Interview

天理大学 梅谷 成悟選手 「15年ぶりの甲子園出場は体のキレが最も良い状態で夏を迎えられたから」

2016.09.15

 昨夏、高校野球100周年の節目の年に第1回大会で優勝した京都ニ中の流れをくむ京都鳥羽が見事甲子園出場。するとキャプテンを務めていた梅谷成悟は選手宣誓を任された。例年なら組み合わせ抽選の際、希望するキャプテンがくじを引いて決めるのが通例となっているが、昨夏に限っては主催者側が京都鳥羽に依頼。大役を引き受けた梅谷は「次の100年を担う者として、8月6日の意味を深く胸に刻み、甲子園で躍動することを誓います」とハッキリした口調で宣誓した。

 天理大学に進学後は藤原 忠理監督からの評価も高く早くもAチーム入り。レギュラー獲りへ向けて汗を流す。そんな梅谷に高校時代の振り返りと大学での目標を語ってもらった。

快進撃でつかんだ15年ぶりの甲子園

梅谷 成悟選手(天理大学)

 昨夏の京都で有力視されていたのが龍谷大平安立命館宇治。京都鳥羽の評価は、守備は堅いが総合力では2番手グループ、後に甲子園でも2勝を挙げることになるが、実は大会前の評判は決して高いものではなかった。ただ京都鳥羽のナインはそのことをマイナスに捉えることも、発奮材料にすることもなかったという。「僕らは相手どうこうというより自分達がやってきたことをしっかりやるという方針だったので、前評判はみんなあまり気にしなかったです」

 初戦で2桁得点を挙げ快勝すると波に乗り、そのまま一気にトーナメント表を頂点まで駆け上がった。下馬評を覆し優勝出来た要因は何だったのだろうか。
「一番は秋の大会からずっと言われていた粘り強さであったり、つなげる野球、組織力の野球を心掛けていて、夏に向けて調整していたんですけど、それが出たおかげというのもありますし、やっぱり見えない力に導かれたような気がしたりもしますね」

 歓喜の瞬間を味わう10ヶ月前、秋は京都3位近畿大会出場を果たしたものの奈良大附の好投手を全く打てずに2安打完封負け。選抜への道を断たれた。この時点ですでに守備力は安定していただけにチームの課題は明確。冬の3ヶ月をどう過ごすか、出した答えは打力強化のため1日1000スイングのノルマを課すことだった。しかも“振る”のではなく“打つ”ことに重きを置き、ティーバッティングをひたすら繰り返した。

 夏にはつながる打線が猛威を振るったが、冬の打ち込みで地力が増しても100%のパフォーマンスが発揮出来なければ結果は伴わない。京都鳥羽では毎週トレーナーを招いて講習を受けており、調整の面でもベストコンディションで大会を迎えられた。冬は追い込んだトレーニングで体をいじめ、夏の大会1ヶ月前も追い込みはするがキレを出すため体幹トレーニングが中心。試合前日には短ダッシュで最後の調整を行い公式戦に臨んだ。

 冬からの取り組みが花開き、文字通りの集大成となった夏、ナインの動きは梅谷から見ても「高校生活の中で1番キレた状態でみんな戦えたかなぁと僕自身思いましたね」というものだった。京都大会の得点は初戦から順に10、7、2、8、8、6点。超高校級のスラッガーはいなくとも、つながる打線はしっかり引き付けて逆方向へ弾き返し白球は何度も外野の芝生の上を転がった。

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選手宣誓の大役と甲子園で芽生えた感謝の気持ち

梅谷 成悟選手(天理大学)

 15年ぶりに夏の京都を制すと梅谷の元に大役の依頼が届く。「100点です」と笑顔で振り返った選手宣誓の文章は顧問の先生が作ってくれた本文を基に、固くならないよう梅谷が自分なりの言葉に置き換えた。以下が宣誓の内容だ。

 1915年8月、第1回全国中等学校優勝野球大会が始まりました。それから100年間、高校野球は日本の歴史とともに歩んできました。この100年、日本は激動と困難を乗り越えて、今日の平和を成し遂げました。このような節目の年に、聖地「甲子園」で野球ができることを誇りに思い、そして、支えていただいたすべての方々に感謝し、全力でプレーをします。次の100年を担う者として、8月6日の意味を深く胸に刻み、甲子園で躍動することを誓います。

 見事な宣誓から4日後、甲子園初戦となった岡山学芸館戦は7対1で勝利。京都大会同様、エースが好投しつながる打線は14安打を放った。「普段から、練習でも練習試合でも公式戦でも全部同じになるようにやっていたので。練習でも試合を意識してより実戦的にとやっていたので普段通り甲子園でも冷静に・・・でも、試合前の室内練習場のアップで全員けっこう緊張して、顔がひきつってるやつもいたんですけど(笑)。ここまで来たら楽しむしかないとみんなリラックスしたのもありました。あと、1回に(4番の小薗晋之介が)ホームランを打ってくれたのも普段通りの野球が出来た要因かなと思います」

