Column

田村 龍弘選手(光星学院-千葉ロッテマリーンズ)「プロに行くなら捕手でいけ。野球頭は長けたものがあった」

2016.12.17

 2012年の高校野球は大阪桐蔭連覇を果たしたが、最強の挑戦者として大阪桐蔭に立ち向かったのが光星学院(現・八戸学院光星)だった。2011年夏から三季連続甲子園準優勝は、史上初の出来事でもあった。その中心選手だったのが3番キャッチャー・田村 龍弘(現・千葉ロッテ)、4番ショート・北條 史也(現・阪神タイガース)の2人だった。まずは今年、初のベストナインを受賞した田村龍弘選手の高校時代を仲井 宗基監督について語っていただいた。

田村に捕手転向を勧めた2つの理由 

田村 龍弘選手(光星学院-千葉ロッテマリーンズ)「プロに行くなら捕手でいけ。野球頭は長けたものがあった」 | 高校野球ドットコム

光星学院時代の田村 龍弘選手

 田村が入学したとき、仲井監督は田村のレベルの高さに衝撃を受けた。
「もう私が見た中では、高校生のレベルで考えれば一番の選手でした。飛ばす能力もありましたし、打率が高い。野球に対しての考え方もしっかりとしていましたし、どんな投手にも対応ができる技術がすでに備わっていました。打撃については飲み込みが早いですし、特にいじったこともありません。ただ1つ言ってきたのは、彼は体がスウェーする癖があった。中学時代、飛ばしたいという思いが強かったんでしょうね。

 泳いで捉えても打球を飛ばすことができたんですが、彼がプロを目指すことを考えれば悪い癖ですし、高校レベルとなれば、140キロのストレートと合わせて良い変化球を投げる投手も出てきます。そういう投手に対応ができないので、それは直すように伝えました」

 田村はすぐにスタメンを獲得し、1年夏には6番レフトでスタメンデビュー。2試合目となる3回戦の三沢戦で3打数2安打、準々決勝の弘前学院聖愛戦では4打数2安打2打点の活躍を見せるなど、上々のデビュー戦となった。そして新チームになると、猛打爆発。秋の公式戦では、5本塁打、16打点、打率.500と打ちまくり、東北大会準優勝を経験し、そして2011年の第83回選抜高等学校野球大会に出場。初めて[stadium]甲子園[/stadium]の地を踏んだ。選抜では2試合で6打数2安打の活躍、夏は甲子園準優勝を経験した。当時の活躍について仲井監督はこう振り返る。

「田村が凄かったのは対応力といいますか、あいつが凄いのは投手によってタイミングを変えられたり、2ストライクと追い込まれても打撃スタイルを変えることができる。そこは本当に非凡だなと思いました」

 そして2年秋、田村は捕手として出場し始める。一般的には2年秋から捕手に転向したとみられているが、実は田村は2年夏前から捕手を始めていた。その理由とは?

「本人はプロに行きたい強い気持ちを持っていました。僕は田村のことを高校生のレベルではナンバーワンと言いましたが、プロが活躍する選手は、ポテンシャル的なモノもかかわってきます。田村は技術、頭脳的なモノは素晴らしい選手ですが、体が小さいので、評価を受けにくいタイプ。プロに行けるとすれば、捕手しかなかった。野球頭は長けたものがありましたので、チームとしても田村の頭脳に託そうと思っていました」

[page_break:正捕手として春夏連続準優勝に導く]

 実際に使ったのは夏前の練習試合だけだったが、練習試合の様子を見て、「これはいける」と仲井監督は感じた。秋以降、田村は攻守で中心的な存在となる。

 捕手としての能力は総合的に高い田村だが、特に素晴らしいのはスローイングだ。昨年、パ・リーグ1位の盗塁阻止率、そして今年もパ・リーグ3位の盗塁阻止率を誇っている。高校時代からスローイング能力は際立っていた。仲井監督によると田村は捕手を始めてからも捕ってから投げるまでが早かった。

「僕はスローイングについて教えていないですね。とにかく速くて、審判がついていけていないというんですよ。それぐらいすごかった」

正捕手として春夏連続準優勝に導く

田村 龍弘選手(光星学院-千葉ロッテマリーンズ)「プロに行くなら捕手でいけ。野球頭は長けたものがあった」 | 高校野球ドットコム

仲井 宗基監督(八戸学院光星)

 またリード面も素晴らしい選手だった。城間 竜兵金沢 湧紀をリードし、東北大会優勝、さらに明治神宮大会優勝も経験する。仲井監督は田村とリードについて深く話すことができていた。

