侍ジャパン大学代表vs侍ジャパンU-18代表
投手陣評判通りの快投も 野手陣は大きな課題を残す
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柳裕也(明治大)
前回、立教大の試合レポートで、大学生と戦う意義は、現在の自分の立ち位置を把握するためで述べた。今回の壮行試合で、自信になった選手はといるだろう。またある選手は自分の実力はまだ足りないと感じるはず。
大学生と戦う場合、後者の思いを抱く選手が圧倒的多数なのだが、この試合、多くの投手は自信にして、野手はまだまだ自分たちは足りないものがあると実感した試合であり、改めて打線、守備、走塁面など細かい駆け引きが課題となった。
高校代表の先発マウンドは早川隆久(木更津総合)。先頭打者を打ち取ったが、2番大西千洋(法政大)。大学生では屈指の走力を誇る選手だが、ボテボテのニゴロを内野安打に。このスピード感が全く違う。内野安打で出塁座せてしまったのは大きかった。早川はこの出塁でリズムを乱してしまったのか、一死満塁のピンチを招き、そして野選で1点の先制を許すと、その後、連打が飛び出し、早川は5失点を喫してしまった。
1回表、大西のスピードに対応できないところがら早川のリズムが崩れたこと。そして一死満塁から野選をしてしまったこと。本戦を考えると、強豪国と戦った場合、こういう展開は予想される。その中で冷静な判断が重要になるが、まだまだ守備の連携ミスがあり、1つ1つの守備の綻びが5失点につながってしまったのだ。
大学生と戦えて有意義な試合だったで終わらせては意味がない。他にもまだあり、このイニング、2ストライクに追い込んでから勝負を急ぎ過ぎたこと。2ストライクの場面でそのまま素直に勝負して打たれてしまったところがあり、反省点が残る初回だった。
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今井達也(作新学院)
それからだろう。早川も2回は配球面を見直し、慎重なピッチングを心掛け、無失点に抑えると、3回以降は、6人の投手が無失点に抑えた。どの投手も素晴らしかったが、観客を沸かせたのは、今井達也(作新学院)だろう。甲子園優勝投手となった今井。疲労が心配されたが、力が上手く抜けていて、素晴らしいピッチング。常時147キロ~151キロの速球を大学生打者に向かって投げ込んでいく。この速球に対し、大学生の打者が全く手を出せない。2回を投げて5奪三振。大学生相手に圧倒していた。大学代表の横井人輝監督は、「甲子園の時から素晴らしいピッチャーだと思っていましたが、今日の投球は、甲子園以上の速球を投げ込んでいました」と驚きのコメント。
侍ジャパンU-18代表の投手陣は、やはり高いレベルでも勝負できる投手陣ということを証明したが、打者陣は3安打、18奪三振の完封負け。柳裕也(明治大)、濱口遥大(神奈川大)、佐々木千隼(桜美林大)、田村伊知郎(立教大)と今秋のドラフト上位候補投手たちがマックスの力で投げ込んでしまえば、まだ木製バットを握ったばかりの高校生は全く手が出なかった。ただ台湾、韓国のエースクラスはこれまでの歴史を振り返っても、これぐらいの速球、変化球を投げこむ投手はいて、歴代の選手たちは上手く対応をしようとしていた。大会前にこういう投手と対戦できたのはとても有意義。
小枝監督は「軸はしっかりしてきた、あとはチャンスメイクする打者が消極的」と語るように、チャンスメイクする打者がどれだけ奮えるかというところだが、今年の打者陣の陣容を見ると、韓国、台湾相手には、1対0、2対1で勝っていくしかない布陣だ。そういう中で大学生と戦って課題となったスピード感ある動き、カバーリングなど細かいけれどもやって絶対に損はないことを鍛えていった方が良いだろう。
打撃は個人の素質にも関わってくるため、すぐに得点力は上がるとは思わないが、カバーリング、動作のスピード感は意識すれば、できるようになる。
代表メンバーの能力によって、できる野球、できない野球はあるが、今年は壮行試合・練習試合の3試合を見て、ロングヒットではなく、単打や走塁で活路を見出すしかない。そのためやれることは限られている。できるパフォーマンスも限られている。その中で、できることを確実にする。しっかりと実践することが今年のチームでは一番求められるのではないだろうか。背伸びをせず、身の丈に合った野球をすれば、5年ぶりのアジア制覇見えてくるかもしれない。
(文=河嶋宗一)
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