Column

東海大学付属高輪台高等学校(東京)

2016.02.01

 昨秋の東京本大会では4試合で3本塁打、32得点でベスト4の成績を収めた東海大高輪台東海大高輪台といえば、これまではディフェンスを重視するチームであったが、いかにして打撃型チームに変貌したのか。今回はその理由に迫りつつ、東海大高輪台が行っている打撃練習の内容を紹介していく。その内容はとても実践的なものだった。

ティーバッティングの前に素振りを大事にする理由

ティーバッティングの指導をする宮嶌 孝一監督(東海大学付属高輪台高等学校)

 もともと投手力、守備力がウリだった東海大高輪台が打撃力に転換した理由は、打てないことによる負けが多いという、シンプルなものだった。守備をウリとしていく野球は基本線としながらも、チームを率いる宮嶌 孝一監督は「バットを振れる選手」を使っていくことを選手たちに明かした。その結果、選手たちの取り組みも変わってきたという。

「今年の選手たちは例年の代と比べると、自主練習中の打撃練習に割く時間が増えてきました。いつまでやるの?と思わせる選手も出てきたほど。平日はバスで学校まで帰らないといけないので、21時までに乗れるよう制限もしています」

 バットを振り込む選手が多くなったが、チームとして目標となる振り込み数を設けているかというと、そうではない。選手たちは自主的に振るようになり、むしろノルマを設けていた時よりも振っているように感じられるという。ここに、強打を作り上げた一因が垣間見える。

 東海大高輪台の打撃練習の基本は、フリーバッティング、バックネット裏にめがけて打つ逆ゲージ、ティーバッティング、ロングティー、素振りの5種類。冬の期間から対外試合禁止期間明けまで、選手たちは金属バットを使わず、木製バットで打撃練習をしている。その中でも最も大事にしているのが素振りで、心掛けているのは、
「自分のインパクトに対して無駄なく、そして加速したスイングができるか。それは素振りでしっかりと作り上げることです。振る力を一番付けるのはこの時期です。その前提があって、フリー打撃、ティー打撃とボールを打つ作業に入っていきます」

 東海大高輪台の強打を作り上げた練習法は、まず素振りから入って、自分の形を確立するというもの。そしてティーバッティングは自分の打つポイントを確立するのが目的だ。

「キレの良い変化球、速球に対応するためには構え遅れないことが大切です。構え遅れてしまうと、振り遅れるだけではなく、ボールをしっかりと待てません。そしてインパクトまでヘッドが下がったスイングになれば、無駄があり、的確に捉えることができません。構え遅れせず、ヘッドが内から出て、そしてインパクトまで加速がしっかりとできて、無駄のないスイング。これは素振りをしないと出来上がりません。

 ティーバッティングをすることで打つポイントを明確になっていきますが、この時、全力で振って打ちミスをしないことが基本。80パーセントぐらいの力でやる選手もいますが、それは違うと選手たちに説明をしています」

 宮嶌監督は特別なティーバッティングをやっていないと語るが、ティーバッティングの目的を理解して取り組めるかどうかで、効果は変わってくるだろう。では東海大高輪台はどんなティーバッティングを実践しているのだろうか。動画を交えながら解説をしていきたい。

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[page_break:東海大高輪台が実践するティーバッティングを動画で紹介!]

東海大高輪台が実践するティーバッティングを動画で紹介!

