Interview

北海道日本ハムファイターズ 谷元 圭介投手(稲生出身)「身長をハンディするのではなく、武器にすればいい」【前編】

2017.01.11

 昨年、絶対的なリリーバーとして28ホールドを稼ぎ、北海道日本ハムの日本一に貢献。日本シリーズの胴上げ投手となった谷元 圭介投手。その身長は167㎝と、右投手では現在のNPBで最も低い。「小さな大投手」とうたわれ、黎明期の広島カープを支えた伝説の197勝右腕・長谷川 良平氏とちょうど同じだ。

 体格に恵まれず、高校では無名だった谷元投手が、いかにしてNPB屈指のリリーフ投手になったのか。その過程について、じっくり話をうかがいました。

高校2年の時、やりたくなかった投手に転向

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谷元 圭介投手(北海道日本ハムファイターズ)

 谷元 圭介投手は小学3年で野球を始めて以来、ずっと内野手だった。三重の県立高・稲生(いのう)高でも1年まではショートかセカンドを守っていた。しかし2年生になると当時の監督から投手へのコンバートを告げられる。実は谷元投手は中学時代、地肩の強さを買われ、時折マウンドに上がっていた。その試合を偶然目にした高校の監督は、投手の資質がある、と見ていたのだ。

「でも僕は嫌だったんですよ。投手はやりたくなかった。頑なに拒否したんですけど」
谷元投手はそう振り返るが、ピッチャーに転向すると、投げ込みに走り込みにと、しゃにむに練習に励んだ。

「同期の捕手にいい選手がいましてね。バッテリーでチームを引っ張って、甲子園に出られたらいいな、と思っていました」

 磨きをかけたのはストレートだった。
「今と同じですね。さほど球速はないのに、真っ直ぐで押すタイプの投手でした。真っ直ぐへのこだわりが強いのはその頃からですね」

 谷元投手が在学した稲生高は、2014年夏は県ベスト4に進出しているものの、これまでの実績からすると、決して強豪ではない。谷元投手をエースとした代も、3年春の8強が最高で、甲子園は遠かった。それでも高校時代が谷元投手にとって分岐点になったのは間違いない。もし投手に転向していなかったら、今の谷元投手はなかったかもしれない。そして高校時代は、かけがいのない財産にもなっている。

「最高成績はベスト8止まりでしたが、3年間、仲間と一緒に1つの目標に向かって、切磋琢磨しながら苦しい練習にも耐えた。そんな日々が最高の思い出になっています」

[page_break:大学の恩師に低い身長を活かす術を教わる]

大学の恩師に低い身長を活かす術を教わる

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谷元 圭介投手(北海道日本ハムファイターズ)

 谷元投手がこだわりを持つストレートの最速は150㎞に達する。ただ本人は「プロの中では速い方ではありません」と言う。
「ですから、常時140㎞台中盤のストレートをいかに速く見せるかは、常々よく考えています。ウチには大谷翔平花巻東高)という、165㎞のストレートを投げる投手もいますが、プロはそんなボールでもバットに当てられる世界ですからね」

 ストレートをいかに速く見せるか―。身長167㎝の小柄な右腕に1つの知恵を授けてくれたのが、中部大時代の恩師・善久 裕司監督(現総監督)だった。谷元投手は高校卒業後、1966年創部で愛知大学野球連盟に所属する中部大に進んだ。善久監督の教えは投手のセオリーとは反対のことだった。
「一般的に投手は高めに投げたらダメ、といわれていますが、高めに投げろ、と言われたんです。僕は上背がなく、必然的に球の出所が低くなるので、高めに投げると、(打者が打ちにくいとされる)ボールがホップするような軌道を描く、と」

 谷元投手は球の出所をさらに低くするため、ステップ幅も広げた。低いところで体重移動を繰り返すには、下半身の粘りも求められる。強靭な下半身を手に入れるため、走り込みに加え、タイヤ押しやタイヤ引きで体をいじめ抜いた。

 低いところから高いところへと浮き上がるようなストレートを武器に、愛知大学リーグで頭角を現したのは3年秋(2005年秋)。谷元投手はこのシーズン、3勝とリーグ2位の防御率(1.69)をマークし、敢闘賞に輝く。すると4年春はリーグ最多タイの4勝で初のベストナインに。続く秋は2勝も全13試合中10試合に登板し、2季連続でベストナインに選出された。

[page_break:厳しい環境をポジティブにとらえた社会人時代]

厳しい環境をポジティブにとらえた社会人時代

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谷元 圭介投手(北海道日本ハムファイターズ)

 無名の公立校の投手から一躍、愛知大学リーグを代表する投手になった谷元投手。ところが、都市対抗常連の強豪・社会人チームからは声がかからなかった。当時の心境を谷元投手はこう語る。
「悔しかったですね。僕より結果が出ていない投手が強豪チームに入りましたからね。みな上背があり、そこが決め手になったのか…という思いもありました。でもだからこそ、社会人で見返してやろう、という気持ちになりました」

 谷元投手が採用されたのは、新潟市を拠点とするバイタルネットだった。1976年にニチエー硬式野球部として発足したバイタルネットは、谷元投手が入社する以前、1994年、2001年と2度日本選手権に出場していたものの、都市対抗出場はなかった。練習時間も限られていた。強豪社会人チームの中には、勤務は午前中だけのところが少なくないが、バイタルネットでは、野球部の選手も一般社員と同じように勤務するのが会社の方針。特別待遇はなく、谷元投手も朝7時半に出社して、夕方5時まで働き、それからグラウンドに向かった。

 入社してしばらくは「練習時間が短いことを言い訳に、取り組みが甘かった」そうだが、夏を迎えた頃、今のままではいけないと気が付く。

「練習時間が短いのなら、その分、集中して効率良くやろう、と。仕事も大変でしたが、仕事は仕事、野球は野球と、切り替えをしっかりするようにもなりました」

 その秋、エースとして3度目の日本選手権に導いたのも、この成果だろう。社会人2年目はTDK千曲川の補強選手で都市対抗に出場し、[stadium]東京ドーム[/stadium]の地を踏んだ。

 プロのスカウトの目にも止まるようになった谷元投手は、北海道日本ハムのスカウトから入団テストを受けるよう勧められる。テストでは打者6人に対して5三振を奪う圧巻の投球を披露。合格を勝ち取った谷元投手は、2008年秋のドラフト会議で7巡目に指名され、北海道日本ハムに入団する。

 大学時代、上背がないハンディを逆手にとって強みとした谷元投手。「3年やって芽が出なかったらやめようと思っていた」社会人では、厳しい環境をポジティブにとらえてプラス要素とし、念願のプロの仲間入りをした。

 後編に続く!

(インタビュー・文/上原 伸一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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