「もう対等に話すことができる選手でしたね。まず頭が良くて、自分の考えをしっかりと持っている。どんなリードをしたのか?と聞くと、ちゃんと根拠をもって話すことができますからね。ただ自分の考えが強いあまり、『お前の考えは確かに正しい。ただお前の考えを通すだけではなく、投手の思いも汲み取れよ』ということは話をしていました。とにかく意見交換ができる捕手でした」

 そして3年生になって迎えた第84回選抜大会。田村は攻守の中心として活躍し、準決勝関東一戦では特大本塁打、決勝大阪桐蔭には敗れたとはいえ、大会屈指の剛腕・藤浪晋太郎(現・阪神)から5打数3安打を放ち、大会通じて打率.474を記録し、中心選手として活躍を見せた。

 そしても甲子園に出場。3回戦神村学園戦で豪快な本塁打を放つと、準々決勝では、1回戦で22奪三振の快投を見せた松井裕樹(現・東北楽天関連記事)擁する桐光学園と対戦。松井の切れ味鋭い変化球に苦しんでいたが、8回表に先制打。そして北條も適時二塁打を打って、3対0で勝利。さらに準決勝東海大甲府戦では北條とともに本塁打を放ち、9対3で快勝。三季連続で甲子園決勝進出を果たした。決勝の相手は選抜と同じく大阪桐蔭。しかし藤浪を攻略できず完封負けし、史上初となる三季連続の甲子園準優勝に終わった。

 この実績について仲井監督は、田村がいなければ成し遂げることができなかったと振り返る。
「もちろんこれはみんなで勝ち取ったものです。北條、城間、天久翔斗などみんな頑張りました。ただ、軸となる田村の存在がなければ3回も続けて決勝に到達することはできなかったと思います。本当に感謝しています」

[page_break:田村は嚙めば嚙むほど味が出る男]

田村は嚙めば嚙むほど味が出る男

田村 龍弘選手(光星学院-千葉ロッテマリーンズ)「プロに行くなら捕手でいけ。野球頭は長けたものがあった」 | 高校野球ドットコム

田村 龍弘選手(光星学院時代)

 そしてこの年のドラフトで、千葉ロッテからドラフト3位指名を受けた田村。仲井監督は、田村の担当スカウトとなった井辺  康二氏にこう話している。
「井辺さんにはこう言いましたね。『井辺さんならば分かっていると思います。田村は噛めば噛むほど味が出る男ですよ』と。試合で使えば使うほど良さが分かる男なんです。田村はそういう選手です」

 仲井監督の言葉通り、田村は年々、存在感を増していく。いきなり高卒1年目から一軍の試合で7試合に出場し、2年目では50試合に出場。3年目には117試合に出場し、千葉ロッテの正捕手として活躍している。

 田村の活躍について仲井監督は、
「私も田村がリードしている試合を見ていますが、教え子ということを抜きにしても、田村のリードはやはりレベルが違うと感じることがあります。千葉ロッテには田村以上の体格、パワーを持った捕手が多くいます。それでも伊東 勤監督が田村を評価しているというのは、捕手としての能力を最大限に評価していることだと思います」

 自分の持ち味をプロの舞台で発揮していることに仲井監督は嬉しそうに語った。今年130試合に出場した田村はベストナインを初受賞。充実したシーズンを送ったように見えるが、仲井監督はシーズン終盤に急性上気道炎で戦線離脱したことを気遣っていた。

「ベストナインを受賞しましたけど、後半、欠場した時期がありましたよね。あの時、パンクしちゃったかなと思いました。ずっと一軍の捕手として出場し続ける大変さがあると思います。彼はやんちゃそうに見えて、実は繊細な男。なかなかチームを勝たせられなかったところに責任を感じていたのかもしれません」

 一軍の捕手は、相当なプレッシャーがかかると聞く。今年の千葉ロッテは優勝した北海道日本ハム、2位の福岡ソフトバンクになかなか追いつけなかった。どうすればチームを勝たせることができるのか。そこにプレッシャーを感じていたのだろう。ただそれは、田村がそれだけ重要なポジションを任される選手へ成長したという証でもある。もし仲井監督が提案した捕手転向がなければ、現在の立ち位置はなかった。まさに英断だった。

 仲井監督は三季連続準優勝は田村がいなければ成し遂げられなかったと言う。千葉ロッテでも、田村がいなければパ・リーグ優勝は目指せない存在として期待されることだろう。球団は、長く正捕手として活躍していた里崎 智也氏がつけていた背番号「22」を田村に着けさせることを発表した。
来季は背番号「22」をつけてシーズンに臨む田村龍弘。これからも常に優勝争いができる捕手を目指し、高校時代に続き、プロでも名捕手の道を歩んでいく。

(取材・構成=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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