1.早打ちティー
投げ手はできるだけ打者に近づき、真下から放り投げるイメージでどんどんトスをして、打ち返す。この時、しっかりとトップを形成しなければ強い打球を打ち返すことはできない。東海大高輪台は投げ手が横から投げるティーは一切やらない。横から待つ形だと、身体が開いた形で打っていくため、上達につながっていないというのが理由だ。できるだけ投手方向へ正対した形で振るのがポイント。

2.後ろから来たボールを打ち返す
投げ手は打者の後ろからボールを投げて、それを打ち返す。このティーバッティングの目的は、ヘッドの内側から振って、インパクトまで無駄のないスイングでしっかりと捉えることができるようになるようになること。タイミングが早すぎても遅すぎてもダメで、スイングした時に、両腕が伸びた状態になるのがポイントだ。動画を見ると軽々と打ち返しているが、バットが遠回りした選手だと上手く当たらず、打ち返すのは難しい。

3.上から落としたボールを打ち返すティーバッティング
投げ手は打者の横に立ち、上からボールを落とし、それを打ち返す。これは構えが立ち遅れせずに打ち返す狙いがある。落としたときに、一旦引いた動作を交えると、確かに振り遅れてしまう。どんなときでも構え遅れをせず、しっかりトップに入ってスイングができれば、投げ手がボールを落とす位置を低くしても打ち返すことができるようだ。

 続いて、次のティーバッティングはモデルとなってくれた村田 康貴が独自に行っているものを紹介しよう。

4.バックスピンをかけるティー
打球にバックスピンをかけて、より遠くへ飛ばす力を身につけるためのティー打ち。イメージとしては、「わざとこすって、打球を上げる」のがポイント。これは空振り、チップをしても良いので、感覚を覚えてロングティーを打ち込んでいく。そうすることで、村田自身も、秋の段階よりも遠くへ飛ばすことができるようになったという。

 実践してもらったメニューは、主にシーズン中に取り入れることが多いが、オフの時期はまずは振る力をつけることが求められる。シーズンに入れば、フリー打撃であったり、実際の投手と対戦していくが、投手は打者のタイミングを外したり、フォームを崩すために駆け引きをするので、どうしてもフォームが崩れてしまう。そこで、打撃の基本に立ち返ったのが、今回紹介したティーバッティングで、宮嶌監督も、フォームが崩れている選手には個別に呼んでティーバッティングでフォームを直していくという。東海大高輪台にとって、ティーバッティングは実戦力を養う大きな練習となっている。

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求めるは突き抜けた成長

村田 康貴選手のミートポイント(東海大学付属高輪台高等学校)

 東海大高輪台は意識が高い選手が多く、さらにティーバッティングに意味を持たせて練習していることが打撃力向上につながっている。また打撃に対する会話も増えてきたようで、チームの中心となっているのが動画で実践してくれた村田だ。秋は8番打者だったが高打率を残し、準決勝二松学舎大附戦では最速148キロ左腕・大江竜聖投手2015年インタビューから適時打を放った。「無駄がないバッティングができる選手ですね」と宮嶌監督も信頼を置くバットマンだ。

 もちろん宮嶌監督だけではない。主将の嶋﨑 草太郎は、「打撃で分からないことがあれば、村田に聞け!というぐらい自分の理論を持っていて、教え方も分かりやすいです」と語る。多くの選手が村田に聞き、それが他の選手たちの打撃向上に役立っている。
実際に村田自身に話を聞くと、中学生の時から打撃理論に興味を持ち、本を読んだり、プロ野球選手の映像をコマ送りで見て、何が優れているのかをしっかりと調べていたという。バックスピンをかけるためのティーバッティングをやり始めたのは、常に打撃を深く追求していたからだ。

 東海大高輪台が目指す打撃レベルはどんなものなのか?
「秋に比べて良くなったよね、というレベルでは東京は勝ち抜けないぞというのは選手たちに伝えています。『東海大高輪台、どうしたの?』と周りの人が驚くぐらいの成長。つまり突き抜けた成長を期待しています」

 宮嶌監督が求めるレベルは限りなく高いが、それは今まで自主的にバットを振り込む選手たちの姿を見ているからこそ、求めているもの。この春、そして夏へかけて、東海大高輪台の強打が全国的な話題となっていくのか。彼らの成長が見逃せない。

(取材・写真:河嶋 宗一


注目記事
【2月特集】実践につながるティーバッティング

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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