作新学院vs明徳義塾
作新学院が攻守で圧倒!初の継投も成功し、54年ぶりの決勝へ手応えを掴む
作新学院の重量打線が1回から明徳義塾を圧倒した。無名校との戦いでは「明徳」の名前は無言の圧力になるが、作新学院は1962年に史上初の春夏連覇を達成した伝統校。前評判の戦力差がそのままスコアになって表れた。
1回表、2番打者が一塁手のエラーで出塁し、3番入江 大生(3年)の3球目に二盗。入江が四球で歩いて一、二塁になり、二死後、5番藤野 佑介(3年)のライトへの二塁打で先制の2点を挙げるという展開を見れば、明徳義塾が「作新」の名前に圧倒されたと言ってもいい。
3回には2本の二塁打と内野安打を含むヒットにライトのエラーが重なって3点、4回には二塁打2本、内野安打を含むヒットをつらねてさらに3点を加え、ここで勝負はほぼ決した。
作新学院の先発、今井 達也(3年)は決していいデキではなかった。1回裏、1番打者にいきなりフォークボールで入って、3球目もフォークボール。準々決勝までの配球を一新して相手打線を攪乱したいという思惑も働いたのだと思うが、明徳義塾はこの隙を突いた。
3回には2番西村 舜(3年)が高めに抜けたスライダーをレフトスタンドに放り込んで1点返し、4回には内野エラーと内野安打で作ったチャンスを犠飛で返して徐々に今井を追い詰めていく。
今井の投球が変わったのは2点目を取られたあとだ。二死走者なしになって前のイニングにホームランを打たれた西村に対して148キロ→147キロ→149キロのストレート攻勢で1ボール2ストライクと追いこみ、最後はやはり148キロの快速球でショートゴロに打ち取るのである。今井の生命線はやはりストレート、バッテリーも作新ベンチも再認識したと思う。
作新学院は5回に1点を加え9対2と得点差を広げると、6回から左腕の宇賀神 陸玖(3年)をマウンドに送る。それまで接戦が続いて今井にリリーフを送るチャンスがなかったが、決勝戦までの全試合を1人で投げ抜くというのは打者の技術が上がった現在の高校野球界では至難の業。また二番手以降の宇賀神、入江が実力校相手にどれくらい通用するのか是非見ておきたかったのだろう。
宇賀神が6回以降の3回を5安打されながら無失点に抑え、最後の1イニングをまかされた入江は最速144キロの快速球で「速い」というイメージを植えつけ、その後はキレのいい斜め変化のスライダーを多投し、無安打、1奪三振で明徳打線を沈黙させた。
明徳義塾は3番西浦 颯大(2年)、4番古賀 優大(3年)の2人で5安打したが、走者が得点圏にいるとき2人に打順が回ってきたのは2回だけ。この辺の運が明徳義塾にはなかった。
(文=小関 順二)
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