新田vs今治北
勝つために考えるべき特色の活かし方
![新田vs今治北 | 高校野球ドットコム](/hb/images/report/ehime/20160329001/photo01.jpg)
この試合で3二塁打を放った新田の4番・泉 政斗
「最後はシャープに振られた」敗れた今治北・青野 誠監督が振り返ったように、終わってみれば6回裏の1番・眞田 康弘(3年・中堅手・右投左打・174センチ68キロ・松山ボーイズ出身)の高校通算10号となるランニングホームランや、高校通算12本塁打の長打力を3二塁打で表現した4番・泉 政斗(3年・一塁手・右投左打・178センチ75キロ・松山中央ボーイズ出身)など5安打を固めて4点を奪った8回裏など、昨秋四国大会出場・新田の地力が上回った一戦。が、試合全体を俯瞰してみると、両校の選手たちが「勝つために」自らの特色を出そうとする姿勢がよく見える好勝負だった。
一例は今治北のサイドハンド・上谷 和大(3年主将・投手・右投右打・176センチ62キロ・今治市立日吉中出身)。東予地区代表決定戦では昨秋県大会王者の今治西打線に対し1失点完投勝ち。冬に取り組んだストレートの回転数、「今治西戦ではよく決まってくれた」フォーク・シンカーをはじめ、スライダーやカットボールの切れ味は、中盤まで新田打線にも十分通用していた。
「今治西戦ではストレート中心で詰まらせることができたが、新田はしっかり振ってくるので、しのぎしのぎのピッチングをしていたら、最後は投げるボールがなくなった」と、上谷は自分の内容に全く納得していない様子だったが、夏までにその対策を立てる時間はある。最速130キロのスピードが将来伸びれば、大先輩・西原 圭大(関西外国語大~ニチダイ~広島東洋カープ)に続くNPB入りへの道も開けてくるだろう。
対して四国大会準決勝で高知中央打線を抑え込むなどブレイクを果たした昨春以降、サイドハンドに腕を下げるなどして調子を崩していた新田のエースナンバー「1」田中 蓮(3年・投手・右投右打・177センチ69キロ・松山市立小野中出身)もこの試合では申し分ない内容を見せた。腕の位置は再びスリークォーターに戻しながら、フォームを久保 康友(横浜DeNAベイスターズ)のように「軸回転」で投げるものと変えたことで、ストレートの球速は130キロ程度でも手元で伸びるボールに。スライダーの質も打者のスイング軌道を交わすものとなった。
「つかみかけている部分がある」と現状を評する岡田 茂雄監督の田中にかける期待は大きい。9安打を浴びながらも真骨頂である粘りの投球で1点に抑えた133球完投勝利をきっかけに、さらなる職人技を彼が極めた場合は、創部69年目での悲願、夏の甲子園初出場への視界は大きく開けてくることだろう。
「勝つために」自分の特色をいかに活かすか。その探究作業は勝敗いかんにかかわらず不可欠。次に両校が当たった際には、このベースを大きく上回る特色を出し切る試合を期待したい。
(文=寺下 友徳)
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