福岡大大濠vs神村学園
大濠のエース濱地不調も…成長著しい打線が奮起!
![福岡大大濠vs神村学園 | 高校野球ドットコム](/hb/images/report/zenkoku/20160512002/photo01.jpg)
先発・濱地真澄(福岡大大濠)
この試合の注目は、プロ注目投手・濱地真澄(福岡大大濠)が評判通りの投球を見せるか。彼の投球を見ようと多くのスカウトが集結していた。1回表、彼の投球が始まると、NPBのスカウトが一斉にガンを向ける。130キロ後半~140キロ前半ぐらい。手元のガンでも常時133キロ~136キロで、最速は139キロだった。そこまでスピードが出ていない。
彼のストレートは、分かっていても簡単に前に飛ばせないストレートで、去年は同じ球速帯でも振り遅れの打球が目立っていた。この日の濱地は、しっかりと捉えられての打球が目立つ。思わず空振りをしてしまうようなストレートが理想的だが、今日の濱地は、コーナーへ投げ分けて打たせて取るピッチング。濱地自身、今日は調子が悪いことを自覚していた。そしてフォームも少しズレがあることを自覚していた。
彼の投球フォームを見ると、肉眼で見るだけならば、ワインドアップから下半身主導のフォームで投げた綺麗なフォームと感じるかもしれない。しかしじっくりと見ると、球離れする位置が早く、速球投手に共通する前で叩くような強いリリースができていない。もともと濱地はそれができる投手であるだけに、苦しんでいる時期なんだなと実感した。140キロ後半を何度も計測した島孝明(東海大市原望洋)と比べると腕の振りの速さに差を感じる。島の場合、左腕の使い方が上手い。グラブは左胸に押さえつけて、なかなか体が開かず、リリース直前で体幹部分を上手く旋回させて腕を振ることができる。
そうすると、リリースとか、球持ちとか、腕をしっかり振ろうとか、意識していなくても、体の回転によって、腕の振りが自然と鋭くなる。すわなち体全体をバランス良く使うことができており、破壊力あるストレートを投げることが可能になるのだ。濱地は試合の中で修正を図っていたが、試合の中では劇的には良くならない。濱地は「初戦ということで力みもありましたし、力みを抜こうとしたら、逆に力が入らず、何か変な感触でした。それを中々修正できず、ボールは活きませんでした」と振り返ったように、今日は自分の思い通りのストレートを投げることができなかった。それでも6回1失点にとどめたのはさすがといえるだろう。
九州大会中に復調を果たすことはできるのか。最近はずっとこのようなストレートが続いているそう。残り2か月の中で、もう一度、自分が理想とするストレートを取り戻してほしい。
濱地が本調子ではないこともある。そういう中で打線の奮起が問われるが、この日は昨秋から課題にしていた打線が爆発した。
1回裏、一死一、二塁から右の長距離砲・東怜央(2年)が右中間を破る適時二塁打で二者生還し、2点を先制すると、2つのバッテリーミスで生還した東。6番田中力哉(3年)が四球で出塁し、二死一、二塁から8番新原駿久(3年)の中前適時打で一気に4点を先制。2回裏には、再び東の適時打。さらに二死満塁から、3番古賀悠斗(2年)が左中間を破る適時三塁打を放ち、そして東がこの日4打点目となる適時打を放ち、3回まで9対0と大きく点差を広げた。八木啓伸監督は、2人の活躍を評価。3番古賀、4番東の2人が実に良い。
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1番田中梅(神村学園)
古賀は軽快な足さばきが光るショートストップで、捕球してから送球するまでの動きが実に無駄がなく、安定したスローイングも光り、一目で上手いと感じさせる選手だ。スクエアスタンスで構え、スムーズにバットが出る選手で、広角に打ち返すバットコントロールの良さも良い。攻守にソツなくこなせる選手で、今後も注目を浴びそうな選手。
東は1年秋まで高校通算17本塁打を打っていた右のスラッガー。長打力はもちろんだが、逆方向へ打ち返す技術を持っており、打撃の幅が広く、チャンスの場面でも落ち着いてスイングができる選手だ。スイングスピードは速く、インパクトまでヘッドが下がらずに的確にボールを捉えることができる打者。181センチ94キロと実に恵まれた体格をした選手だが、器用な打撃ができるところを見ると、一冬の間に逆方向中心の打撃を繰り返してきたのが伺える。最後は10対1で迎えた6回裏、一死満塁から8番新原の併殺崩れの間に1点を入れて、11対1で6回コールド勝ちを決めた。
一冬超えて打撃力は着実に伸びている。特に2年生の古賀、東の3,4番の打撃力は確かなものがあり、今後が楽しみな打者。次の試合へ向けて、1年生ながら5番に入った橋本、また6番だが、長打力はチームナンバーワンであるスラッガー・田中力哉がどこまで力を発揮できるかだろう。
夏の頂点を目指す福岡大大濠。投打ともに底上げができており、選手は目的意識高く持ってやってきたのが伺える。あとは濱地がどこまで自分の思い通りのフォーム、ストレート、変化球ができるかにかかっている。
敗れた神村学園だが、1番田中梅里は、濱地のストレートに振り負けせず、右中間へ二塁打。どっしりとした構えには雰囲気があり、恵まれた体格を生かした打球は強烈。全体的に振れる打者は多く、このコールド負けから立ち上がることを期待したい。
(文=河嶋宗一)
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