 初戦を突破すると、2回戦では4対2で津商を破り3回戦へ進出。興南に逆転負けを喫し甲子園を去ることになったが、梅谷が最も印象に残っているのがこの試合だという。

「最後までいい試合をしよう、というのをチームで心掛けていたので、粘り切れなかったんですけど後半勝負に持ち込むことが出来ました。甲子園3試合を通じて感じたのが親であったり、監督さんであったり、ここまで来るために支えてくれた方々に対する感謝の気持ちが多く芽生えて、甲子園に行く前はあまり口に出さなかったんですけど、それを口に出した時に自分成長したなぁと感じました」

大学ではすでにAチーム入り。将来の打てる捕手を目指して

 選手としても人間的にも大きく成長した高校時代を経て卒業後は天理大学へ進学。関西屈指の激戦リーグ、阪神大学野球連盟に所属する天理大学は部員数が150人を優に超え、4学年が揃えば200人に迫る大所帯。その中で梅谷は1年生ながらすでにAチーム入りを果たし、夏のオープン戦ではスタメンマスクもかぶった。春季リーグ戦での出場は無かったが、今秋はリーグ戦デビューすることが濃厚。

「パワーがある。リーダーシップが取れるしキャッチャー向き。いい声出てますね」
チームを率いる藤原監督は梅谷の第一印象をこう語る。描く青写真も「大きく育って欲しいですね。キャッチャーとしてクリーンナップを打って欲しい。守り優先のポジションなので負担を減らすため打てるキャッチャーは中々いないですけど、大学野球であまりない形をしてもらいたい」と高校時代と同じく攻守の要となることを期待されている。

 チームにはもう1人、1年生ながらAチーム入りしている捕手がいるが、梅谷にはライバルにはない大きな武器がある。「大きい舞台を経験しているんでね、その経験値を出してもらいたい。スポーツの世界で経験値は宝。守りでは1球の怖さ、打つ方では1球の大切さ、大きい大会ほどそれが出来ているチームが勝っている。彼はそれを知っているのでそれを期待しています」

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[page_break:大学ではすでにAチーム入り。将来の打てる捕手を目指して]

梅谷 成悟選手(天理大学)

 ただ、不動のレギュラーとなるためにはもちろんまだ課題もある。梅谷自身も「出来るだけ引きつけて打て、というのが京都鳥羽の教えなんで金属だとそれでも打てたんですけど、ポイントが近いと木製だと差し込まれるじゃないですか。今はその修正に時間がかかっています」と話し、守る方でもまだ大学生投手の投げる球、特に落ちるボールに苦労する姿が見られる。「いい声出てますね」と話した藤原監督からも、その後には少し間を置いてから「・・・でも、もう少し細かい指示を」という言葉が続いた。

 ランナー付きのゲームノックの際、想定した場面は1点リードの8回、一死一、三塁という終盤のピンチ。ここでセンターへフライが上がり、タッチアップで三走が生還、本塁へダイレクト送球する間に一走も二塁に進んだ。それを見た藤原監督は練習を止め注意を促した。この場面、リードしているのだから同点まではオッケー、勝ち越しの走者を得点圏に進めないことが何より重要になる。

 ならば、センターは内野がカット出来る送球を投げるべきだし、捕手はアウトかセーフかギリギリのタイミングなら前へ出て送球を受け一走を二塁で殺すべき。ノッカーが打つ前、捕手が野手にかけた声は二遊間を下げて後ろゲッツーを狙うというものだった。仮にホームタッチアウトになっていれば試合を決定付けるビッグプレーだが、それは結果論であって野手の中で意思統一出来ていないのは大きな問題だ。この時の捕手が梅谷だったかどうかは確認出来ていないが、藤原監督はグラウンド上の司令塔にここまでの技量を求める。

 とはいえ、そこはまだ1年生。伸びしろの方が大きい。「高校では監督さんや部長さんに言われて行動したりだったんですけど、大学は自分で考えて行動しないといけないので、自分に何が足りないか考えて、社会に出る準備としてしっかり4年間やっていきたいと思います。僕もまだ成長段階なので、上級生になるにつれてチームが勝つために必要な存在に成長していきたいです」

 力のある大学がひしめき、順位を落とせば2部降格もあり得る環境のため育成目的の試合を作ることは難しい。限られた出場機会の中でどれだけ結果を残せるか。次の100年を担う梅谷にとって今後を占う大事な秋になる。

(取材・文=小中 翔太

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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