Column

【三年生座談会】東京成徳大深谷高等学校(埼玉) 後編

2015.10.07

 

 前編では、東京成徳大深谷のこれまでのあゆみについて、動画や選手の話(高橋 滉斗主将落合 大地投手吉田 龍弘捕手後藤 健太一塁手河田 達也二塁手川俣 貴広三塁手佐野 裕太左翼手二宮 聖中堅手江花大尉右翼手のレギュラーメンバー9人)を中心に振り返ってきた。後編では、引退してからの彼らの本音について伺いました。3年間の高校野球を終え、彼らは何を思うのか…!?

選手17人で戦い抜いた今、彼らが思うこととは

――昨春にグラウンドを失い、そこからの野球部はどうでしたか?

吉田 龍弘副主将(東京成徳大深谷高等学校)

吉田 冬、ずっと学校の近くの山を走ったり、スイングばかりの練習をやっていました。その時は、『俺ら何やってんだ……』って、ずっと思っていました。

二宮 「これで大丈夫なのか!?」という不安ばかりでしたね。

吉田 しかも、新年明けて初めてスパイク履いたのが3月頃だったんですよ。
ずっとラントレーニングや素振りばかりで、何やってんだろうと思っていましたが、春の県大会でベスト4に入ることができて、チーム歴代最高の成績を残すことができたんです。結果が出たこと自信が持てるようになり『力がついた』と思えるようになりましたね。

高橋 それは根拠の部分だよね!自分たちのテーマが「根拠のある奇跡を」だったので。いっぱい走ってきて、いっぱいバット振ってきてことが、良い形で結果につながりました。

吉田 試合をやるにつれて良くなってきたしね!

河田 自分は、最初グラウンドが無くなるって知った時はすごく嫌だったんです。でも、今だから分かるけど、グラウンドが無くなったから得たものもあるよね。そこから成長したことも多いので、これからの人生に繋がってくると思います。

落合 どちらかと言うと、グラウンドが無いのが今、辛いですね。引退してから練習できないんで。

吉田 あと、高校野球の大会が始まると『後輩の試合見に行きたかったな…』とは思いますね。

川俣 twitterとか見てて、試合結果とか流れてくるよね。

吉田 それ見て「お!後輩たち勝ってんじゃん」みたいな。そういうのが自分たちはできないんですよね。

落合 あと、他の野球部であれば、野球部独特の『強さ』みたいなものを後輩たちが知っていると思うんですよ、伝統的に。でも居ないんだよな。

高橋 そういうのが話できないもんね。自分たちの代で終わっちゃったってことなんだよね。

吉田 でも振り返ると、グラウンドがなかったことが苦じゃなかったんだなって、今なら思えます。

二宮 終わってみれば、そう思えるよね。

吉田 他のチームって、そういう経験できないじゃないですか。後輩も居なくてグラウンドもないっていうのは。だから俺らはいい経験ができたのかなと思いますね。

高橋 自分は、スーパーハウス(箱形のプレハブ式ユニットハウス、ここでは部室のような建物)が無くなったのが一番辛かったですね……。

一同 あ〜!!

高橋 いつもみんなで一緒にお昼を食べていたのに、できなくなって。(スーパーハウスが)無くなってからは、みんなで集まれる場所がなくなってしまいました。みんなで一緒にご飯食べるの楽しかったよね。練習終わった後とかも何時間もずっと居られたし。

落合 スーパーハウスがあった時代は楽しかったね!火曜日は次の日(水曜日)がオフっていうことが分かっていたから、遅くまでみんなで話して。楽しかったなあ!

一同 うん!

 野球選手からグラウンドを取るということに目が向いていたが、選手たちは「仲間と一緒に居られる時間」の方が大切だったのかもしれない。この「17人の愛」こそが、チームを強くした。

僕らの熱い夏 2015

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成徳大深谷だからこそ、学べたもの

――それでは、3年間の野球部での活動から、どんなことを学んだと思いますか?

落合 大地選手(東京成徳大深谷高等学校)

高橋 挑戦して失敗してっていう繰り返しだったんですけど。全てにおいて「何かやってから」っていうこと心がけていたからこそ、結果(春季大会ベスト4)や成長に繋がったんだと思います。

吉田 こういう状況(グラウンドが無かった)だからこそ、学べたことは多かったですね。

二宮 全員に責任感がだんだん出てきたんだよな。

吉田 自分たちの場合は、グラウンドが無くなってしまいましたが、それがいい方向に動いたのかなと思いますね。

高橋 もしグラウンドがあったら、後輩もいっぱいいるだろうし。自分たちの代のチームのテーマが「愛」なんです。だけど、50人60人部員が居れば、自分たち17人の関係も薄れていたかもしれません。グラウンドがなかったからこそ、逆に17人の愛がより強いものになったと感じますね。

落合 個人的にですけど、僕はこの学校に入ったことが一番ですね。僕、怒られないとダメなんですよ。いっぱい怒られたので、その分中学校の頃の自分から変われたんで良かったです。

吉田 この状況で成徳大深谷に入って、このメンバーと野球をやるっていうことは何らかの出会いというのがあったからこそだと思いました。自分個人としては、言い訳をしない器のでかい人間にならなきゃいけないとか、責任感の強い男になるとか、大切なことをたくさん学びました。自分キャッチャーなので、物事の全てを受け入れることができるような人間にならなきゃいけないということも。

後藤 成徳大深谷に入らなければ、この17人にも出会うこともなかったし、3年生17人だけで部活をやっているのは自分たちだけだし。これらは、すごく貴重な経験でしたね。また監督さんやコーチたちのおかげで、しっかり最後まで野球ができたし、そういったことにしっかりと感謝して野球ができたことが良かったです。

河田 自分は、この野球部に入って野球で成長したこともあるんですけど、それよりも人間的に成長したことが大きいのかなと思いますね。最初の挨拶とか、気を遣うこととか、相手を基準にして考えるとか、そういうことを3年間常に言われ続けてきたので、そういう面ではこれからの将来のためになることが学べたし、成長できたのかなと思いますね。

川俣 この3年間やってきて、自分は意味のある、必要とされる人間になりたいと思っていました。野球部での3年間の中で、17人の間でも責任もありました。社会に出ても通用する人間になれるように、監督さんやコーチたちに教わって野球をして、それを3年間やってこれて良かったです。

佐野 1番、3年間で学んだことは、「中途半端なことはダメ」だということでしたね。いつも自分中途半端で、物事決めるときも打席立っても中途半端なことしかしてなくて。それで、この3年間で学びましたね。

二宮 新チームになって人が少ない中で、自分が人にやってもらうんじゃなくて、自分が先にやったり、自分が率先して物事に取り組むということが大事だということを体感して分かりました。

江花 この3年間やってきて、責任感っていうのを深く感じられるようになりました。人数が多い野球部だと、「ちょっとサボってもいいや」と思う人も居ると思うんですよ。でも自分たちは17人しかいなくて、その中で1人も力を抜いちゃいけないとか、そういった面では人数が少なかったからこそ、責任感が強くなったと自分は思います。

 選手それぞれの本音が垣間見えた座談会となった。選手たちの口から「17人だったからこそ」という言葉が絶えなかったことから分かるように、成徳大深谷の強さの源には「チーム愛」が大きく関わっていた。選手たちは、これからは別々の道に進む。野球を続ける人も居れば、辞める人も居る。この先、成徳大深谷ナインが今後の人生で、高校野球から学んだことを生かしてくれることを切に願う。

(取材・構成=佐藤 友美

僕らの熱い夏 2015

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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