帝京vs東亜学園
帝京初回の猛攻で東亜学園にコールド勝ち
スリークォーターで投げていた先発の安村 陸人(帝京)
乾いた北風の吹く中、伝統校同士の試合は始まった。帝京・前田 三夫、東亜学園・上田 滋という、ベテラン監督の対戦でもあったが、上田監督が「初回で決まりました」と言うように、采配の妙をみることもなく、一方的な試合となった。
帝京は19日、もどかしい試合をした末、押し出しのサヨナラで何とか勝利をものにした。短い期間であるが、チームをどう立て直したか、注目されたが、先発の安村 陸人の投球フォームを見て驚いた。19日の試合まで安村は、サイド、それもややアンダースローに近い投げ方をしていたが、この日は、スリークォーターで投げていた。
「もともと上から投げていた」と帝京の前田監督が言うが、1週間もしない短期間で、調整できるのだろうか。「随分投げ込ませましたから」と、前田監督は言葉をつないだ。この1週間の猛練習ぶりが伺える。
安村は1回表東亜学園の1番北澤 健一に四球を出したものの、北澤の二盗失敗が三振ゲッツーになり、切り抜ける。
その裏帝京は、東亜学園の左腕1年生の藤下 凌也に襲いかかる。まず1番相曽 幸宏の左前安打、2番佐々木 俊輔の遊ゴロは内野安打になったうえに、一塁送球が暴投となり相曽は三塁に進む。3番岡崎 心が四球で満塁となり、4番郡 拓也の三塁線を破る二塁打で、まず2人が還る。さらに5番田中 麟太郎も右中間を破る二塁打を放ち2人が還り、帝京は初回に4点を入れる。
それでも2回表、東亜学園は死球で出た6番土岐 大聖が8番斉藤 海心の中前安打で三塁に進み、9番藤下は投ゴロ。これを安村は一塁にワンバウンドの送球。一塁手が捕れない球ではなかったと思うが、前にこぼし(記録は投手の失策)、東亜学園が1点を返した。この辺りまでは帝京にもまだ、前の試合の影響が残っているようにも思えたが、強力打線がその不安を払しょくする。
特大の本塁打を放った岡崎 心(帝京)
2回裏は、中前安打の相曽 幸宏が、盗塁や相手投手の暴投などで還り1点。東亜学園の藤下 凌也は、3回裏を三者凡退で切り抜けるなど復調の兆しをみせたが、4回裏一死後、帝京の1番相曽の打球はセンターへの低いライナー。東亜学園の中堅手・斉藤 海心が突っ込むものの捕球できず、打球はセンター奥深くに転がる。相曽は俊足を飛ばして一気に生還し、ランニング本塁打となる。さらに3番岡崎 心は[stadium]明治神宮第二球場[/stadium]でなく、[stadium]神宮球場[/stadium]でも十分に本塁打になる特大の一発を放った。
1次予選の代表決定戦では本塁打を記録している岡崎であるが、都大会に入ってからは、待望の一発である。「調子は悪くありませんでした。大きいのを狙うよりは、単打を打つようなつもりで打ちました」と岡崎は語る。
この回帝京は、さらに走者を2人置いて6番浅野 丈の二塁打で2点が入り、9対1。
7回表東亜学園は代打・佐藤 文哉の三塁打、同じく代打・細川 太の中前安打で1点を返したものの時既に遅く9対2、7回コールドで帝京が勝利し、ベスト4進出が決まった。
帝京の前田監督は、まだ不安を残しつつも、「段々チームが良くなってきた」と、手応えを口にした。
岡崎、郡 拓也といった主軸に当たりが戻り、投球フォームを変えたばかりの安村 陸人も、7回を被安打5、奪三振7の失点2とまずまずの投球をした。準決勝にはまだ2週間近くある。さらにチームを立て直してくるに違いない。
次は夏敗れている関東一。「夏は関東一に負けて悔しい思いをしました」と岡崎が語るように、帝京にとっては、リベンジをかけた対決となる。
一方敗れた東亜学園の上田監督は、「課題は全て。苦しいことをやって、自信を付けていくしかない」と語った。
東亜学園は強豪校といえども、グラウンドは狭く、環境的に恵まれているわけではない。それでも、どうチームを作り直してくるか。ベテラン監督の手腕を注目したい。