試合レポート

鳴門vs盛岡大附

2016.08.17

ビッグイニングが両校2回ずつ!勝敗を決したのは8回の鳴門の攻撃

 両校ともビッグイニングを2回ずつ作ったゲームで、集中力の高さが印象に残った。鳴門が1点リードされた4回表に6番中山晶量(3年)が2ラン、1番日野洸太郎(3年)が2点タイムリー三塁打を放って5点を挙げれば、盛岡大附は5回裏、3本の単打と四死球1つずつを絡めて4点を奪うという対照的な攻め。

 鳴門が3回から二番手の尾崎海晴(3年)、6回から三番手の河野竜生(3年)を繰り出す継投を見せたのに対し、盛岡大附は4回にホームランと三塁打を打たれ4点を失っても先発の続投にこだわった。

 岩手大会では背番号「1」の坪田伸祐(3年)、「11」の三浦瑞樹(2年)、この日先発した「10」の井上涼平(3年)が8~22.1回投げ、さらに「18」の斎藤真輝(3年)が1回3分の1を投げている。甲子園では初戦が坪田、三浦、2回戦が斎藤、三浦、井上の継投で凌いでいるので、この鳴門戦で井上涼が投げているときは三浦、坪田、斎藤がベンチにいた。もっと早い継投があってもよかったと思う。

 勝敗を決したのは7回まで6対5でリードした鳴門が8回に見せた二死走者なしからの攻撃だ。4回に三塁打を打っている1番日野がここでもソロホームランを放って盛岡大附に2点差をつけるのだ。

 三塁打を放ったときはノーステップの無反動で打っていたが、これは反動をつけることで生まれる体のブレをできるだけ抑えたいという思いがあったからだろう。反動をつけないので飛距離は生まれないはずだが、この日はイニング後半に強い浜風がライトからレフトに吹き、レフト方向の打球は伸びていた。この打球も風に乗ってぐんぐん伸び、レフトスタンドに飛び込んでしまった。

 このときのマウンドにいた三浦は続く2番鎌田航平(3年)に四球を与えているように明らかに落胆していた。4回に逆転2ランを打たれた井上涼も被弾のあと7番打者に四球を与えているが、継投のポイントはいずれもここだったと思う。しかし、盛岡大附は続投を指示し、結果的に傷口を広めてしまった。

 8回に7対5としたあと、二死一、二塁の場面で打席に立った4番手束海斗(3年)のことも書いておきたい。172センチ、81キロの体格を見てわかるようにドカベン体型。今のプロ野球選手なら中村 剛也(西武)体型といったほうがわかりやすい。体型だけでなく、手束はバッティングの形そのものが中村によく似ていた。

 ゆったりと脱力して打席に立ち、グリップの位置を低くして構えるというのが基本形。中村はこのグリップ位置のまま動かずレベルスイングでボールを打ち抜くが、手束は打つ前にグリップ位置を肩まで上げ、ダウンスイングでボールを叩く。その違いは大きいが、全体の形や体型は驚くほど似ていて、打球にも共通する強さがある。この手束が三浦の108キロのカーブをとらえてあわやホームランかというセンターフェンス近くまで運ぶ二塁打を放ち2点を追加、ここで勝負は決まった。

(文=小関 順二

鳴門vs盛岡大附 | 高校野球ドットコム
注目記事
第98回全国高等学校野球選手権大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.24

享栄、愛工大名電を破った名古屋たちばなの快進撃は準々決勝で終わる...名門・中京大中京に屈する

2024.07.25

まさかの7回コールドで敗戦...滋賀大会6連覇を目指した近江が準決勝で涙【2024夏の甲子園】

2024.07.25

【ポニー】春夏連覇を阻止して初優勝!筑後リバーズが夏の日本一に輝く

2024.07.24

2連覇ならず…浦和学院、頼みの投手陣が崩れ、春日部共栄に逆転負け

2024.07.25

センバツ覇者・健大高崎が決勝進出!天敵の前橋育英に6点差を追いつかれるも10年ぶり夏勝利!

2024.07.24

享栄、愛工大名電を破った名古屋たちばなの快進撃は準々決勝で終わる...名門・中京大中京に屈する

2024.07.20

伊集院の好左腕・新藤、終盤力尽き、鹿児島実に惜敗【24年夏・鹿児島大会】

2024.07.20

枕崎が1時間半遅れの試合でも集中力を発揮!堅守を発揮し、2年連続の8強!【24年夏・鹿児島大会】

2024.07.21

【中国地区ベスト8以上進出校 7・20】米子松蔭が4強、岡山、島根、山口では続々と8強に名乗り、岡山の創志学園は敗退【2024夏の甲子園】

2024.07.20

【夏の逸材123人成績速報】198センチ左腕、世代屈指のスラッガー、大分の県立に現れた150キロ右腕などドラフト候補が大活躍!北海道NO.1左腕がプロ志望を表明

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.28

最下位、優勝、チーム崩壊……波乱万丈のプロ野球人生を送った阪神V戦士「野球指導者となって伝えたいこと」