピース」として、夏の奮闘も期待したい。

 開催県優勝校として臨んだ宇部工は、下位打線を起点に剛腕・引地秀一郎から先制点を奪ったが、最終的に3対11の7回コールド負けを喫した。山口大会での投球が評価され、背番号8からエースナンバーに昇格した久保田巽が、4回をパーフェクトに抑える等、力のあるところは攻守で見せただけに、夏に向けて巻き返しを図りたい。

 引地と並ぶ本格派右腕として注目を集めていた右腕エース・畑村政輝を擁する早鞆は、初回の3失点が響き、無念の初戦敗退。しかしながら、畑村の威力ある直球だけでなく、打線も一時1点差に詰め寄る等、高い潜在能力は随所に覗かせた。

 石見智翠館八頭の山陰勢も初戦敗退となったが、石見智翠館は4番・水谷瞬が島根大会準決勝、決勝に続く公式戦3試合連続となる本塁打をマーク。八頭も6番・杉川亮が3安打を記録する等、攻撃力の高さを披露し、夏に向けて期待を感じさせる戦いぶりを見せた。

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大会アラカルト


すぐさまコールドスプレーを持ってきた木下尚穏(下関国際)

 最後に今大会の球場に関する小ネタを2つ、プレー外の印象的な場面を1つ紹介し、記事の終わりとしたい。
 先ずは使用球場数について。例年1会場に集約して行われていた春季中国大会。1回戦(=準々決勝)は、1球場で4試合を行うのが恒例だった。しかしながら、今年は1回戦のみ、[stadium]周南市野球場[/stadium](津田恒美メモリアルスタジアム)を併用し、2試合ずつに分けての開催となった。春季中国大会での2会場使用は2007年以来。当時は島根開催で、[stadium]県立浜山球場[/stadium]と[stadium]平田愛宕山球場[/stadium]の併用だった。

 また、今大会の主会場となった[stadium]西京スタジアム[/stadium]は、今年2月に山口マツダがネーミングライツを獲得し、「[stadium]山口マツダ西京きずなスタジアム[/stadium]」に正式名称を刷新。スコアボードにLED大型装置を設置し、これまではなかったスピードガンも設置された。

 早速、今大会の初日に倉敷商引地秀一郎早鞆畑村政輝の本格派右腕2人が登場したこともあり、球速表示にどよめきが起こる場面も多く見られた。今夏の山口大会でも準々決勝以降で使用される同球場。“新生”西京スタジアムで、どんな熱戦が繰り広げられるのか。こちらも大いに注目だ。

 プレー外では、決勝で下関国際の一塁ベースコーチの木下尚穏が見せた行動が、強く印象に残った。力投を続ける広島新庄先発の桑田孝志郎に痛烈なライナーが襲う。桑田はグラブの土手部分で打球を受け止めたが、快心の当たりだったため、打球処理後にうずくまる。それを見た木下がすかさず駆け寄り、持っていたコールドスプレーで処置。その後、桑田も笑顔で感謝を述べ、試合が続行された。「スポーツマンシップ」の有り方が問われることも少なくない昨今。決勝を戦う両校に相応しい「フェアプレー」の精神が詰まった行動のひとつとして紹介し、記事の終わりとしたい。

文=井上幸太

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