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東山(京都)バスケット部「全国屈指の強豪バスケ部から学ぶ体の切れを生み出すストレッチング」【前編】

2017.04.13

 今回は昨年、夏冬連続準優勝に輝いた全国屈指の強豪、東山高校バスケットボール部を直撃すべく、京都市左京区に位置する同校を訪問。いったいどんな話が聞けるだろうか。

目指すは「より速く、より高く、より強く」

東山(京都)バスケット部「全国屈指の強豪バスケ部から学ぶ体の切れを生み出すストレッチング」【前編】 | 高校野球ドットコム

田中 幸信監督(東山)

「どうぞこちらへ! 今日はよろしくお願いします」
バスケットボール部の活動拠点である体育館に到着すると、就任18年目の田中 幸信監督が出迎えてくれた。公立中学の指導者時代に2度の日本一を成し遂げ、東山高校では5度の全国大会出場歴(ウィンターカップ3度、インターハイ2度)を誇る名指揮官だ。

「今回の取材記事は高校野球のサイトに載るんですよね?」
「そうなんです。『他競技から学ぼう』ということで、野球選手に参考になるランメニューを中心にうかがえればと思っています」
「あまり野球界のことはよくわからなくて…。お役に立てればいいんですけど」
 田中監督は苦笑いまじりにそう言うと、コートでウォーミングアップを開始しようとしている選手たちに視線を移した。

 田中監督は「バスケットボールは身長が高い子が有利とされるスポーツだけど、大きい子はえてして小回りがきかないんですよね」と前置きした後、練習メニューを作成する上で重視している要素を教えてくれた。

「大きい子も動けるようにするために瞬発力も高めていかなければいけないし、試合の時間内でベストの動きを継続できる持久力も高めなければいけない。敏捷性、柔軟性、持久力。これらの要素を向上させるドリルを年間通して行うことを意識しています」

 目指すは「より速く、より高く、より強く」。
ベンチプレス、スクワットを中心としたウエイトトレーニング、及び、体幹トレーニングも年間を通し、継続して行っている。
「ウエイトトレーニングはプレー中に相手選手と接触してもぶれないだけの強さを養えますし、故障防止にもつながる。高く飛ぶためのポイントは体幹。体幹が強くなることでジャンプ力も上がり、空中での体勢の保持力も向上します」

[page_break:野球選手にもおすすめの「10ヤードダッシュ」]

野球選手にもおすすめの「10ヤードダッシュ」

東山(京都)バスケット部「全国屈指の強豪バスケ部から学ぶ体の切れを生み出すストレッチング」【前編】 | 高校野球ドットコム

練習は縄跳びから始まる(東山)

 取材日は平日。放課後の15時半にスタートした練習は「縄跳び」から始まった。
「練習は毎回、必ず10分間の縄跳びから始まります。このメニューで体温を約1度上げます」と田中監督。片足で跳んだり、三角形や四角形の形を作りながら飛んだりとバリエーションはさまざま。10分とはいえ、相当きつそうに映る。野球界のウォーミングアップの導入メニューとしても有効性は高そうだ。

 練習はストレッチングメニューから始まり、徐々に体を温めていく流れを漠然と予想していた。ところが東山バスケットボール部では、「静的ストレッチング」は練習前には絶対に行わない方針なのだという。その理由を田中監督は次のように説明してくれた。

「ウォーミングアップの段階でじわーっと筋肉を伸ばす静的ストレッチを行ってしまうと、その後の競技パフォーマンスが落ち、ケガもしやすくなることがドイツの研究の結果、明らかになっています。そのため、練習終わりのクールダウンメニューとしては行いますが、ウォーミングアップメニューとしてはふさわしくないという判断で行っていません。ウォーミングアップの中で行うのはあくまでも体を実際に動かしながら行う動的なストレッチングのみです」

東山(京都)バスケット部「全国屈指の強豪バスケ部から学ぶ体の切れを生み出すストレッチング」【前編】 | 高校野球ドットコム

股関節を意識したウォーミングアップ(東山)

 縄跳びが終了すると、メニューは動的ストレッチング、ハードル、ラダーを使用したアジリティメニュー、体幹や股関節、腸要筋を意識したトレーニングなどを経て、ランメニューへ。田中監督に「野球選手にお薦めのランメニューはなにかありますか?」と尋ねたところ、「10ヤードダッシュ」と称されているメニューを紹介してくれた。

「10ヤードダッシュはアメリカンフットボールを参考にした2人一組になって行う短距離ダッシュです。ゴムを腰に巻き、後ろの選手に引っ張ってもらう形で負荷をかけながら約9メートルの距離を2秒以内に駆け抜けるこのドリルメニューの狙いは『止まったゼロの状態からいかに早い段階で100のトップスピードに入れることができるか』。100メートル走が速いに越したことはないのですが、ゴールが100メートル先にあるわけではないので、いかに短時間で0から100にもっていけるかが大きなポイントになってくる。これはおそらく野球でも求められる要素だと思いますので、10ヤードダッシュはおすすめのメニューです」

 後編に続く!次回は、動きの切れを生み出すトレーニングやトレーニングに対する考え方などを紹介します。お楽しみに!

(取材/文・服部 健太郎

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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