試合レポート

都立片倉vs専修大附

2016.07.17

熱闘3時間42分、延長15回引き分け再試合

 都立片倉は、都立校では有数といってもいい恵まれた環境ともいえる。というのも、ほぼ専用球場を保有しており、練習量はふんだんにできる。グラウンドがない専修大附としては羨ましい限りではある。とはいえ、専修大附は[stadium]多摩一本杉球場[/stadium]や[stadium]府中市民球場[/stadium]などを積極的に借りるなどで補ってきた。そして、都立片倉の宮本 秀樹監督と専修大附の岩渕 一隆監督は交流も深いということで、練習試合も多くこなしてきている仲でもある。言うならば、お互い手の内は知っている同士といってもいいであろう。

 今大会はここまで、都立片倉はいい感じで、ほぼ順調に勝ち上がって来ていた。専修大附も着実な戦いで手堅く勝ってきている。そんな両校である。万全の思い出の激突となった。

 先制したのは専修大附だった。それほど打力があるというわけではない専修大附だけに、先取点はほしいところだった。3回の専修大附は小畑君が死球で出ると、内野ゴロで進め、3番廣岡君もファウルで粘って四球で一二塁。二死となってから、澤君が右前へ運んでいって二塁走者を帰してまず1点。さらに一三塁で籾山君も中前打してこの回2点が入った。いずれもシュアに振ってきた好打だった。

 都立片倉打線は、力で打ち崩そうという気持ちもあったのか飛球が多い。7回までで13本の飛球アウトを喫していた。打てそうで打てないという形で、何となく、焦りも出てきそうな展開でもあった。このままずるずるといってしまうのかなという雰囲気にもなってきた8回、都立片倉は先頭の2番橋村君が二塁への内野安打で出塁。この日3番に抜擢された稲葉君は、ここまで3打席飛球を打ちあげていたが、この打席ではジャストミートで左翼スタンドへ運んでいった。同点の2ラン本塁打である。まさに起死回生の一発だったのだが、これで試合は振出しに戻った。

 都立片倉の大貫君は気持ちを前面に出して、どんどんと投げ込んでいく。ことに、中盤以降になって、味方の援護がない中でも踏ん張っていた。それがやっと報われた形になった。


 9回都立片倉は二死から連打で一二塁としたが後続がなく、その裏専修大附も四球の走者が出たが大貫君が踏ん張って延長に突入した。

 10回、都立片倉は先頭の4番木村君が安打して、宮本監督は代走に沼野君を起用して勝負に出たが後続がなかった。その裏専修大附は先頭の2番椎野君が中前打で出るとバントで二進。二死後連続四球で満塁となった。あと一つ、何かが起これば専修大附のサヨナラとなるところだったが、大貫君は専修大附岩淵監督が勝負をかけた送り込んだ中村君を抑えて延長はさらに続くこととなった。
 11回も都立片倉は四球と失策でチャンスを得たものの生かしきれなかった。

 こうして延長後は0を重ねていったが14回、都立片倉は二死走者なしから3番稲葉君が右越二塁打すると、続く代打荒井君が宮本監督の期待に応えて左翼線へ二塁打してついに均衡を破った。

 ところが、その裏専修大附は一番からの好打順で、小幡君は中前打して希望をつなぐ。バントで二塁へ進み、内野ゴロで三塁へ進むと、続く4番の野沢君の強い打球が失策を読んで再び同点となった。専修大附としては粘りを示したのだが、その後さらに2四球で満塁となったものの、大貫君も最後は踏ん張ってこらえた。そして、15回もお互いが0となって、ついに3時間42分の熱戦は引き分け再試合となった。

 どちらも負けないでよかったという部分もあるが、選手たちは明日また、最初からの戦いをしなければならないということになった。こうなったら、気持ちの勝負ということになるだろう。

 安打数では倍打っていた都立片倉。だけど、あと一つという場面を何度か作っていたのは専修大附。どちらも勝てた試合、そして、どちらも負けないでこらえられた試合。
最後の夏。どちらも、高校野球への思いが詰まった試合だったのではないだろうか。

(文=手束 仁)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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